計数と計算

ほとんどの子どもが話し始めるのとほぼ同時に数えられるようになると言われているようですが、一般に「成熟した」計数、すなわち成人が社会で行なっているのと同様の計数の練習は、幼児期後半になるまで行なわないと言われています。(ただ、ここで話し始める頃に「数えられる」というのは、たぶん日本語訳の問題だと思うのですが、「数が唱えられる」と言うことのような気がします。)計数には、以下の5つの原理が関連しているということを、ゲルマンとガリステルが示しています。

1対1対応の原理:集合中の各要素には数の名前が1つだけ割り当てられる。

安定順序の原理:数の順序は常に同じ順序で繰り返さなくてはならない。

基数の原理:数えていった最後の数がその集合の大きさを表わす。

抽象の原理:上記3原理は、どのような物の集合にでも適用される。それは、物体にも、形のないもの(たとえば一堂に会した頭脳、考え)にも適用される。

順序無関係の原理:対象はどのような順番で数えてもよい。

ゲルマンとガリステルは、1~3の原理を計数の「ハウツー」原理と呼んでおり、2歳半児でも状況によっては、この知識を示すと言います。たとえば、3歳児でも5つ以下の物の計数に1対1対応の原理を用い、ほとんどの子どもが数字を一定の順番で使い始めると言います。ただ、数字を表わす単語をおかしな順に使うこともありますが、その順番は一貫しているようです。

幼児が正しい計数に何が必要と考えているかを判断するには、一列に並んだ物の数を操り人形が数えるところを子どもに見せ、操り人形は正しかったか、間違っていたかを尋ねる方法が有用だそうです。3,4,5歳児を対象にこの方法を用いたブライアーズとシーグラーは、1対1対応と安定順序が正しく数を数えるために不可欠とする理解は、幼児期に高まると結論づけているそうです。3,4,5歳児でそれぞれ30%、90%、100%だったそうです。

しかし、5歳児の60%は、並びの真ん中からではなく端から数え始めること、同じ物は1回しか指ささないなど、その他の要素も必要と考えているようです。つまり、4歳までに計数に重要な要素を学びますが、他者の観察を通して、正しい計数の特徴ではありますが、必ずしも必要でない要素についても推測しているのだと言います。

このような生物学的一次的能力は、小さな数字の足し算と引き算に関与しているとギアリーは述べています。この説は、乳児を対象とした研究により支持されているそうです。初期の研究で、発達心理学者であるカレン・ウィンは5ヶ月児に足し算または引き算に関わる一連の可能事象と不可能事象を呈示しました。この研究の結果が「見守る保育」の動機の一つになったことを以前紹介しました。それは、舞台上の人形が2つになるはずなのに1つしかないことに乳児がびっくりするというものです。この結果は、乳児が足し算の基本的な概念を持っていることになり、これまで何度か再現されているそうですが、別の解釈も呈示されているそうです。

計数と計算” への11件のコメント

  1.  冒頭の文章に感動します。こういう解釈ができるようになるのに、これからも学びを深めていきたいと改めて思います。
     先日の園内研修で数についてを学びました。先日からの内容と繋がる部分をとても感じますし、これからの保育の専門性という点で見た時にも数についての知識が重要になることを示唆されているように思います。そういった体験や経験ができる環境を整えていくことにこれからの保育の方向もあるように思えてきます。
     子どもたちが起きてきました。朝にコメントを書く習慣で、来年も先生のブログを楽しみに、朝をムラなく起きれるようにしたいと思います。何があっても毎日ブログをアップされる当たり前のように当たり前ではないことをこうして続けられる先生の背中を、来年も見様見真似で、楽しんで過ごしていこうと思います。
     今年も一年本当に有難うございました。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

  2. 計数一つをとっても、5つもの原理があるのですね。また、「幼児が正しい計数に何が必要と考えているかを判断するには、一列に並んだ物の数を操り人形が数えるところを子どもに見せ、操り人形は正しかったか、間違っていたかを尋ねる方法が有用」とあり、何を理解して何を理解していないのかを知るには、やはり「教える」のが効果的であることを感じました。まさに、教え教わる関係性がそういった認識にも重要であることが伝わってきますし、「他者の観察を通して、正しい計数の特徴ではありますが、必ずしも必要でない要素についても推測している」ともあり、日常の「異年齢集団」による他者の存在によって、必要なことだけでなくいわゆる失敗のようなものも生かしたり、それを参考にして物事を考えている過程のようにも感じました。

  3. 幼児期後期になるまでは成人のような計数というものは行われてこないのですね。それまでは知覚能力によって数を見ているということでしょうか。また、計数における5つの原理が紹介されていました。これらの基本的な原理を踏まえて数を理解していくのですね。2歳児を見ていても不思議と1対1対応の原理や安定順序の原理というものはできているように思います。ただ、いくつか数は抜け落ちており、漠然として順序として理解しているように感じます。面白いのはやはり1から数えはじめるので1.2.3くらいまでは多くの子どもはまちがいがなくなるのですが、それ以降で数の間違えや抜け落ちがあるのがわかります。そして、確かに数を並びの真ん中からではなく、端から数え始めす。こういった原則的な見方を自然としているというのはそれまでの乳児での経験があるからなのでしょうか。「他者の観察を通して、正しい計数の特徴ではありますが、必ずしも必要でない要素についても推測しているのだ」とあります。こういった部分でも他者をモデルとした様子が伺えるのですね。なおのこと、モデルがいるような教育環境の大切さがわかります。

  4. 「1対1対応と安定順序が正しく数を数えるために不可欠とする理解は、幼児期に高まると結論づけているそうです。3,4,5歳児でそれぞれ30%、90%、100%だったそうです」ということからは子どもが徐々に数に関する概念を獲得していくということを感じます。そんな子どもの発達に応じて私たちは園の環境や関わり方を工夫していく必要があるのですね。その子の発達段階を無視してなんとか教え込もうとするのではなく、発達段階を把握した関わりの大切さを改めて感じました。「乳児が足し算の基本的な概念を持っていることになり、これまで何度か再現されているそうですが、別の解釈も呈示されているそうです」とありました。この話を聞いた時には衝撃が走ったのを覚えています。乳児の頃からこんな能力があるんだ!と驚かされました。そして、それがまた別の解釈をすることもできるのですね。どのような解釈になっているのか気になります。

  5. 計数には、「1対1対応の原理」「安定順序の原理」「基数の原理」「抽象の原理」「順序無関係の原理」という5つの原理が関連しているのですね。5つもあるんだと最初は思ったのですが、どれも読むと確かにと納得させられます。また「幼児が正しい計数に何が必要と考えているかを判断するには、一列に並んだ物の数を操り人形が数えるところを子どもに見せ、操り人形は正しかったか、間違っていたかを尋ねる方法が有用」とありました。子どもたちは学習するだけでなく、教える存在でもある、「教えたがる」一面もあると以前の内容にもあったので、この方法は有用とあったのがとてもしっくりきました。このような調査方法のように乳幼児の特性を踏まえて、保育にも活かしていけたらなと思えました。

  6. 数のセミナーをした際に3つの原理を少しばかり目にしましたが、あと2つが追加されてある「計数の5つの原理」というのがあるのですね。そして、「幼児が正しい計数に何が必要と考えているかを判断するには、一列に並んだ物の数を操り人形が数えるところを子どもに見せ、操り人形は正しかったか、間違っていたかを尋ねる方法が有用」とあり、まず自分が実践をするのではなく第三者がすることを見て学ぶということになるのでしょうか。また「1対1対応と安定順序が正しく数を数えるために不可欠とする理解は、幼児期に高まる」とあるように発達に応じてその理解がなされるということがわかりますね。

  7. 数と一言で言っても、たくさんの概念が存在しているんですね。さらに細かく分けていくと、計数の中に5つの原理が存在するということに驚きます。普段から自分たちはこの5つの原理を自然と駆使して使っていることにもまた驚きです。
    我が子の次男がちょうどもう少しで2歳半になります。お風呂に入り、上がる時には長男と一緒に10までの数を数えるのが恒例になってますが、なんとなくこの原理を理解しているから数えられるんですね。そして、その原理を身につけるには長男の存在が、つまり自分以外の他者の存在が大きいと思いますが、このようなところが異年齢の良さだと思います。

  8. 計数の5つの原理は分かりやすいですね。最近、長男がかるたやトランプで遊ぶようになり、最後はどちらが多いか数えて競って遊んでいます。おそらく保育園でも同じように友達と遊んでいるのだと思いますが、我が子と過ごしてみて、改めて遊びの中で学ぶということ実感しています。理論ばかりが先行していて肝心な実際の子どもの姿を見過ごしていたようにも感じます。乳児の人形を使った数の実験結果を聞いたときは本当に驚きました。こんな時期から足し算の基本概念を理解しているとは・・・ただ最後に別の解釈と書かれていますが、とても気になります。

  9. 計数には、5つの原理が関連しているのですね。数といえば確かに、喋り始める頃には、言葉として、使えても、実際には、意味をもってつかっているのとは、少し違って見えます。それを訳したなかで、唱えるという形では、確かに言葉として使えると言うようになっているのでしょうね。゛1対1対応と安定順序が正しく数を数えるために不可欠とする理解は、幼児期に高まると結論づけているそうです。3,4,5歳児でそれぞれ30%、90%、100%だった゛と数へ対する概念的なものは年齢と共に発達していき、大きくは5歳頃には、理解が深まっていくのですね。つながっているかは、わかりませんが、人に教えるのは、問題をとくよりも3倍くらい難しいということをよく学生の頃、耳にしていました。この関係性がこの年齢にある、異年齢であることによって様々な角度からの数へ対する興味が深まるのかと考えられます。

  10. この「計数」については、前回ブログの最後にあった「骨格的原理」ということで大いに興味関心を引き起こされたところです。但し、今回のブログによると2歳児半からの事例が紹介されており、やはり乳児段階では「計数」は不可能か、そんな感じを抱きました。どうなのでしょう。今回のブログ内容をしっかりと読んでみなければなりません。ちょいとズレますが「「数えられる」というのは、たぶん日本語訳の問題だと思うのですが、「数が唱えられる」と言うことのような気がします。」ということに関しては私もそうかなと推察するところであります。果たしてどうか?計数の5つの原理、これはこれで私たちの数理解に大いに資する内容です。「必ずしも必要でない要素についても推測しているのだと言います。」から何でもかでも真似る乳幼児ということを想起しました。計数と真似る、何か関係があるのだろうか?

  11. 幼児が正しい計数に何が必要と考えているかを判断するには、一列に並んだ物の数を操り人形が数えるところを子どもに見せ、操り人形は正しかったか、間違っていたかを尋ねる方法が有用だとあります。1対1対応と安定順序が正しく数を数えるために不可欠とする理解は、幼児期に高まると結論づけているそうです。3,4,5歳児でそれぞれ30%、90%、100%だったともあり、この時期に数に対する理解が一段と上がるのだなと感じました。
    最後に乳児が足し算の基本的な概念を持っていることに例が紹介されていましたが、面白いですし、子どもってすごいなと思います。数を理解することが我々にとって重要な能力であることということでしょうか。社会や、他者と平等に食べ物を分け合ったり、何かの物を交換したりするときに使われていたのかなと想像が膨らみました。

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