父親の投資

ヒトの交配戦略は、少なくとも遺伝的に最近縁種であるチンパンジーやポノボが多夫多妻的であることと比較すると、女性の不義が比較的少ないのです。確定的な知見とは言えないどうですが、様々な国における複数の研究結果から、家庭上の父親が遺伝子上の父親ではない確率である父親不一致率は、7~15%と推定されるそうです。つまり、女性は明らかに、男性に妻の不義を防ぐメカニズムの進化を生じさせる程度には、婚姻外の性交を持つと言われていますが、それほどしばしば配偶者に対し不義を働くわけではないと考えられます。この妻の不義が比較的少ないことは、父親の高い投資が進化するために必要な条件であっただろうと考えられます。

ギアリーは、父親の投資が子どもの生存と繁栄に対してこれまで果たしてきた、そして今日も果たしている役割に関する証拠を検討しているそうです。もちろん、証拠のほとんどは相関的なものであるため、因果関係を主張するのは難しいようです。しかし、伝統的な狩猟採集社会、西ヨーロッパの歴史資料、および現代の開発途上国のデータから、全体として「父親がいない場合、子どもの死亡率は高く、社会的地位は低い」というパターンが一貰して認められているそうです。さらに、現代のアメリカでは、父親が子どもの生活に積極的かつ支持的に参加することが、子どもの学業成績、情動制御、社会的能力と肯定的な関連があることが見出されているそうです。

父親の社会的地位が高いと、子どもに物的資源を提供できるだけでなく、少なくとも現代の狩猟採集社会では、母親の「質」の高さとも関連していると言います。地位の高い成功した男性は、地位の高い成功した女性、つまり、健康で資源を多く提供できる、たとえば、食料の採取が上手な女性を、配偶者として選ぶ傾向があります。つまり、母親の活動が父親からの食料提供と一緒になっている場合もあるため、父親単独の貢献度はわかりにくいのです。同様に、未婚の母親の子どもは死亡率が高く、社会的地位が低い原因としては、配偶者を維持できない女性は、維持できる女性よりも適応度が低いということも考えられると言います。このように、父親がいないこと以外にも、子どもの死亡と成功に影響している要因がある可能性は高いようです。しかし、歴史データ、伝統文化社会のデータ、現代社会のデータすべてが、父親の投資が子どもの生存において非常に重要であることを示しています。

父親の投資の重要性が最も高くなるのは、資源が少ない、ストレスが高い、競争が激しいといった条件下のようです。新たな配偶機会を求めるのではなく、子どもに投資することによって、父親は子どもの生存率と社会的競争力を高めているのです。進化心理学の理論によれば、男性は柔軟な繁殖戦略を進化させていて、ストレスが高いときには、子どもに投資して、子どもの生存率と社会的地位を高めるようになったのに違いないというのです。ギアリーによると、「少ない資源をめぐって激しい競争があるような環境や、流動的で死亡リスクが予測できないような環境では、子どもの社会的競争力に対する父親の投資は、ある意味、予測不可能な将来のリスクに対する保険のようなものである。」と言っています。確かに、オスが子どもの養育に参加する種は、オスの寿命が長いという興味深い証拠もあるそうです。

父親の投資” への8件のコメント

  1. 子どもが可愛いのはそういった理由があるのか、とハッとなる思いがしました。「父親の投資の重要性が最も高くなるのは、資源が少ない、ストレスが高い、競争が激しいといった条件下のようです。」荒波を打ち破るような船出をイメージしたのですが、その想像は確かに胸を熱くさせます。無理難題に立ち向かう闘争心というよりは、台風の時になぜかわくわくしてしまうあの気持ちでしょうか。子育て、保育から得る多くの感情をとても肯定的に捉え直すことが可能になるようなこの度のブログです。

  2. 子の真面目な成長や学業成績の良さの裏には父親の育児及び教育への適切な参加の仕方があるような気がします。無関心でも過干渉でもダメなことは言うまでもありません。適度な稼ぎをもたらす。教育を母親任せにしない。子どもへいろいろな体験の機会を提供する。そして、やはり見守るという姿勢です。こうしたことが父親の適切な投資の姿だろうと思うのです。「父親が子どもの生活に積極的かつ支持的に参加することが、子どもの学業成績、情動制御、社会的能力と肯定的な関連があることが見出されているそうです。」と現代アメリカの例をギアリー博士は示しています。これはアメリカのみならず日本にも当てはまりますね。「支持的」ということが重要ですね。我が子の今を受け止め、その気持ちを支持する姿勢が大事だということでしょう。どうやらこれからの世界では「父親の投資」ということがどの時代にも増して重要さを帯びてくるような気がします。

  3. 「妻の不義が比較的少ないことは、父親の高い投資が進化するために必要な条件であっただろう」とありました。確かに不義がそもそもに多い種であれば、父親の投資も減ったことでしょうし、人類の進化や繁栄のルーツを辿ると本当にいろいろなことがわかってきて面白いです。また、父親の社会的地位が高いことが母親の「質」の高さとも関連していることも興味深いです。しかし、それが「父親単独の貢献度はわかりにくい」ことにつながるとありましたが、むしろ子どもにとったらその方が良かったりするのかなと感じました。必ずどちらかでしかできないこともあるのでしょうが、父親の役割を母親が担えたり、母親の役割を父親が担えることで、貢献度は薄く見えるかもしれませんが、子育てにとってより良い形になるように思えました。どちらの役割と固定概念にとらわれないことが重要であるように感じました。

  4. 「現代のアメリカでは、父親が子どもの生活に積極的かつ支持的に参加することが、子どもの学業成績、情動制御、社会的能力と肯定的な関連があることが見出されているそうです」という言葉が印象的でした。父親の役割があるんだということが証明されているというのもホッとするようでもあります。様々な理由があるとは思うのですが、やはり、父親が積極的に参加している家族は円満なのかなと予測すると、そういった安心感のようなものが子どもの意欲や、精神に影響するのかなと感じました。また「ストレスが高いときには、子どもに投資して、子どもの生存率と社会的地位を高めるようになったのに違いないというのです」というのは、自分の危機を父親は感じていて、だからこそ、子どもに残していこうという方向に変わるということなのでしょうか。

  5. なんと言っていいのか、幼少期をほぼ母親と過ごしてきたと自分では思っていたのですが、じゃあ父は何もしていないのかというと、決してそうではなくここでいう「投資」を影ながらしてくれていたのだと感じています。〝父親が子どもの生活に積極的かつ支持的に参加することが、子どもの学業成績、情動制御、社会的能力と肯定的な関連があることが見出されている〟とあり、父親の影ながらの支えがなければ自分はどのようになっていたのでしょう。
    父親の存在が子どもにとってどれだけのものであるのかというのを証明するのは難しそうですが、自分の父のように影ながらの子どもへの投資という貢献の仕方もあるのではないかと、今回の内容を読みながら気づいたところです。

  6. 父親という存在によって死亡率や社会的地位が変化することは、父親というものがいかに子どもへ与える影響があるということが裏付けされていますね。”現代のアメリカでは、父親が子どもの生活に積極的かつ支持的に参加することが、子どもの学業成績、情動制御、社会的能力と肯定的な関連があること”とありました。この影響の程度、子と父の関連性には、もっと意識していかなければならないと感じています。また、積極的かつ支援的にという点には、いまく距離を図りながら、といったうまさが必要ですね。父が子へ対して甘やかしたり、ときに、こだわりのように話をするのは、こういった点かなと、自分のことのように考えてしまいます。

  7. 「父親がいない場合、子どもの死亡率は高く、社会的地位は低い」とザックリ言われていることに驚きますし、実際そういう結果が出ていることも驚きです。父親の地位が高ければ地位の高い女性を選ぶというのも世の中を見ていればわかることですね。そして「 未婚の母親の子どもは死亡率が高く、社会的地位が低い原因としては、配偶者を維持できない女性は、維持できる女性よりも適応度が低いということも考えられる」という部分が気になりました。なるほどという思いですが、やはり適応度がある女性であることで子どもにも大きな影響が出るということで当たり前ですが様々なことが子どもに影てくるのでね。

  8. 「少ない資源をめぐって激しい競争があるような環境や、流動的で死亡リスクが予測できないような環境では、子どもの社会的競争力に対する父親の投資は、ある意味、予測不可能な将来のリスクに対する保険のようなものである。」確かにその通りだと思います。個人差もあるのかもしれませんが、我が子にはなるだけ不自由なく人生を歩んで欲しいと思います。そのため、柔軟に対応できるような準備を今のうちから始めていますが、そのひとつが貯金かもしれませんね。また「父親が子どもの生活に積極的かつ支持的に参加することが、子どもの学業成績、情動制御、社会的能力と肯定的な関連がある」とも書かれています。この文章もいくつか思い当たる節があります。父親の存在というのは一家の大黒柱であり家族が安心して暮らせるように見守っている存在のような気がします。父親、そして母親からの見守りの中で子どもは育たっていくのだと思いました。

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