子どもの脳研究

ヒトの認知機能についての最近の研究を紹介していますが、この認知機能と脳には対応関係があります。おおまかに言うと、後頭葉は視覚に関する情報処理を、側頭葉は聴覚情報や社会的情報の処理を、頭頂葉は体性感覚に関する情報処理を、前頭葉は実行機能などの情報処理を行なっていることが知られているようです。このように、それぞれの機能が、それぞれの脳領域に分散していることを脳の機能局在と言うそうです。そのため、例えば、視覚野を損傷すると、、視覚情報の処理に問題を抱えることになるのです。

ただし、脳のひとつの領域だけがある認知機能を担っているわけではなく、様々な脳領期が関連することで、ある機能が実現されていると言います。またある領域が、複数の機能と関連していることも少なくなく、機能局在の考え方はわかりやすいのですが、あまり単純に考えてしまうと心と脳の関係を誤って捉えてしまうことになると森口は危惧しています。

脳の研究では、色々な問題があるようです。まず、基本的に人間を対象とした研究では、医療上の理由がないと実施できません。伝統的に人間を対象にした研究で用いられるのは、神経心理学的手法だそうです。これは、脳腫瘍や事故などで脳の一部を損傷した患者さんを対象にした方法です。この研究事例は、よく耳にします。たとえば、ある患者さんの脳領域が一部損傷して、その患者さんの認知機能の一部が失われた場合、その脳領域と認知機能とが関連すると推測します。この手法は、人間の脳と心の機能を探る上で、最も直接的で因果的な関連を調べられるのです。

子どもを対象にした研究は、その中でも最も困難であると言われています。その中で、脳波を計測する手法が一般的だそうです。ただし、ニューロン一つ一つの活動は計測できないそうです。現在、人間を対象にした脳研究を引っ張っているのは、fMRIという機能的磁気共鳴画像法を使用して行なわれることが多いのですが、この検査は、MRIが密閉された空間なので乳幼児への適応が難しいという問題点もあるそうです。しかし、近年は、様々な工夫をして乳幼児の脳活動を計測した研究も報告されているそうですが、私も以前のブログでも紹介したように、6歳以下の子どもにfMRIは推奨できないという主張もあり、まだまだ容易ではないというのが現状です。

そこで、森口をはじめとして、多くの研究者が使っている手法は、安静時と課題時の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの変化量を用いる方法だそうです。ある脳領域を使っているとその領域における酸化ヘモグロビンおよび還元ヘモグロビンの量は変化しているため、課題時の方が、ヘモグロビンの変化が顕著になるというわけだと言うのです。

脳の発生は、受精後3週間程度で神経管という管状の構造が形成されるところから始まります。この神経管に3つの脳胞と呼ばれる隆起部分ができ、これらの脳胞が、前脳、中脳、菱脳に分化していきます。前脳は大脳と間脳へさらに分化し、菱脳は橋や小脳などへと分化していきます。

ニューロンは、脳室帯にある神経前駆細胞が分裂することによって生み出されます。誕生したニューロンは、それぞれの最終目的地まで移動します。多くの場合、ニューロンは、そのニューロンよりも後に誕生したニューロンによって押し出されるようにして目的地までたどり着きますが、大脳皮質のニューロンは、新しいニューロンが自ら能動的に目的地まで移動するのだそうです。

子どもの脳研究” への12件のコメント

  1.  「子どもを対象にした研究は、その中でも最も困難であると言われています。」読むとなるほどとても大変なことがわかります。脳の可塑性を思った時、その多様な力をもつ脳に対しての研究方法の幅というのは、それこそ物凄いものになりそうな想像が湧きます。しかしながら実際は脳波の計測や機能的磁気共鳴画像法、ヘモグロビンの変化ということで脳の神秘に踏み込もうとしています。その事実だけで、どれだけで研究が困難なのか、なんとなくわかるような気がしました。
     現場からの研究は、どうしても情緒的になってしまう、数量と客観性という視点が足りない、と言われます。しかし、その情緒というものが心に当たる部分なのだとしたら、と思った時、あながちその情緒的な内容も、情緒的だからと切り捨てられないのではないかと思いました。研究され、証明されていなくても、この世には存在しているものがたくさんあるのではないか、と言えるように感じたからです。

  2. 〝脳のひとつの領域だけがある認知機能を担っているわけではなく、様々な脳領期が関連することで、ある機能が実現されている〟とあり、機能局在といった視点だけで脳を捉えてしまうと、誤った見方になってしまうということが書かれてありました。
    単純にみえて、実際は複雑にいろんなところと絡み合っているという印象です。その解明に向けて、いろんな方法を用いて研究がされているのですが、子どもの脳研究はことさら難しいということなんですね。
    人間の脳というのは今どのくらい解明できているんでしょう。数字は忘れましたが「それだけ」と思うほど少ない数字であったのは覚えていて、脳研究がどれほどに難しいものなのかというのを感じました。ですが、困難なものを対象にした研究は実は楽しいものであるのかもしれませんね。

  3. 脳の研究は「基本的に人間を対象とした研究では、医療上の理由がないと実施できません」とあったこともあり、「子どもを対象にした研究は、その中でも最も困難であると言われている」とあることはより頷けるなと感じました。また「脳のひとつの領域だけがある認知機能を担っているわけではなく、様々な脳領期が関連することで、ある機能が実現されている」とあり、1つの機能の実現には多くの脳領域が関連しないとできないことがわかりました。このことからも、様々に関連し合っている脳に関する研究の難しさを感じます。その中で様々な試行錯誤があって、「安静時と課題時の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの変化量を用いる方法」なども生まれたなどと考えると、研究方法を見つけるまでの過程が面白そうだなと感じ、その過程を知りたいなと思いました。

  4. 確かに脳を研究させてくださいとなっても、わかりましたと訳もなく、医療上の理由がないとなかなか難しいことだと思います。゛その患者さんの認知機能の一部が失われた場合、その脳領域と認知機能とが関連すると推測します。この手法は、人間の脳と心の機能を探る上で、最も直接的で因果的な関連が調べられる゛とありました。脳と心の関係を考えたときに、もし、脳に何らかの損傷があった場合、心の表れかたにも何らかの関連した反応が見られると思います。しかし、実際には、子どもの脳を直接的に調べることは難しく、現在は、゛安静時と課題時の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの変化量を用いる方法゛を使った研究が多いのですね。ヘモグロビンを使ったといった所もより、難しいことを感じさせられますが、こういった子どもの状況によって変化される体内の動きから見えてくるものは、心の変化によっても左右されることもあるように感じさせるものです。

  5. 「脳のひとつの領域だけがある認知機能を担っているわけではなく、様々な脳領期が関連することで、ある機能が実現されていると言います」ということ、ある領域が複数の機能と関連している可能性があるとありました。何だか、子どもも同じようなことがいえるのかもしれませんね。そして、保育指針における5領域や10の姿もそうですが、それぞれの領域、姿が関連しているということと、何だか似ているように感じました。「子どもを対象にした研究は、その中でも最も困難であると言われています」とありました。fMRIを用いた実験方法もそうですが、まだまだ子どもの研究には最適なものとはいかないのかもしれませんね。そう思うと、いろいろと分かってきているとはいえ、まだまだ分からないことばかりだと思うと、何だかその可能性にワクワクしてしまいます。そして、藤森先生がいつも言われているように、分かっていることをどのように実践に結びつけていくのかということを考えなければいけませんね。

  6. 先日入院する際に、初めてMRIを経験しましたが、密閉空間で発せられる不気味な音の連続…。好んで味わいたくない経験でした。また、自分が感じている頭痛をどう表現していいのか、この痛みを理解して欲しいと思うのですがなかなか伝わらずにいましたが、採血をしてその結果から「炎症反応」が数値化され、痛みが視覚化できるということも知りました。これは、研究における脳波を把握する上での「多くの研究者が使っている手法は、安静時と課題時の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの変化量を用いる方法」というような方法のようであるなぁとも感じました。直接的な面ではなく、一つの身体の中にある様々な組織が連動しているということだけでなく、機能や性質などを把握する上でも役に立つということを理解しました。

  7. 子どもの脳波を調べる研究は難しいと書いてあります。確かにMRIは怖がってやらなそうですね。そうなると研究者は面白いですね。違う手法を思いついて実験をやってしまうのですね。私たち現場はそんあ研究器具はもちろん無いですし、脳に関する基本的な知識も乏しいですが、常に子ども達と見ているというのは、研究者よりも子どもの事を理解しているはずです。藤森先生が保育者も研究者と言われたように、私たち現場から子どもの理論を打ち出す事も可能のような気がします。研究者が出した理論、そして現場でそれをすりあわせたり、少し付け加えたり、チーム保育の良さは子どもを多角的に見ることです、それを同様に研究者と現場が一緒になって子どもの研究をする事が大切のような気がします。

  8. 脳というのは複雑とざっくりとした印象です。少し中へ踏み入ってみると様々な部分の役割が理解できます。その中で「脳のひとつの領域だけがある認知機能を担っているわけではなく、様々な脳領期が関連することで、ある機能が実現されていると言います。またある領域が、複数の機能と関連していることも少なくなく、機能局在の考え方はわかりやすいのですが、あまり単純に考えてしまうと心と脳の関係を誤って捉えてしまうことになる」という森口氏の考えが基盤になくてはならないのかなと感じます。この時点でも難しい印象を持ちますが、さらに子どもの脳というのがまた難しいのですね。脳が急速に発達しているところを調べるのですからより高度な技術が必要になることがわかります。子どもの脳研究の難しさからなにか発見があったときのひかりというのがより大きなものになるのでしょうね。

  9. 脳について、知らないことが多いので脳の中でも部分的に役割を持っていることさえ今初めて知りました。ある領域が、複数の機能と関連しているとあり、脳研究の難しさを感じます。さらに、子どもの脳となるとなおさらですね。脳に限らず、子どものことを知ろうとするだけでも、思った通りにならないですし、保育でいうと子どもたちがどんな反応を示すのか、予測した通りに行かないことの方が多いので、何となく難しさが分かる気がします。今回の内容は難しかったですが、「ある領域が複数の機能と関連している」という言葉から、もし、視覚を失ったとしても、その他の機能と関連させることで視覚を取り戻せる可能性があるのではないかと感じました。できるかどうかわかりませんが、研究によって新しい希望がうまれることがあるのかもしれません。様々な分野で研究者として活躍される方々が、新しい希望を生み出してくれていることに感謝しなくてはいけないなと感じました。

  10. 脳腫瘍や事故などで脳の一部を損傷した患者さんを対象にした方法やfMRIを利用した方法、ヘモグロビンの変化量を利用した方法など、様々な方法を駆使して、脳の機能を解明しようとされているのですね。しかし、「こどもを対象にした研究は、その中でも最も困難である」というように、その難しさはあるでしょうね。MRIにしても、乳幼児の子どもたちがジッとしていること自体難しいでしょうし、脳腫瘍や事故といってもなかなかうまく検体が出てくるのかと思うところもあります。ヘモグロビンの変化量を用いるのが多くの研究者がつかっているとあります。安静時と課題児の変化を見るとあります。確かにその変化がでることでどこを使っているのかということを測定することは分かり易いかもしれませんね。どんな活動が脳によく、どんな活動は乳幼児にとって刺激が起きないのか、こういった脳の活動から子どもを科学するという視点もまた違った発見をもたらしてくれますね。

  11. f MRIを用いた実験は子どもには適さないという話がありました。自分のいた大学にもf MRIがあり、何度も被験者を頼まれ、やったことがあります。脳構造をとるのに5分ほど、課題をやるのに1から3時間程度、そして、再び5分ほどかけて脳構造をとります。実験の際、頭を固定しますが、僅かな動きで、脳構造が取れなくなります。3センチだったと思いますが、子どもにはたしかに適さないなぁと感じます。脳情報が発展している背景にf MRIがあるなら、子どものことは調べるのに時間がかかりそうですね。
    子どもには、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビンの値を調べ、脳活動を調べる方法でおこなっているんですね。脳の研究はとても難しいですね。しかし、その分、知る楽しみは大きいように思います。今後の研究も楽しみです!

  12. 人間の脳機能について解明されてきている部分も多いと思いますが、様々な制約により簡単にはいかないことも良く分かりました。容易ではないが「様々な工夫をして乳幼児の脳活動を計測した研究も報告されている」ことは乳幼児の認知構造を知る上で欠かせない報告になっており、その報告については臥竜塾ブログから知ることができます。森口氏らの「安静時と課題時の酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの変化量を用いる方法」による研究もあります。ただ専門過ぎて「知ったか」も容易にできないところもあります。今回感心したのは脳の誕生に関するお話です。「受精後3週間程度で神経管という管状の構造が形成されるところから始まります。この神経管に3つの脳胞と呼ばれる隆起部分ができ、・・・」のところは感動ものです。受精後ひと月もしないうちにこうした発生が行われている。いや~すごいことです。この前自分の心臓が動いている様をエコーの映像で観ました。自分の考えや意思に関係なく動いている。発生もそうですね。まさに神秘としか言えませんね。

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