嗅ぐと見る

母親のものと別の女性のものと2種類の乳パッドの間に乳児を寝かせ、顔を向ける方向によって選好性を測ったところ、生後2日では選好性を示さなかったのですが、6日目までには自分の母親の乳パットの方向により頻繁に向くようになったそうです。別の研究では、生後4日までに乳児は、羊水よりもミルクの臭いに選好性を示すようになること、また、生後2週間の人工栄養の乳児は、授乳していない女性の乳房の匂いよりも授乳中の女性の乳房の匂いを好むことが示されているそうです。これらの知見から、乳児は母乳の匂いに対して特に敏感であること、そして、その匂い、特に自分の母親の母乳の匂いに対する選好性が生後数日で発達することが示唆されているそうです。

ずいぶんと早い時期から匂いは感じるようですが、乳児にとっては、匂いをかぎ分けるというのは、生存に関わる重要な能力ですので、当然かも知れません。弁別ではありませんが、出産直後の新生児を、母親の腹の上に乗せると、母乳の匂いをかぎつけて、乳房の方に向かって進んでいき、乳房に吸い付くということを聞いたことがあります。

次に視覚です。乳児の視覚に関しては、ずいぶんと研究が進んでいますし、五感の中では最も多いそうです。視覚は、生まれた時点では比較的弱いのですが、生後6ヶ月間に急速に発達します。水晶体の弾力性があまり高くないため、焦点を合わせることが難しいと言われています。新生児の「焦点」は、眼から約20cmにある刺激に合いやすいと言われています。この距離は、授乳時の乳児と母親の顔の距離にほぼ等しいのです。生後2ヶ月児までの注視行動のほとんどは、脳の皮質下領域によって制御されており、それが「意図的」ではなく、「自動的」な処理であることが示されています。生後3ヶ月になると、注視行動の制御がうまくなり、見たいものに目を向けるという明らかな選好性を示すようになるそうです。

選好性を示す物理的刺激には、動き、垂直対称性、すなわち、左右が類似の刺激、および曲線性などの特徴があると言われています。これは、すべてヒトの顔が持つ特徴なのです。また、初期の研究で、乳児が一般にヒトの顔のような刺激を、それ以外の刺激よりも好むことが示されているそうです。

視覚的選好性で少し意外なのは、乳児が魅力的な顔を好むことだとビョークランドは言っています。ラングロワたちは、大学生が評定した魅力的な女性の顔と、魅力的でない女性の顔の写真に対して、2~6ヶ月児に呈示してみたそうです。どの月齢児も、魅力的ではない顔よりも、魅力的な顔を長く注視したそうです。この選好性は乳児の母親の魅力度評価とは関連がなかったそうです。より最近の研究では、モデルの性別、人種、年齢に関係なく、この選好性が存在することが示されているそうです。呈示した顔が、男性でも女性でも、成人の黒人女性でも、白人女性でも、3ヶ月児であっても、魅力的な顔に対する選好性を6ヶ月児は示し、それは見た経験がほとんど、またはまったくないカテゴリーの顔についても結果は一貫していたそうです。

不思議ですね。どうしてこのような選好性があるのでしょうか?その選好は、人類の生存に意味あることだったのでしょうか?また、乳児にとって魅力的な顔とはどのような顔なのでしょうか?

嗅ぐと見る” への12件のコメント

  1. 生後間もない乳児に対する実験も行われているのですね。2日目、6日目とあり、そのあまりの間もなさに驚きました。匂いを嗅ぎわけるということは乳児にとって生きるためにとても重要なことになるのですね。それはやはり口に入れるものを判別するのに、匂いというのがまず一番重要であるからということにもなるのでしょうか。また、視覚についてありましたが、乳児が魅力的な顔を好むというのはおもしろいですね。乳児にとって魅力的な顔がどういうものなのか気になります。人によって魅力的と思う顔は違うのかなとも思ったのですが、もしかすると私たちは大人は様々な経験から魅力を感じているのかもしれないなと思うと、純粋に顔だけで判断している訳でもないのかなと思います。乳児にそういった経験はないと思うのですが、何か殺気が出ていない顔を好むとかがあるのでしょうか。それか、不調和な音を好まないという特性があることから、左右対称な美しい顔を魅力的と思うのでしょうか。きになるところです。

  2.  私は占いを趣味にしており、人相についての観相学をかじったことがあります。そこでは男女を問わず美形のポイントは顔の左右バランスが整っていることとされています。さらに良い運気の人相としては広角が上がり、眉が垂れていることとされています。端的に言えば、垂直性対象であり、顔全体が丸い曲線を描いているということです。よって赤ちゃんの選好性と観相学的に美形と言われる顔立ちは合致していることになります。良い人相は良い運気をもたらします。まさか赤ちゃんはそれを狙っている?

  3. 「特に自分の母親の母乳の匂いに対する選好性が生後数日で発達することが示唆されている」というように、赤ちゃんは生きるために本能的な行動をみせてくれます。それらは、「生きたい」と強く思う赤ちゃんの言葉のようにも聞こえます。生を受けてから、自らの力を信じて本能的に生きようとする姿は、多くの人の共感を得るように、人が「子孫を残す」という行為に辿りつく意味というものがまた一つ感じられたようにも思いました。そして、授乳中の距離のように、「新生児の「焦点」は、眼から約20cmにある刺激に合いやすい」ことが、生きることの次なる問題を解決させるための能力を、自ら発達させようとする人間の強さみたいなものも感じました。

  4. 「乳児は母乳の匂いに対して特に敏感であること、そして、その匂い、特に自分の母親の母乳の匂いに対する選好性が生後数日で発達することが示唆されている」とあったことは、生存戦略という視点からも納得のいく思いです。このような生きるために必要な力と言いますか、本能的なものが人類の生存戦略に行き着くと考えると改めて感慨深く感じています。そして、視覚的選好性で少し意外とあった「乳児が魅力的な顔を好む」には驚かされました。最初は「魅力的な顔=母親の顔」なのかなと思っていたら、「この選好性は乳児の母親の魅力度評価とは関連がなかった」とあり、より一層驚きました。魅力的な顔を好むことに関しても生存戦略と関連しているのでしょうか。それとも人類の繁栄とも言える、より良い遺伝子をつなげていく子孫繁栄のための土台作りのようなものだったりするのかなと予測したりしています。

  5. においというのは生きるために必要不可欠なものであるということでしたが、嗅ぎ分けたり、口に入れるもの、入れたものが危険かどうかの判別にも使われるからであるということなんでしょうか。嗅ぎ分けるというのは不思議なものですね。知らず知らずの内に好きなにおいに反応していたりするというのを聞いたことがありますが、赤ちゃんでも好きなにおいがあり、その方向に顔が向いてしまうということなんですね。
    赤ちゃんが魅力的な顔を好むというのは面白いものです。赤ちゃんにとっての「魅力的な顔」というのがどんな顔なのか気になります。魅力的な顔というのは個人差もあるのではないかと思いますが、黄金比であったりの整った顔立ちを赤ちゃんは好むのでしょうか。また、そのことにどのような背景があるのか気になります。

  6. 羊水よりもミルクの匂い、授乳していない女性よりも授乳している女性の匂い、自分の母親の乳パットを嗅ぎ取る力など、子どもはより細かな嗅覚の力を持っているのはこれまでもブログでありました。それは生きていく力としてはとても重要な力でしょうし。自分の養育者の匂いを嗅ぎ取ることはより安全に生きていくために重要なのでしょう。しかし、これは大人でも嗅ぎ分けられるような違いがあるのでしょうか。私には嗅いだことがないのでわかりかねるのですが、赤ちゃん特有の力であるのであれば脳の刈り込みというものにも関わってくるのでしょうか。また、視覚もここでは紹介されています。魅力的な顔ということが挙げられていましたが、不思議ですね。性別、人種、年齢に関係なく選好が行われているというのは不思議なことです。きっとなにか意味があるのでしょうが、想像もできないです。やはり生存になにか関係があるのでしょうか。

  7. この嗅覚のことを改めて考えると、すごいですね。確かに他の動物でも産まれた直後に母乳を飲んでいる姿から人類だけではなく、動物に備わっている力であることを感じます。視覚について、゛新生児の「焦点」は、眼から約20cmにある刺激に合いやすい゛とありました。これはちょうど
    授乳時の距離に等しいとすると、やはり、赤ちゃんは、見つめられることを好まないことを考え、目を合わせないように、見つめる時間を短くすることが必要なのかなと思います。゛乳児が魅力的な顔を好むことだ゛という言葉は驚きます。私たちが魅力的だと思うことと同じ感覚なのでしょうか?大人は雰囲気も重視することもあるので、興味が湧きます。

  8.  嗅覚が赤ちゃんに備わっていること、不思議ですがこうした研究結果を知ると、なるほどやはり生きるための力を携えていることがわかります。しかし、こうした時に父親の存在というのは、やはり面白い位置付けにあるものですね。子育てや保育に関して言えば、男に生まれたということだけでもう役割が決められている、と言っても過言ではないのかもしれません。
     視覚についても驚くべき内容ですね。文末「乳児にとって魅力的な顔とはどのような顔なのでしょうか?」顔のつくりは好みだとすれば、やはり笑顔が重要なポイントになるのではないかと思うところです。

  9. 「6日目までには自分の母親の乳パットの方向により頻繁に向くようになった」とあるようにそんなに生まれてすぐに嗅ぎ分けることができるのですね。乳児のすごさを目の当たりにしているようです。やはり乳児にとっては、匂いをかぎ分けるというのは、生存に関わる重要な能力なのですね。そして視覚については「乳児にとって魅力的な顔とはどのような顔なのでしょうか?」という部分が非常に気になるところです。どんな人でも魅力的な顔を選好するとあるように乳児の好む顔は美しいとかそういった部類なのですかね。もしくは丸い形なのか。気になるところです。

  10. 長男の出産に立ち会ったのですが、確かに生まれてすぐに、母親のお腹の上に赤ちゃんを乗せていたのを覚えています。ブログに書いてあるような意図があったのですね。初めて知りました。単純に母親に最初に抱かせてあげる為かと思っていました。ただ、匂いに関して個人的にいつから嗅ぎ分けるのか気になっていました。最近、やっと長男がいい匂い、臭い匂いなど反応を示すようになったので、それまで匂いに関する言葉は聞いたことがなかったので気にはなっていたのですが、そんな早い時期から嗅ぎ分けていたとは驚きです。確かに生存戦略のように匂いを嗅ぎ分けるのは重要かもしれません、視野に関しても書いてありますが、新生児がそこまではっきりと見えていないのならば、匂いで判断するのは必然の事なのかもしれませんね。

  11. 「母親のものと別の女性のものと2種類の乳パッド」嗅覚実験によって赤ちゃんの持つ嗅覚力を調べる。自分の母親と別の女性とを区別する。赤ちゃんの生存戦略の一つでしょう。そして驚くべきことは、授乳中の女性とそうではない女性の「乳房の匂い」も区別できる、という赤ちゃんの能力です。何だか、生きるということに一生懸命な赤ちゃん像を思い描くことができます。母親からの母乳だけではなく「乳母」の母乳も頂く。生きるためにはどうするか、赤ちゃんの自発性を感じざるを得ません。摂取するものが真に栄養になるのは食べたいという意欲があればこそでしょう。この赤ちゃんの自発性に私たちは注視するべきでしょう。「母乳の匂いをかぎつけて、乳房の方に向かって進んでいき、乳房に吸い付く」これら3つの行為は全て自発的ですね。赤ちゃんは既に主体的であり自発的。視覚的選好性のところの「乳児が魅力的な顔を好む」は、へぇ~と思いましたね。だから、アイドルなどが存在するのか、と思ってしまいました。おもしろいですね。「人類の生存に意味あることだったのでしょうか?」あることなのでしょうねぇ、赤ちゃんの生き方に無駄があるような気がしませんから。

  12. 嗅覚は生後二日で発達するんですね。ずいぶん早く、驚きました。匂いをかぎ分けることが生存にかかわるとありましたが、それは、腐ったもの、食べれないものを分けるためでしょうか。昔は母親の生存率も低く、自分で生きていかなくてはならない環境であったことともつながるなと思いました。
    視覚についての実験で、魅力的な女性の顔をより長く注視したんですね。自分の好きな顔?でしょうか、それがわかっているんですね。驚きです。しかも、見た経験がほとんど、またはまったくないカテゴリーの顔についても結果は一貫していたとあり、本当に不思議ですね。言語と同じで母親と同じ人種を好むならわかるのですが。。。この不思議がとても面白いです。

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