問題点

ピアジェは、三つ山問題によって、子どもは自分と違う視点からものを見ることができず、自己中心的であるとしました。しかし、違う課題から自分の視点とは異なる視点をとることができることがわかりました。同様の結果が、様々なピアジェ課題で得られているそうです。これらを見てみると、ピアジェ理論をそのまま受け入れることはできないことになるのです。また、これらの結果は、ピアジェ理論の支柱である段階発達論に対しても疑念を呈しているようです。

ピアジェによれば、同じ発達段階にいる子どもは、一貫して同じように思考するはずです。たとえば、保存の概念を持っていない子どもは、どのような課題でも、保存の課題に失敗するはずです。しかし、実際には、子どもは同じ能力を扱っているはずの課題に対して異なった反応を見せます。ピアジェの推論課題を検討したブライアント博士は、子どもがピアジェ課題に困難を示すのは、推論が出来ないためではなく、推論をするために必要な情報を記憶できないことによると述べているそうです。同様なことが三つ山問題や数の保存にもあてはまるというのです。要するに、ピアジェ課題には、課題解決を疎外する情報が数多く含まれており、子どもの能力を、例えば保存概念などを正当に評価できていないというのです。このような中で、課題に含まれる情報が子どもの成績にどのように影響を与えるかに注目が集まったそうです。

認知は、情報の獲得や処理にかかわる精神活動のことを指し、知覚や学習、記憶などの複数の精神活動を含みます。20世紀前半の心理学は、行動主義が隆盛をきわめており、外から観察される行動にだけ焦点を当て、意識などの高次の精神活動を研究対象から外していたそうです。しかし、チョムスキー博士による生成文法理論などが1950年代にかけて大いに進展し、情報理論などと接点を持つことによって、認知科学や認知心理学という新しい研究領域が勃興したそうです。

認知心理学では、情報処理理論が進展したそうです。情報処理理論とは、人間の心のモデルとしてコンピューターを用いる試みのことだそうです。情報処理理論にも様々あるそうですが、共通点は以下のものだとしています。まず、ハードウェア構造です。コンピューターには、キーボードのような入力装置とディスプレイのような出力装置に加えて、中央処理ユニット(CPU)やメモリなどを含む本体があります。キーボードからの入力を、本体に記憶されている命令のセットに従って処理し、ディスプレイに出力を返します。人間の場合は、目や耳などの感覚器から入力された情報が、脳内に蓄積された記憶と関連づけられて処理され、行動などの形で出力されます。このようなハードウェアに加えて、ソフトウェアがあると見なす点も共通しています。コンピューターで言うと、ソフトウェアはエクセルなどのように特定の問題を解決するためのプログラムのことを指します。人間の場合は、問題解決の方略のことをソフトウェアと見なします。

また、処理の過程に関しては、コンピューターではキーボードなどによって与えられた情報が、コンピューターが理解できる記号に変換されますが、情報処理理論では、人間でも、環境から与えられた情報が、頭の中で記号(心的表象)として表現されます。また、コンピューターは、特定の問題を解決するための計算機です。人間の精神活動も、問題解決場面では、同じ過程を含みます。

私は、情報処理についての人間の心のモデルとして、コンピューターを用いる試みを認知心理学で行なうことを初めて知りました。なんだかおもしろいですね。