聴覚についての選好

聴覚について、乳児における選好性はあるのでしょうか?どんな声を好むのでしょうか?まず、乳児は、生まれた時点で音を聞き分け、一定の選好性をしますことがわかっています。例えば、乳児は男性の声よりも女性の声、特に母親の声を選好する傾向があるそうです。また、外国語よりも母国語で話された内容を好んで聞くこともわかっています。こうしたバイアスは、胎児期の聴覚体験によって生じるものと考えられています。聴覚は、出生前に発達しますが、最も多くの胎児が耳にするであろう音声は母親の声でしょう。

発達心理学者のアンソニー・キャスパーとメラニー・スペンスによる古典的な研究では、妊婦が出産直前の6週間、2種類のお話から一つを胎児に読み聞かせました。生後、乳児にヘッドフォンを付けて、おしゃぶりをくわえさせて、聞こえる内容、それは、胎内にいるときに母親が読み聞かせた話と、または違う話を、おしゃぶりを吸う速度で変更できるようにすると、新生児は、母親が読んでいた話が聞こえるよう吸う速度を調整したそうです。このことから、胎児が学習するだけでなく、さらには、出生前に耳にしたことに注意を向けることが形成され、それによって愛着が形成され、生存が促進されるのであろうことがわかると言います。

この愛着形成について、ビョークランドにはまだ触れていませんが、実は最近の研究では、母親の声を聞いて愛着が形成されることは確かですが、その関係は、母子においてではなく、母親に似ている人と愛着を形成することが明らかになりつつあります。ビョークランドが言うように、それは、それによって生存が促進されるようになるためであることは確かなのですが、人類が誕生した頃には、母親の死亡率が非常に高く、母親とだけ愛着形成をしてしまうと、赤ちゃんの生存は促進されなくなってしまったのです。そこで、母親に似た人、すなわち、母親と同じ言葉(それが、この子にとって、母国語)を話す人に愛着を結ぶと言われています。ですから、母国語を選好する傾向があるのです。この本が日本で発行されたのは、10年ほど前のことです。10年の間に、乳児研究が進み、新しい知見が研究されているのです。

しかし、乳児が生まれたてから音を聞き分けることができるのは確かですし、その音に対して選好する傾向があるのは確かなようです。さらに、一見して特に言語獲得と関連しそうな乳児の聴力の特徴がほかにもあります。乳児は、まとまりのない音楽よりもよくまとまった音楽に選好性を示すそうです。また、さまざまな音楽様式について調子が合っているか合っていないかを識別できることもわかっています。音楽の進化的、生物学的ルーツに思いをめぐらし、ヒトの乳児は、言語を獲得する素地を持つのと同じように、音楽システムを獲得する素地を持つとする考え方に、ビョークランドは興味を持っています。しかし、それについては、まだその考え方は当時は明らかにはなっていないそうです。

では、嗅覚についてはどのように考えられているのでしょうか?現在、新生児は広範にわたる臭いを弁別することができ、生後1週のうちに特定の臭いへの選好性が発達することがわかっています。母親のものと別の女性のものと2種類の乳パッドの間に乳児を寝かせ、顔を向ける方向を調べたのですが、これについては以前のブログでも紹介しました。

聴覚についての選好” への11件のコメント

  1. 人類が誕生した頃は母親の死亡率が高かったということから、「母親に似た人、すなわち、母親と同じ言葉(それが、この子にとって、母国語)を話す人に愛着を結ぶと言われています」とありました。人類の進化から考えることで、乳児の特性の意味を知ることができるというのはとても興味深いですね。というよりそれは生存戦略なので、人類の歴史を見ないとわからないこことでもあるのですね。このような視点はとても勉強になります。狭い範囲だけを考えていては本質を知ることはできないのかもしれませんね。また、乳児はまとまりのない音楽よりも、まとまった音楽の方に選考性を示すとありました。このようなことまで分かってきているのですね。音を聞き分けることができるというのはどういうことなのでしょうか。「犬」ということを言葉や文字にしてしまえば、音の違いがあってもそれが犬であるということは分かります。しかし、まだ、言葉を持たない乳児にとって音を聞き分けることが言葉のかわりになっていたのでしょうか。自分でもうまく整理できていませんが、赤ちゃんはすごいですね。

  2. 「母親の声を聞いて愛着が形成されることは確かですが、その関係は、母子においてではなく、母親に似ている人と愛着を形成することが明らかになりつつある」とありました。その背景に「人類が誕生した頃には、母親の死亡率が非常に高く、母親とだけ愛着形成をしてしまうと、赤ちゃんの生存は促進されなくなってしまった」ことを知ると、藤森先生の主張に近い生存戦略の見直しはやはり重要であると改めて感じることができます。以前からわかっているもの、新しくわかってきたものも、元を返せば生存戦略として必要だったところにつながっていくのだろうなと予測できます。また、音楽においては「まとまりのない音楽よりもよくまとまった音楽に選好性を示す」ことも胎児のころに母親の鼻歌などが聴こえたりしていたからのかなと感じましたが、「さまざまな音楽様式について調子が合っているか合っていないかを識別できる」ことにおいては、胎児のころの経験というよりも、生まれながらに備えている能力となるのでしょうか。

  3. 愛着形成について、母親だけに愛着形成されない理由が「その昔は出産時の母親の死亡率が高かったため」であり、母国語をしゃべる人を選好するということでした。これだけ医療が発達している時代でも、少なからず死亡しているケースがあるので、その理由は大きくうなづけます。
    このようなことが進化の側面からみるという視点は自分にとっては新鮮なものであり、赤ちゃんの素晴らしさを感じてます。
    あと、まとまった音楽というのは、バンドやオーケストラのようなものだと解釈しましたが、これも絶対音感よりも相対音感という概念で人間は音を聞いているということの証明であるように感じました。

  4. 保育所保育指針が、保育の質の向上のために10年に一度の改訂をしている理由が「10年の間に、乳児研究が進み、新しい知見が研究されている」というところからも感じます。母国語を選好する傾向がある理由も「人類が誕生した頃には、母親の死亡率が非常に高く、母親とだけ愛着形成をしてしまうと、赤ちゃんの生存は促進されなくなってしまった」ためと書かれており、赤ちゃんは自ら生きるために、その能力を進化の過程で獲得してきたことがうかがえます。そして、言語のみだけでなく、音楽システムも構築しているということにも驚いています。

  5. 胎内にいるときに母親が読み聞かせた話を生まれてから好んで聴くというのはまさに胎児からの音をしっかりと把握しているということですね。ここまでの証拠を生み出すまでが大変であっただろうなと感じるとともにこの実験の仕方がすごいですね。おしゃぶりをコントロールしてその話を選んで聴けるのようにする方法というのも気になるとのろです。そして生き抜くためにその母親の言葉を知り、似た人でも生き延びられるようにしているという愛着から特定こお母さんと決めてしまわないことの重要性を強く感じさせてくれます。

  6. やはり母親のお腹の中にいることから、男性よりも女性の声を好み、母国語を選考するのは納得できます。愛着も産まれてから形成していくものと思っていましたが、胎児の時から母親の声を聞くことで、愛着を形成し、生存戦略をとっていたのですね。そういった考え方は面白く、赤ちゃんと言うよりも胎児の能力の高さに驚きます。ただ、後半には母親の生存率が低く、母親とだけ愛着を結んでしまうのは生存確率が低いため、同じ母国語を話す人を選考し生き延びる戦略をしているという考え方は驚きました。まだまだ明らかになっていない事があると思うとわくわくしますね。

  7. 生後間もない乳児の聴覚において、見分ける力があることはこれまでのブログの中でも数々言われていました。危機回避のために音のする方向に反応するだけではなく、男性の声よりも女性の声、外国語よりも母国語とその反応の違いが研究されていく中で様々な部分が見えてきます。ただ、危険を回避するためではなく、自分を守ってくれる存在を早く認識し、守ってくれるように積極的に働きかけているということがわかります。しかし、「まとまりのない音楽よりもよくまとまった音楽様式について調子があっているか合っていないかを識別できることも分かっています」とあります。よく胎教でもクラシックを聞くようにするといいとありますが、音楽の調子まで理解しているのですね。確かになぜ、そのような音楽までも聞く能力が備わっているのでしょうか。ほかの動物だと、声色や音程を使って挨拶などをしていますが、人間は言語があります。声色や流暢性としてのリズムはありますが、それがなくても意味は通じます。しかし、それが乳児のころから必要とされていたのには言語がなかった時代からの人間の性質としてのものが残っているからなのでしょうか。考えていくと興味深いことが多いですね。

  8. この実験の結果は面白さのなかに、奥深さがありますね。このことを考えたときに、母親と子の愛着関係というものは、お腹にいるときから始まっているのだと感じます。
    また、゛人類が誕生した頃には、母親の死亡率が非常に高く、母親とだけ愛着形成をしてしまうと、赤ちゃんの生存は促進されなくなってしまった゛ことから、人類の誕生時の頃では、母親に似た母国語を使う人と愛着を結ぶなど、愛着の形は、生存率をあげることへのつながりが強く感じます。こういった聴覚からの選好があることが相対音感へと繋がっていくのでしょうか。

  9.  「新生児は、母親が読んでいた話が聞こえるよう吸う速度を調整したそうです。」この研究結果は凄いですね。新生児に聴覚が備わっていることをこうした形で証明される、そのインパクトもそうですし、なるほどと納得させるだけの印象をもたせるように感じられます。こうした研究結果が新しい子ども観を後押してくれるように思いますし、子どものことをこうして真剣に考える大人の存在が、きっとこれからの未来を豊かなものにしていくのだろうと思います。未来は子どもたちに託されていますが、大人にだってまだまだやれることがありますね。皆で手を取り合えば、未来はどんどん豊かになっていけると思います。

  10. ビョークランド博士の胎児・乳児に関する聴覚研究が発表されてからの10年間、「ビョークランドにはまだ触れていませんが、実は最近の研究では、」とあるように、この10年間でさらに新しい裏付けが解明されている。進化発達心理学の分野も目覚ましい研究成果を世の中に出しているのですね。胎児の聴覚と母子愛着が単純にリンクすると、関係性が母子のみ、ということになって父親を始めとする兄弟姉妹あるいは親類縁者、あるいは地域の人々との繋がりが子の育ちにとって然程大きな意味をなさないことになりそうです。しかし最近の研究により「母親と同じ言葉(それが、この子にとって、母国語)を話す人に愛着を結ぶ」ことが判明しました。この場合の愛着も子どもが負の状況に陥った時母親以外の人に助けを求められるということで、その愛着とは信頼関係であることのほうがすっきり納得いきますね。音楽の選好に「まとまり」ということがあるようですが、わらべ歌などはある一定のメロディーや拍子があることで「まとまり」に合致しているのでしょう。

  11. 乳児を対象に行ったおしゃぶりを使った実験、面白い結果ですね。赤ちゃんがしっかりと音を聞き分け、好きな音というか、懐かしい音でしょうか、聞いたことのある音だなと記憶に残っているんですね。そして、おしゃぶりを吸う速度で音が変わるということでしたが、その仕組みというか、仕掛けも理解しているかは分かりませんが、感覚的につかんでいるんでしょうね。赤ちゃんってすごいですね。こうやって乳児のことを知れば知るほど、今までの自分の考えがいかに偏っていたかを感じます。
    自分の母親の言葉に近い人に愛着を持つという考え、言葉を通して活動範囲をあえて狭め、自分らの命を病気から守っていた話もなるほどなぁと勉強になります。正直、中学校の時に、世界の言葉を一つにしたら言葉の壁がなくなっていいのになと思ったこともあります。しかし、それでは人類は生き残ってこれなかったわけで、人の生きてきた歴史の中にはちゃんと理由があって、それを見つめることが今を生きるヒントになることを感じました。

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