顔知覚

森口自身も、DCCS課題中の脳活動を、NIRSを用いて計測したそうです。3歳と5歳を対象にして研究を実施したところ、5歳児は課題に通過できましたが、3歳児の半数が課題に通過できなかったそうです。また、5歳児は左右の下前頭領域を活動させたのに対して、課題に通過できた3歳児は右の下前頭領域を活動させていたそうです。この結果は、実行機能課題において、年少の子どもに比べて、年長の子どもは前頭葉の一部領域を強く活動させたことを示していることになると言うのです。NIRSでは、脳の一部の活動しか計測できないので、それ以外の脳領域の活動が年齢とともに低下したのか否かは、明らかではないそうです。年少の子どもの前頭葉においても相互作用説と一致するような発達プロセスが見られるかは、今後検討すべき問題ではないかと森口は言います。

これは、どういうことなのでしょうか?この5歳児と3歳児における下前頭領域の活動の違いは、私たちが3歳児と5歳児に対する接し方が何か違うのでしょうか?ただ、脳の構造発達は、多くの部位において出生後急激に増加し、その後刈り込まれていくのに対して、前頭葉は、3歳児、5歳児においても成熟しているということを理解する必要はありそうです。この部位が、実行機能に関係するからです。というのは、学術的には、実行機能は、行動、思考、感情を制御する能力であり、認知プロセスのことを指すからです。この関係について、森口は、より深く考察しています。それについては、もう少し後で紹介しようと思っています。

では、もう一つの人間らしさである社会脳の発達はどうなのでしょうか?社会脳は、情動認識に関わる扁桃体や、顔認識に関わる紡錘状回などに加えて、心の理論や意図理解にかんする脳内機能も含んでいるのです。この内容については、2012年の6月あたりで、千住博士著「社会脳の発達」という本を読み進め、このブログで解説しています。私は、5年以上前から、この社会脳について非常に関心を持ってきました。私の「見守る保育」の英語版のサブタイトルを、「… on Mimamoru philosophy toward social networks from the dyad」としたのは、この「社会脳の発達」という本に刺激されてのことでした。

しかし、この社会脳に関わる各部位の活動は、発達的にどのように変化していくのかということについて、脳研究があまり進んでいないため、はっきりはしていないそうです。特に乳児については難しいそうで、fMRIが使える児童期以降の子どもを対象にした研究はあるそうです。それによると、顔知覚研究では、子どもと大人の脳活動には違いがあることが示されているそうです。10歳から12歳の子どもと大人の顔知覚時の脳活動を調べた研究によると、大人も子どもも顔知覚時に紡錘状回を活動させますが、子どもは大人よりも、広い範囲の紡錘状回や側頭の領域を活動させているそうです。

一方で、子どもよりも大人の方が顔を知覚した際に紡錘状回の広い範囲を活動させるという知見もあるそうです。この研究では、紡錘状回は青年期にならないと十分活動しているとは言えないと主張しているそうで、相互作用説よりは成熟説を支持する知見といえるかもしれないと森口は言います。