情報処理の発達

ワーキングメモリに関して、近年特に注目が集まっているそうです。ワーキングメモリとは、ある認知活動に必要な情報を一時的に保持しつつ、保持している情報を処理する際に必要とされるメカニズムのことですが、それは、保育、乳幼児理解にどのような意味を持つのでしょうか?

まず、情報処理理論で言えば、子どもはメモリなどのハードウェアと、方略などのソフトウェアを持ったコンピューターにたとえられます。すると、子どもが認知発達領域においての特徴は、ハードウェアとソフトウェアが変化する点になります。子どもが情報処理能力を向上させ、新しい方略オア発展させるというのは、メモリを4GBから8GBに増設するように、また、ソフトウェアをバージョンアップするということになります。このように考えて、子どもの認知発達の機序を論理的思考ではなく、情報処理能力から考えるということを行なったのです。

情報能力が年齢とともに発達することは多くの研究者が一致するところですが、年齢とともに情報処理の容量が増加していくとする研究者もいれば、処理容量自体は子どもでも大人でも大きな違いはなく、情報処理効率の変化を指摘する研究者もいるそうです。そして、この効率の変化の要因は、脳の成熟、認知方略の発達、自動化などによると考えています。自動化とは、新しい問題を与えられたときに、当初は自分の処理容量のすべてを使って解決していたものが、何度も同じ問題を解くことによって処理容量の一部を使用するだけでよくなる様子のことを指します。この考え方からすると、情報処理の発達が、ある段階から別の段階への認知発達に寄与するというのです。つまり、子どもが十分な情報能力を持つことで、与えられた問題に対してより複雑な形で表象することができるようになり、新しい思考様式ができるようになると言うのです。

では、情報処理能力はどのように測定するのでしょうか?ケース博士は、情報処理能力を、処理効率と記憶空間に分け、それぞれを独立に測定しました。前者はある特定の処理が実行される測度によって、後者は短期記憶に保持できる項目の数によって測定したのです。具体的には、処理効率の課題では、子どもは星や木などの七つの単語のうちいずれかを聴覚的に提示され、その単語をできる限り早く再生することを求められました。たとえば、星という単語が聞こえたら、その単語をできる限り早く口答で答えるのです。単語を提示されてから反応するまでの潜時が測定されました。

また、記憶空間の課題では、単語を様々に組み合わせて、子どもが単語をいくつ覚えることができるかを検討しました。例えば、「星・木」などの単語のセットを覚えるように求められます。この課題を3歳から6歳に与えたところ、3歳児の処理速度は平均で800msだったのに対して、6歳児は460msであり、記憶能力も3歳児は平均で三つの単語を正しく覚えられましたが、6歳児は四つから五つの単語を記憶できるという結果が得られたそうです。

このような観点からピアジェの研究を説明しています。情報処理理論では、課題の持つ特徴と子どもの情報処理能力を分析することによって、ピアジェ理論では説明できないことを説明できるようになったそうです。

情報処理の発達” への13件のコメント

  1.  「年齢とともに情報処理の容量が増加していくとする研究者もいれば、処理容量自体は子どもでも大人でも大きな違いはなく、情報処理効率の変化を指摘する研究者もいるそうです。」おもしろいですね。「情報能力が年齢とともに発達する」という観点については同じものの、その内容についてはこのような違いがあり、それについてそれぞれの研究が進んでいるのですね。長男が3歳の時に3歳児検診に行きましたが、長男の理解力で検診で問われる内容が全てわかったかどうかわからず、それでも診断結果は出ます。以前ブログで「つぐみ」の話がありましたが、研究内容の工夫によって得られる結果は変わるという最新の結果をもとに、子どもに関する様々なことは決定されてほしいですね。

  2. 「当初は自分の処理容量のすべてを使って解決していたものが、何度も同じ問題を解くことによって処理容量の一部を使用するだけでよくなる様子のことを指します」と自動化についてありました。問題を解くという状況を繰り返すことで、子どもは処理容量の一部を使うだけでよくなるという自動化を行えるようになるのですね。これは園でいうとやはりいろいろな経験をするということが大切になってくるのでしょうか。それもその経験をさせられるというより、自分で行なっているということから獲得されるものなのかなとも思えたのですがどうなでしょうか。また、発達によって処理効率や記憶も異なるということからも、個人差、発達差を踏まえた関わり方をしていかなければいけないなと感じます。

  3. 自動化についての話しで〝何度も同じ問題を解くことによって処理容量の一部を使用するだけでよくなる〟ということがありました。これは、自分の経験から納得のいくものですね。ということは、いろんな体験、経験を繰り返していくことによって、次第に情報処理能力は効率的になり、容量の使い方が上手くなっていく、というようなことなのでしょうか。そして、さらにその体験や経験はさせられるよりも自らそこに関わっていくことで、自動化のスピードは上がるということなんだと思います。
    情報処理における記憶やスピードは年齢や個人差で違うということで、そのようなことも踏まえた上で子どもたちとの関わりを持っていかなければならないのだと感じます。

  4. 「年齢とともに情報処理の容量が増加していくとする研究者もいれば、処理容量自体は子どもでも大人でも大きな違いはなく、情報処理効率の変化を指摘する研究者もいる」とありました。このように1つの問題に別の角度からアプローチする試みによって新たな発見が生まれる印象が以前に紹介していただいた他の研究などからも感じるところがあります。また、自動化について「新しい問題を与えられたときに、当初は自分の処理容量のすべてを使って解決していたものが、何度も同じ問題を解くことによって処理容量の一部を使用するだけでよくなる様子」とあり、このことから習慣や馴化という言葉が思い浮かびました。そして、自分の経験からもこの自動化はとてもよくわかります。今お楽しみ会に向けて各クラスで使用するものをみんなで分担して作っていますが、同じ作業を繰り返すと効率がどんどん良くなることを身を持って体感しています。

  5. 年齢と共に情報量を受け入れる容量でなく、゛処理容量自体は子どもでも大人でも大きな違いはなく、情報処理効率の変化を指摘する研究者もいる゛というのは、考えてみるとそうなのかも知れないと思え、面白さを感じます。
    その情報をいかに必要なものだけをまとめ、整理するような感じなのでしょうか。その情報処理効率の変化というのがポイントとしてありそうです。また、そのあとの文章を読んでいると、情報を入れたときに、時間が少したってからの情報の形が変わってくるという捉え方では、短期記憶から長期記憶へと保存される際に、保存の形を今後の情報として、変化させることによって結びつきやすくなるのかなと思いました。

  6. 「ソウルでは、全世帯の80%が父親のいない家庭」という部分に驚きました。政策として、子育て支援が充実している理由がここにあったのですね。また「小学校300校に学校給食プログラムの助手を置く」であったり、「多文化家族のために“ハヌルタリ”計画」といったユニークな政策もありました。確かに、多文化結婚に対する知識というのは誰も教えてくれませんし、それを支援することが少子化の対策にもなるという考えもあるのですね。

  7. PCで子どもの精神的な面をどのように把握するのだろうという疑問がありましたが、情報処理理論において「子どもが情報処理能力を向上させ、新しい方略オア発展させるというのは、メモリを4GBから8GBに増設するように、また、ソフトウェアをバージョンアップするということ」という言葉によって、当然のように記憶できる容量を増やす試みが必要です。その容量を増やす観点から、「情報処理効率の変化」や「十分な情報能力を持つこと」を考えていく過程に、「与えられた問題に対してより複雑な形で表象することができる」ことがうまれるということが理解できました。

  8. 情報処理能力が年齢とともに容量が大きくなると唱える人、そうではなく効率性が良くなると唱える人と分かれているそうですね。素人の私にしたら、両方が有り得そうな事ですが、実際はどうなのかとても気になるところです。少しずれますが、記憶力という視点から考えると、私はかなり個人差があるように思います。やたら物覚えも良く、記憶力が抜群な人もいれば、そうでは無い人がいるように、情報処理能力も多少の個人差があるように思います。ただ訓練というか、色々な問題に直面し、その時に様々な解決方法を一人ではなく、友達や先生、親といった周囲の人の協力から学ぶことで、自分の情報処理能力は上達すると思います。単語を言う実験で年齢によって差があるのは分かりましたが、個人としての能力も大切ですが、集団の中での情報処理も重要な気がします。

  9. 「年齢とともに情報処理の容量が増加していくとする研究者もいれば、処理容量自体は子どもでも大人でも大きな違いはなく、情報処理効率の変化を指摘する研究者もいる」とあり、研究者によって考えは違うようですが、どちらもなるほどなと思うところが正直なところです。また子どもの自動化という処理の説明がありました。まさに日々の経験が自分の能力を上げて行くようなイメージを持ちます。経験を積めば積むほどそれを複雑に表象することができるというのは日々の子どもたちを見ていると納得がいくのかもしれませんね。

  10. 「年齢とともに情報処理の容量が増加していくとする研究者もいれば、処理容量自体は子どもでも大人でも大きな違いはなく、情報処理効率の変化を指摘する研究者もいるそうです」という言葉に、なるほど!と思いました。考え方の説明を聞くとどちらも正解のように感じます。ここで大切なことは、どちらにしろ子どもが様々な体験や経験をすることが前提にあるような気がします。他者との関わりや、環境によって記憶の分野でも成長があるように感じました。

  11. 情報能力が年齢とともに発達することは多くの研究者が一致するところですが、年齢とともに情報処理の容量が増加していくとする研究者もいれば、処理容量自体は子どもでも大人でも大きな違いはなく、情報処理効率の変化を指摘する研究者もいるとあり、面白いですね。年齢とともに処理能力が発達するという考えは同じでもその理論は異なるんですね。
    例えば「リンゴ」に反応する脳内の細胞が、何度も練習することでシナプス同士の結合が強くなったり、発火する閾値が低くなったりするのかなと考えました。最後に紹介されてある実験では記憶、処理速度ともに年齢が上がるにつれて向上していますね。こういうところでも発達によって個人にあった保育が必要だな感じます。

  12. 情報処理の効率が上がるか、そもそもの記憶媒体の容量が増えるのかという二つの考えに分かれるのですね。パソコンで言うとHDDの容量アップかCPUの向上にあるのかということになるのでしょうか。そして、情報処理能力を、処理効率と記憶空間に分け、それぞれを独立に測定するというのはパソコンでいうとメモリとHDDのそれぞれを計測したことと同じかなと考えてしまいます。人によって成育歴や環境、教育によることでどこを増設していくのかというのが個人差として表れてくるのかもしれませんね。そう考えると人が成長する中で、どれほど環境の影響が大きいのかということを感じます。保育をする上で子どもたちがより多くのことを発達や成長するためにこういったことを意識しつつ考えることはとても重要ですね。

  13. 情報処理能力に注意を向けて子どもの認知発達を把握しようという試み。「子どもの認知発達の機序を論理的思考ではなく、情報処理能力から考える」ということで子どもの認知発達を別の側面から捉えなおしたらどうなるか?この情報処理理論によって「ピアジェ理論では説明できないことを説明できるようになった」ということです。ピアジェ理論の補完的役割を果たしたのがこの情報処理理論ということになるのでしょう。コンピュータの開発と共に情報処理ということがクローズアップされてきた経緯があり、そうした手法を子どもの認知発達に応用する。子ども観の確立に関しては新技術の開発や他分野の研究成果が大いに影響を及ぼしてくることがわかります。これからはやはりAI技術を駆使することによる新たな子ども観解明が期待されるところでしょうか。今この時もさまざまな試みが実施されている。未来は楽しそう。

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