情報処理における記憶

私が、保育の中で興味があるのが、子ども同士の関わりです。それは、人類の祖先であるホモサピエンスの最も有効な生存戦略として、家族という集団を作り、社会を作ってきたことが挙げられているからです。また、少子社会においては、家庭には子ども集団が少なくなってきたからということもその理由です。そこで、この人とかかわる力は、ヒトはどうやって身につけていくのか、生後どのくらいになると、母子という二者関係から、多くの他者を認識しはじめ、他者の心を理解し始めるであろうかということの研究に注目しています。それは、乳幼児施設における保育の意味でもあり、役割を示しているからです。

このような関わりについての研究は「心の理論」と「実行機能」についての考察であるので、何度もブログで取り上げてきました。森口は、情報処理能力に関係のあるワーキングメモリと実行機能の発達から考えています。現在、バドリー博士のモデルでは、視空間性ワーキングメモリと言語性ワーキングメモリが独立していると想定しているそうです。さらに、近年の研究により、就学前の時期である4歳頃には視空間性ワーキングメモリと言語性ワーキングメモリとがそれぞれ機能している可能性が示されているそうです。

では、実行機能の発達はどうなのでしょうか?研究内容は省きますが、近年の研究では、3歳から6歳くらいまでの間に実行機能が著しく発達することが示されているそうです。このようにワーキングメモリや実行機能は幼児期には機能しているようですが、乳児ではどうでしょうか?乳児においては、まず短期記憶の研究になってしまうようですが、乳児が大人と同じくらいの短期記憶を持つ可能性が示されているそうです。特に視空間性の記憶課題においては、1歳児も大人とあまり変わらない可能性が指摘されているそうです。

では、長期記憶はどうなのでしょう。長期記憶については色々と分類されて研究されています。まず、言葉やイメージで表現できる記憶は「宣言的記憶」と言います。一方、言葉で表現されない物事の手順についての記憶は「手続き的記憶」と言います。乳児を対象にした場合には、これらの分類は必ずしも明確ではないそうですが、かつてブログにも登場した「馴化」というなれるという行為は、覚えている、記憶しているということなので手続き的な記憶に近いものとされています。また、遅延模倣は、宣言的記憶の指標とされるそうです。そうすると、新生児にも学習能力があることを考えると、手続き的な記憶が生後すぐから機能しているのは間違いないと言います。以前にも紹介しましたが、遅延模倣課題を用いた研究では、6ヶ月の乳児ですら提示されたイベントを24時間後に再生できることが知られています。

これらの結果は、乳児ですら宣言的記憶を持っていることを示唆します。しかし、私たちは、3歳以前の記憶を持っていません。私たちが思い出せるのは、3歳か4歳頃、早くて2歳頃からです。この問題は非常に興味深いもので、いまだに議論されているそうです。最初、フロイトによって「幼児健忘」と名付けられたこの現象は、当初は乳児期の情動的トラウマを抑圧するために引き起こされると論じられたそうです。しかし、どうもトラウマを引き起こすようなネガティブな記憶だけでなく、ポジティブな記憶も思い出せないことについては説明できません。ということで、近年は、脳の発達、特に記憶にかかわる海馬や側頭葉、前頭葉から考察されているそうです。これも、十分な説明にはなっていないそうです。それは、長期記憶というのは、生涯にわたって保持されているはずだからです、