社会的環境

最近の研究では、健常な成人が心の理論課題を処理する場所と同じ脳の領域に、自閉症の人は神経生理学的な欠損があることが示されているそうです。このことから、さらに心の理論に関する能力の領域固有性が示唆されているそうです。心の理論のモジュール説を裏付ける証拠は、行動遺伝学の研究から、得られているそうです。ヒューズとカティングは、3歳の同性双生児199組において、心の理論課題に対する遺伝的影響が大きかったことを報告しているそうです。領域固有性の視点から重要なのは、この遺伝的影響が一般的な言語能力とは無関係であったことだそうです。これは、心の理論が全般的な知的能力に含まれる機能のひとつではないとする説と一貫する結果です。

世界中のほとんどの子どもが、心の理論を、同じ時期に、同じ順序で発達させますが、その発達の速度には子どもを取り巻く社会的環境が関わっていると考えられています。たとえば、教師評定による社会的技能レベルは、3~6歳児において心の理論課題の成績と相関が認められるそうです。また、就学前の子どもが、日常的に相互作用をする大人や年上の仲間の人数と、誤信念課題の得点との間に、正の関連が見られるそうです。

さらに、心の理論課題の成績は、家族の大きさ、特に、年上のきょうだいの人数と関連があり、年上のきょうだい、あるいは、同年代の仲間が多いほど、誤信念課題に早く成功する傾向がるそうです。まさに、私たちが行っている子ども集団における役割や、異年齢児とのかかわりの大切さが示されています。

年上のきょうだいや仲間の存在が、心の理論の発達にプラスの影響を与える理由としては、心的状態を議論したり、社会的葛藤を処理したり、ごっこ遊びをしたり、また社会的問題に関する推論をしたりする機会が多くあることが考えられるとビョークランドは言うのです。たとえば、ラフマンたちは、年上のきょうだいがいることによって、ファンタジー遊びが促進され、誤信念課題の解決に不可欠な技能である「現実に反する状態」の表象ができるようになると主張しているそうです。レスリーは、ごっこ遊びが18か月ころからメタ表象能力の指標となること、そして、他者がある物事について自分とは異なる表象をする、それは、異なる知識や信念を持つ可能性もあることの理解には、この能力が重要であると主張しているそうです。これを支持する証拠として、幼児が、主にきょうだいや親と行う協同的な社会的な遊びの量と、その後の他者の感情や信念の理解との間に関連性があることが見出されているそうです。このあたりの研究は、私たち保育にあたるものがきちんと理解し、それに基づいて子どもの遊びを保障する必要がありそうです。

ただし、同じ結果について証拠が不十分と結論付けた研究者もいるそうですし、また、もちろん、高度な心の理論技能をもった子どもの方が、この能力が低い同年代の子どもよりも、協同的な社会的遊びを行いやすいとも考えられています。これと異なる観点としては、カミンズによる優位性理論に基づいた説明があるようです。きょうだいは常に資源をめぐる競争をしていますが、通常、年上のきょうだいは身体が大きく、知的の威力も高いため、有利です。年下の子どもは、年上のきょうだいとの社会的競争で役立つものであれば、自身が持つ潜在的能力を、どんなものでも積極的に発達させようとするだろうというのです。そして、主な競争相手の心をできるだけ早く理解できるようになれば、年下のきょうだいは必ず利益を得られるはずです。これと同じ議論が、年上の仲間との相互作用に関しても成立すると言います。まさに、異年齢でのかかわりの大切さを示しています。

社会的環境” への10件のコメント

  1. 私たちは如何なる環境のもとに生きているのか、そしてその環境は如何なる影響を私たち自身に及ぼしているのか。今回のブログを読んで、まずこうした問いを思い浮かべました。「発達の速度には子どもを取り巻く社会的環境が関わっている」このことはまさにその通りだろうなと思われます。私が生まれた場所と現在暮らしている場所における環境の相違は私が子どもの頃から意識してきたことです。そして、私自身がその二つの場所を経験することによって、今回言われている「発達の速度」ということがわかるのです。では、その速度の速い遅いは如何なることに関わってくるのか?そうした疑問も浮かぶのです。もう一つ、異年齢集団のメリットが発達心理学的側面から表されています。「心の理論課題の成績」ということから気づいたことがあります。「上のきょうだいや仲間の存在が、心の理論の発達にプラスの影響を与える」ということです。異年齢集団の可能性を見極めていくことが私たちに求められていることもかもしれませんね。

  2. 異年齢集団、複数の子ども集団の中で子どもが過ごすことの重要性がこのように証明されてきているのですね。様々な年齢と関わることが重要というのはかつてから何となくそのことは多くの人が感じていることでもあるのかもしれませんが、重要なのはこのようにはっきりと証明されるということなのかもしれませんね。「このあたりの研究は、私たち保育にあたるものがきちんと理解し、それに基づいて子どもの遊びを保障する必要がありそうです」という藤森先生の言葉もあるようにこのような結果を私たちがしっかり理解し、それに伴う環境を用意し、そして、説明できることが大切になってくると感じました。「年上のきょうだいがいることによって、ファンタジー遊びが促進され、誤信念課題の解決に不可欠な技能である現実に反する状態の表象ができるようになると主張しているそうです」という部分もおもしろいですね。園での異年齢での関わりもこのような場面というのはたくさんあるように思います。「協同的な社会的な遊びの量と、その後の他者の感情や信念の理解との間に関連性があることが見出されているそうです」というのもとてもおもしろいです。このような姿が生まれるためにも私たちは子ども同士が関われるような環境を設定していかなければならないのですね。

  3. 心の理論についての誤信念課題の〝発達の速度には子どもを取り巻く社会的環境が関わっている〟とあり、数多くの大人や年上の子どもと関わることが多いほど、誤信念課題を早くクリアするという結果があるんですね。きょうだいの話しがありましたが、自分にも弟がいるのですが、確かに要領がいいというか、兄である自分のことをよくみて、次に弟はどうすればいいか考えているような感じはありました。
    〝年上のきょうだいや仲間の存在が、心の理論の発達にプラスの影響を与える〟ということで、このような環境が異年齢集団にはあります。心の理論という側面から見ても、異年齢集団のメリットが裏付けられているんですね。

  4. 「心の理論課題の成績は、家族の大きさ、特に、年上のきょうだいの人数と関連があり、年上のきょうだい、あるいは、同年代の仲間が多いほど、誤信念課題に早く成功する傾向がある」とありました。今までの心の理論の内容から、この傾向は何か当たり前のように感じてしまっている自分がいますが、改めて示してもらえると異年齢児保育の必要性や重要性を再認識できますし、核家族化や一人っ子家庭が増えてきている現状の子育て環境から、どうやって昔のように地域で子育てをする形にできるかを考えられ、それは保育園やこども園がその役割を担わなければいけないことが伝わってきます。また『年上のきょうだいがいることによって、ファンタジー遊びが促進され、誤信念課題の解決に不可欠な技能である「現実に反する状態」の表象ができるようになる』とあり、以前の内容にあった空想の友だちのふり遊びを思い出しました。空想の友だちの存在のメリットなどを含めて、年上のきょうだいや仲間の存在がもたらす影響の大きさを感じました。

  5. 「心の理論課題の成績は、家族の大きさ、特に、年上のきょうだいの人数と関連があり、年上のきょうだい、あるいは、同年代の仲間が多いほど、誤信念課題に早く成功する傾向があるそうです」という点が印象に残っています。それは単純に、多くのモデルを見る機会が1日の中で多いからということなのでしょうか。多くのモデルが身近にあるということは、そんなにも効果的に働くのですね。子ども集団の形や、異年齢集団の重要性がこんなところにも影響を及ぼしてくるのですね。集団というものを考えた時、「年上のきょうだいとの社会的競争で役立つものであれば、自身が持つ潜在的能力を、どんなものでも積極的に発達させようとする」ような環境をいかに構築するかが大切ということなのですね。

  6.  学び深いこの度のブログです。異年齢保育の重要性についてこれまでも様々な角度から学びを得てきたように思うのですが、改めてその大切さに気付かされる思いがしました。0歳児クラスにて、言葉や行動の発達の目覚ましい成長について触れる時、「あの子はきょうだいがいるから」と、自然とその話題になることがあります。それは保育者という専門職に就いている人に限ったことでないように思えます。過去から実践されてきたことが研究によってこうして肯定されることの喜びというものがあるような、そんな思いが湧いてきました。
     

  7. 社会的環境というのは正に異年齢保育であることがより理解できます。「年上のきょうだいがいることによって、ファンタジー遊びが促進され、誤信念課題の解決に不可欠な技能である「現実に反する状態」の表象ができるようになる」とありますが、私は3人兄妹の一番下ですので様々な葛藤や優しさに触れて育った気がします。当時異年齢保育ではなかったためそんな環境が自分にとって良かったのでしょうか。そう考えるとやはり我が子のことを考えてしまいます。兄妹は作ってあげたいものですね。そして保育に携わる人間としてこうした社会的環境を理解し、環境を意図的に作ってあげられる共通理解をもたなければなりませんね。

  8. 心の理論の発達のなかに見られる”年下の子どもは、年上のきょうだいとの社会的競争で役立つものであれば、自身が持つ潜在的能力を、どんなものでも積極的に発達させようとする”とあることへ相手を知るために認知した上での行動が自発的にあることによって心の理論が発達していくことな考えられるのですね。そして、そのために作用されること、”主な競争相手の心をできるだけ早く理解できるようになれば、年下のきょうだいは必ず利益を得られる”とあり、異年齢での関わりが持てる環境であることが示唆されますね。そのような環境下があることによっての心の理論の発達があるのならば、環境を通した多種多様な年齢での関わりが現代の家族というカテゴリーでは、少ないため、集団生活がある環境のなかでの生き方がなにを意味するのかをしっかりと考えなければならないと思うところです。異年齢であるからこそ、社会的競争で役立つものを通した成長をしっかりと考えていきたいです。

  9. 心の理論課題の成績が家族の大きさ、特に、年上のきょうだいの人数に関係し、さらに誤信念課題に早く成功する傾向があるという結果はとても重要ですね。藤森先生が言われるように集団の役割、異年齢の関わりの大切さが理解できます。中でも「共同的な社会的な遊び」が他者の感情や信念の理解との間に関連性があることが見出されていると書いてあります。この文章を読むだけで、集団での生活が必須ということが分かります。その異年齢での集団での子ども自身が学んでいく事が、遊びや生活を通して、社会に出て通用するだけの能力を培うという事が本当に素晴らしく思います。それと同時に藤森先生がずっと言われている事がやっと証明されたか・・・という気持ちも同時に出てきました。

  10. 「幼児が、主にきょうだいや親と行う共同的な社会的な遊びの量と、その後の他者の感情や信念の理解との間に関連性があることが見いだされいる」「年下の仲間との相互作用にかんしても成立するといいます」どちらの言葉においても、子どもが様々な年齢との他者との関りにおいて心の理論の発達は大きく違ってくるということが伺えます。そして、「就学前の子どもが、日常的に相互作用をする大人や年上の仲間の人数と、誤信念課題の得点との間に、正の関連が見られるようです」という言葉にとてもワクワク感を覚えますね。これまで異年齢での関わりが子どもたちにとっていい影響があると言っていたところがより具体的に科学的に見えてきたということは改めて保育の重要さと今行っていることの必要性を感じることにつながります。

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