過大評価

昨日の例を見てもわかりますが、共同することによって、より多くの学びが生じます。しかし、その過程は少し意外なものであり、幼児の未熟な認知が多くのソースモニタリング・エラーを引き起こし、実はそのことが学習を促進しているのだというのです。文脈によっては学習を阻害するどころか、促進しているという主張と一致するものだとビョークランドは言います。

幼児の認知が不十分であることが、協同学習課題に利点をもたらすことを示したラトナーとフォーリーの結果と同様に、子どもの自身の模倣能力に関する理解であるメタ認知が不十分であることにも、利点が隠されていることが示されているそうです。たとえば、課題の模倣がうまくできると思うかを幼稚園児に評価、予測させた自然的研究では、全試行の56.9%で自身の模倣能力を過大評価していたそうです。過小評価は5.1%と少なかったそうです。

モデルの模倣を実際に試みた後の評価、後測では、自己の行動を少し的確に評価できるようになったそうですが、それでも試行の39.6%で過大評価をしていたそうです。この場合も、過小評価はほとんどなかったそうです。さらに、幼児の自身の模倣能力に関する知識はIQと関連しますが、この関連性は年齢に伴って変化するそうです。3,4,5歳児に、モデルが、1~3個のボールでジャグリングをするといった課題を行うところを観察させ、その行動をどれくらいうまく模倣できると思うかを尋ねたそうです。そして、その課題を実際に行ってみた後、自分がどれくらいうまくできたと思うかを評価させてみたそうです。すると、自身の成績をどの程度過大評価するかという子どものメタ模倣の正確性は、言語性IQの指標と関連があったそうです。ほぼ全員の子どもが自身の能力を過大評価したため、得点が低いほど過大評価が少なく、正確性が高く、得点が高いほど過大評価が多く、正確性が低かったのです。

5歳児で模倣能力の予測及び事後評価の正確性が高い子どもは、ということは過大評価が少ない子どもは、正確性の低い子どもよりもIQが高かったそうです。これと同様の関連性が、6歳以上の子どものメタ認知課題でも認められているそうです。反対に、3歳児、特に4歳児では、IQの高い子どもが自身の模倣能力を過大評価する傾向が高かったそうです。この結果から、状況によっては、メタ模倣の不十分さが、実は幼児に利益をもたらしていることが示唆されているのです。

幼児が、自身の認知能力や身体能力を過大評価することはよく知られていることだそうです。メタ認知的知識が未成熟であることによって、幼児は様々な行動の模倣を、それが無駄だと考えることなく試みることができます。その結果、頭の良い幼児は、新しい行動の実験と古い行動の練習を続け、試行錯誤学習が非常に重要な時期に能力を高めていくと考えられているのです。

子どもの運動能力の向上に伴い、メタ認知能力も向上します。メタ認知能力は、発達の過程で後に、より高度な認知に関連してきます。これまでにもビョークランドが言うのように、子どもの未成熟な認知には子どもの発達的ニッチにうまく適合している側面があり、必ずしも克服しなければならない欠陥とは言えないのです。

過大評価” への10件のコメント

  1. 幼児の認知世界の複雑さを感じた今回のブログでした。エラー、不十分、未成熟ならポジティブ要素よりネガティブ要素を想起してしまいます。このこと自体が大人の発想によるものかも、と思ってしまいます。「ソースモニタリング・エラーが学習を促進している」「幼児の認知が不十分であることが、協同学習課題に利点をもたらす」「過大評価が少ない子どもは、正確性の低い子どもよりもIQが高かった」「状況によっては、メタ模倣の不十分さが、実は幼児に利益をもたらしていることが示唆」「メタ認知的知識が未成熟であることによって、幼児は様々な行動の模倣を、それが無駄だと考えることなく試みる」「子どもの未成熟な認知は・・・必ずしも克服しなければならない欠陥とは言えない」ネガティブと思われていることが実はポジティブ要素でもある、ということかなと思いました。私たち大人の視点から捉えると、不十分と未成熟となってしまいますが、当の子どもにとってはそんなの関係ありません。今をよりよく生き、望ましい未来のために試行錯誤を繰り返す。乳幼児の行為にはほぼ無駄や不要なことはないのでしょう。すべては必然。こんな感想を抱いたところです。

  2. 「課題の模倣がうまくできると思うかを幼稚園児に評価、予測させた自然的研究では、全試行の56.9%で自身の模倣能力を過大評価していたそうです。過小評価は5.1%と少なかった」事実も興味深いですし、「モデルの模倣を実際に試みた後の評価、後測では、自己の行動を少し的確に評価できるようになった」ことも興味深いです。しかし、それでも過大評価率が高いこと、過大評価しやすい子どもの特徴から、それが発達に大きな意味があるのだろうなと予測できます。そして、模倣能力とIQの関連性から「模倣能力の予測及び事後評価の正確性が高い子どもは、ということは過大評価が少ない子どもは、正確性の低い子どもよりもIQが高かった」ことが示されているのですね。また、メタ模倣の不十分さにおいても、実は幼児に利益をもたらしていることが示唆されていることからも、「未成熟」や「不十分」など全ての発達過程に意味があることを前回同様に感じました。

  3. とてもおもしろい結果がたくさんありました。と同時に、子どもというのは本当に不思議ですね。「ほぼ全員の子どもが自身の能力を過大評価したため」とありましたが、確かに、自身の能力を課題評価している子どもの姿というのはよく見かけます。「俺もできるし!」「簡単んだよ」と言って、うまくいかない子どもの姿というのはどの園でも見られる姿ではないでしょうか。そんな中で、5歳児、6歳児は「過大評価が少ない子どもは、正確性の低い子どもよりもIQが高かったそうです」とありましたが、「反対に、3歳児、特に4歳児では、IQの高い子どもが自身の模倣能力を過大評価する傾向が高かったそうです」とあり、この不思議さに驚いてしまいました。同時に
    課題評価するからこそ、「幼児は様々な行動の模倣を、それが無駄だと考えることなく試みることができます」ともあり、子どものことはまだまだ分からないことだらけだなと思うと、私たちは子ども観や教育観を簡単には固定してはいけないなとも思われました。固定してしまうことで、本当の子どもの姿はどんどん見えなくなってしまいそうですね。

  4.  「幼児が、自身の認知能力や身体能力を過大評価することはよく知られていることだそうです。」とても頷けます。その年齢の子どもたち、例えば足の速さを誇張してみたり、自分が一番速いと本心から言っているような姿を見かけますし、「子どもの未成熟な認知には子どもの発達的ニッチにうまく適合している側面があり、必ずしも克服しなければならない欠陥とは言えないのです。」ある意味では、自身への自信がその子の発達を促しているという解釈はとても新鮮でした。
     置き換えれば大人もそうかもわかりません。誇張や威張ることを控えれば自信は大きな武器です。謙虚さは理性と共にあるのではないかと、子どもたちの姿から思いました。

  5. 乳幼児は、遊びの中で多くの“繰り返し”行動をしているのは、まさに「新しい行動の実験と古い行動の練習を続け、試行錯誤学習が非常に重要な時期に能力を高めていく」過程を通っていることを指しているようにも感じました。結果は同じように見えても、繰り返しの中にある微妙な変化に反応し、思考学習を経て、結果的に協働学習の基礎ともなっていることが伝わってきます。それを、周囲の環境によって先回りした回答や促しをしてしまうということが、それらの能力を妨げているという認識を持つことは大切です。そして、子どもながらの不十分さが「協働学習」に有利に働くということは、人間が人工知能との差を考える上での、不完全さというものとかぶる印象を持ちました。

  6. 子どもというのは面白いものですね。普通はエラーや未熟と聞くとネガティブなものというイメージになってしまいますが、子どもの場合そうではなく、むしろそのおかげで学習を促進しているという事実があるんですね。
    〝子どもの未成熟な認知には子どもの発達的ニッチにうまく適合している側面があり、必ずしも克服しなければならない欠陥とは言えない〟ということで、やはり子どもを単に大人の尺度でみていくと奪ってしまったり、見逃してしまったりというエラーを大人が起こしてしまうのですね。気をつけなければなりませんね。

  7. 幼児が自身の能力を過大評価していることについては、子どもと関わるなかで、「自分もできるからしたい」といっていることや周りの形とは異なる例えば、決まった飛び方でやっていて、周りと違う跳びかただったとしても同様にとらえているような気がしました。”自身の成績をどの程度過大評価するかという子どものメタ模倣の正確性は、言語性IQの指標と関連があった”とあり、実際にメタ認知によってどれだけ自身のことを理解しているのか、その理解していることが、年齢的に見られる発達の中でもあることかわかりました。しかし、何よりも過大評価できるからこその様々な課題へ対して意欲的に好奇心を発揮できているように感じ、過大評価には、楽観的思考があるように感じました。

  8. 「幼児の未熟な認知が多くのソースモニタリング・エラーを引き起こし、実はそのことが学習を促進している」という部分から少しのワクワク感を感じたのはどうしてでしょう。子どものまたしても知らない部分に触れることができる気がしました。「自身の模倣能力を過大評価」する傾向があるというのはよくありますが、それをマイナスに捉えることなくむしろプラスに捉えて育っているということは正に子どもが本当のオプティミストなのですかね。「幼児は様々な行動の模倣を、それが無駄だと考えることなく試みることができます。その結果、頭の良い幼児は、新しい行動の実験と古い行動の練習を続け、試行錯誤学習が非常に重要な時期に能力を高めていく」とあり、その見極めもできるという高度な能力を兼ね揃えていることがわかります。

  9. 確かに子ども達と話している時に明らかに大げさに言っている時や、自分を高く評価している姿を見かけます。特にそう言った行為に関して特別、気にもせず、また言ってるなぁみたいな感じで済ませていましたが、実は学習を促進している効果があるとは驚きます。よくよく思い返してみると、新しい行動や物事を知ると「知ってる」「できる」と言い実際にやってみると上手くいかず、その後に何度も挑戦している姿があるかもしれません。瞬間的に「ほらできないでしょ」と言ってしまいがちですが、そうではなく、その姿を見守り、時にはサポートしてあげる事が必要ですね。

  10. 頭の良い幼児は「新しい行動の実験と古い行動の練習を続け、試行錯誤学習が非常に重要な時期に能力を高めていく」とあります。そして、3,4歳のIQの高い子どもが自身の模倣能力を過大評価する傾向があり、5歳児での模倣能力の低い子どもが、IQが高かったという子どもの比較結果も面白いですね。3,4歳の時期の自己評価と5歳児の自己評価の違いには関係があるように思います。自己の過大評価を受けて様々な活動や行動を行うことで自分を知ることや自信をつけることが後の発達に影響しているようにも感じます。「子どもの発達的ニッチにうまく適合している側面があり、必ずしも克服しなければならない欠陥とは言えない」というようにその時期その時期の発達は意味があり、子ども自体が能力を開花させるための行動を自然と行っているのでしょうね。そこで大人が過度の期待や発達の先取りをしようとするのは子どもたちにとって邪魔以外の何物でもないというのがわかります。どう保障し、どう活かしてあげる環境が作れるのか、そのためには子どものことを知ることがまだまだたくさんありますね。

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