祖母による世話

長寿に関連する要因も、少なくとも女性においては、選択されたものと考えられます。繁殖年齢を超えた個体はすでに繁殖は終えているので、このような個体が示す特性や行動には、通常、淘汰圧はプラスにもイナスにも働きません。しかし、高齢な個体の行動が、子や孫の成功を高める場合は例外なのです。この場合には、長寿であることは、それによって子孫の生存可能性が高まったために、選択されたと考えられると言います。

祖母による世話が、孫の生存に利益をもたらすことは明らかと考えられますが、このような投資が、その女性自身がさらに子どもを産む、すなわち、閉経しないよりも高い包括適応度をもたらすかどうかはそれほど明確でないそうです。たとえば、パッカーたちの研究では、祖母ライオンが孫に乳を与えることはよくあるそうですが、それは自分自身にも子どもがいる場合のみであり、「閉経後」の祖母による世話と孫の生存率が高まることを示す証拠はないようです。ヒルとウルタドによるアチェ族の人々に関するデータからは、高齢の女性にとって、孫へ投資することの方が自身が子どもを産むことよりも、包括適応度の観点から賢明であるという証拠は示されなかったようです。ヒルとウルタドは、成人した子どもと孫に投資をすることによって閉経後の女性が得られる利益は、人口増加率が低いときに大きくなる可能性を指摘しています。この研究は、人口増加が比較的急速に進んでいる時期に行われたことも背景にあります。

祖母が孫の成功に貢献していること、そして、それが長寿に結びついている可能性があることについては、すべての研究者が合意しているようです。論争の中心は、閉経の機能に関するものであり、閉経には適応的な機能があるのか、あるいは単なる何かの副産物であるのかが議論の的となっているそうです。

祖父母が孫に資源を与えることで自身の包括適応度に利益がもたらされるのは、そのため、祖父母は子どもと自身との遺伝的つながりを評価しなければならないのです。父方の祖父母は、父親同様、父性の確実性を知ることができないのに対し、母方の祖父母は孫と自身との遺伝的つながりを疑う理由はまったくありません。この推論にもとづけば、母方の祖父母は、平均して、父方の祖父母よりも、孫に多くの資源を与え、孫の世話をしようとするはすです。

多様な西洋社会の証拠がこの主張を支持している。たとえば、オイラーとヴァイツェルは、16 ~ 80歳のドイツ人成人1857名に7歳までに父・母双方の祖父母に世話を受けた量をそれぞれ評価してもらったところ、父性の確実性にもとづく予測に違わず、回答者の世話を最も多くしていたのは母方の祖母であり、それに次ぐのが母方の祖父であったそうです。孫の居住地域との平均距離は、母方の祖父母と父方の祖父母で等しいにもかかわらず、この結果が得られたというのです。また、父方の祖母よりも母方の祖父の方が多くの世話を提供していたことについては、どの文化でも男性よりも女性の方が子どもの養育に大きな役割を果たしていることを考えると、特に説得力がある結果といえるとビョークランドは言います。

祖母による世話” への8件のコメント

  1. まぁ、家族関係もいろいろでしょうから、父方の祖父母か母方の祖父母か、いずれがどうかということは私の経験に照らせば、よくわからないところではありますが、オイラーとヴァイツェル博士らの調査研究の成果によれば、「世話を最も多くしていたのは母方の祖母であり、それに次ぐのが母方の祖父」ということでした。地域性や風土ということに関わりなく普遍的なことなのか、この点はどうなのでしょう。私は自分が同居していたこもあり父方の祖父に可愛がられ、祖母に母代わりの面倒を見てもらった経験があります。私の弟はよく祖母と添い寝をしていました。後になって祖母のおっぱいを吸って大きくなったと揶揄されたほどです。同居していなければ母方の祖父母のお世話になることが多いのかもしれません。まぁ、このへんはよくわからないなというのが本音ではあります。とりあえず、祖父母の存在は孫育ち及び子の生活維持力に欠かせないでしょう。同居しているしていない、物理的に離れている離れていない、等々の要因が祖父母による孫の養育への参加率に影響はしてくるとは思うのですが。

  2. 個人的にはとても納得しながら読み進めました。こういった背景を知って自然的に生まれた母方の祖父母、父方の祖父母との関係性の理由が理解出来たと同時に、妻が頼り易い、という意味でやはり母方の祖父母へ自然サポートを求める形になる我が家の日常を思いました。コメンテーターtoshi123氏の仰る通り幾つかの要因が影響してくることがあるように思いますが、人類という大きな枠組みで捉えた時にこの度のような家族関係になるという研究データが上がるということに、やはり何か特別な意味合いがあることを感じます。

  3. 「祖母が孫の成功に貢献していること、そして、それが長寿に結びついている可能性があること」は興味深いですし、薄々ではあるものの、孫の存在が祖父母の長寿に結びついていることは感じていて、納得のいく思いです。そして、女性の「閉経」がもたらす意味という点も興味深く、改めて人体に起こりうる事象には全て意味があることが伝わってきます。また、父性の確実性を知ることができないことが「母方の祖父母は、平均して、父方の祖父母よりも、孫に多くの資源を与え、孫の世話をしようとするはず」という推論を生み、「世話を最も多くしていたのは母方の祖母であり、それに次ぐのが母方の祖父であった」ことにつながるのも母性は間違いないことですし、「どの文化でも男性よりも女性の方が子どもの養育に大きな役割を果たしていることを考えると、特に説得力がある結果」にも納得です。これもどうしても個人差がつきものですが、今後も変わることがないものなのでしょうね。

  4. 「母方の祖父母は、平均して、父方の祖父母よりも、孫に多くの資源を与え、孫の世話をしようとするはすです」ということでしたが、私も同様に、母方の祖母の世話を受けたという記憶が強いです。父方の祖母が私とは血の繋がりがないということもあるかもしれませんが、やはり祖母といえば母方の祖母になるように思います。また、祖母と同じくらい記憶にあるのは家の前に住んでいた地域のおばあちゃんのことです。家も近く、夕方、子どもだけで家にいることも多かったので、このおばあちゃんの家で多くの時間を過ごしたことを思い出します。本当の祖母のような感覚で接していました。そのおばあちゃんも、祖母ももう亡くなっています。ふと思い返すと、大人になって、祖母と過ごした時間、おばあちゃんと過ごしたことをしばらく忘れていたように思います。子どもの頃の楽しい記憶、祖母や近所のおばあちゃんと過ごした嬉しい記憶を思い出すことができました。ありがとうございました。

  5. 孫の世話をするのは母方か父方かということに対しては、自分の家族間でも母方によく預けることがありますが、その理由としては母がいろいろと言いやすいというのが背景にあるようです。いろいろ頼みやすいから自分の親になるべく預けると話していました。〝男性よりも女性の方が子どもの養育に大きな役割を果たしている〟ということから、自分の親に預けやすいけらというのは、納得できるところです。
    そのように考えている人が多いからなのか、母方に世話をしてもらう方が多い傾向が人類にあることから、その方が人類にとって望ましい結果があるということが予測でき、研究されているんですね。

  6. 祖母が世話をすることによって、互いにもたらす利益というのは、十分に考えられるのですね。家族というものは、互いに共生するなかで、互いに貢献することを遺伝子的に、生得的にもってるものだということを改めて感じます。また、”母方の祖父母は、平均して、父方の祖父母よりも、孫に多くの資源を与え、孫の世話をしようとする”ということはなんとなく納得できる部分があります。しかし、昔は、嫁は夫の実家へ嫁ぐようなかたちを聞きます。そういった場合は、父方の祖父母のほうが関わることが多くなる気がしますが、そういった場合では、どのように考えるべきか、様々な考え方をもつべきですね。

  7. 「祖母が孫の成功に貢献していること、そして、それが長寿に結びついている可能性があることについては、すべての研究者が合意しているようです。」とあり、世話をすることでより刺激が多く、貢献することで存在意義といいますか、母性が活発になり長寿に結びつくということなのでしょうか。また母方の祖父母の方が統計的に世話をするということが明らかになっているのですね。母方の方が確実に自分の子とわかるというのは確かにあり、父方というのはある意味で実感があまりないのかもしれないと勝手に想像してしまいます。実際に息子の世話が上手なのは母方の方かなーとなんとなくでは思いますね。こうした統計は面白く納得がいきますね。

  8. 私の場合は何とも言えませんが、どちらの祖父母も遠方の為、私としては同じくらい孫に対して資源を与えてくれている気がします。ただ、やはり母方の祖母の方が孫との距離間に関していえば父方よりも近いような気がします。おそらく次男の出産の時に里帰りをしたので一緒に過ごした時間が長いからという理由もあるかもしれませんが、何となく母方の方が世話を多くしている印象はあります。だからと言って祖父母と同居することがベストという訳ではありませんが、子育てというのは父母だけで行うことでなく様々な人と行うことが結果的に子どもの生存率があがると思います。

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