講演のあと

講演のあと、ハンソル財団の役員の方々と昼食を頂きました。このハンソル財団ビルの中には、レストラン街もあるらしく、その中の食堂で、「韓定食」を頂きました。韓国料理と言えば、辛いというイメージがあります。私は辛いものが苦手で、今回の韓国でもできるだけ辛くないものを食べていたのですが、接待の料理となると食べないわけはいかないだろうと覚悟していたところ、韓料理は、辛くない韓国料理だそうです。それは、この料理は、朝鮮半島に唐辛子が伝わる前とされる朝鮮王朝時代に王が食べていた宮廷料理のことで、医食同源や五味五色の思想から、体によく彩り豊かな料理です。海外ドラマ「宮廷女官 チャングムの誓い」にも登場していたそうです。

五味五色の思想とは、陰陽五行説に基き、五味五色(塩味、甘味、酸味、苦味と赤、黄、白、黒、緑)の料理のことだそうです。しかし、食べるときには、先方から、今日の料理は「“かんていしょく”です。」と言われ、「官邸の料理で、高級かな?高級なのであまり辛くないのかな?」と思っただけでしたが、後で調べたら五味五色と書かれてあり、料理を写真に撮って色を吟味したり、よく味わったりすれば良かったと後悔しました。

五味というと、日本人特有の五つの味覚と言われています。甘味・酸味・塩味・苦味・旨味です。特に、旨みは日本独特です。しかし、実は日本独特というわけではなく、中国では、五味を五行に対応させる陰陽五行説があります。そこでは、甘味が木、辛味が火 苦味が土 塩味(鹹)が金 酸味が水に対応します。

また、五色というのも、日本料理の盛りつけの基本とされている赤・黄・藍・白・黒があります。しかし、中国でも色について、五色がありますし、季節や人生を色に名付けています。2011年1月23日のブログに「人生色」ということで、そのことが書かれてあります。「中国古来の思想では、季節に色を与えてきました。春は青、夏は朱、秋は白、冬は玄です。したがって人生を春夏秋冬の四季になぞらえ、青春、朱夏、白秋、玄冬と呼ぶそうです。」この人生を色で表す言い方は、味だけでなく、中国の陰陽五行説に由来しています。

その日の夕方、ドイツでおなじみのホテルでの振り返り研修をやりました。16時から18時まで、ホテルの会議室を借りて、これまでの見学の振り返りをします。今回、韓国ではこの研修が二晩予定されています。

人は、同じものを見ても、同じところを見ていないことが多くあります。また、気がつくところ、気になるところもずいぶんと人によって違います。そんなことをこの夜の研修では気がつきます。見学先には、それぞれ分担してお土産を持っていきます。そのお土産を渡した人が、その園の環境を撮った写真を、どんな観点からその写真を撮ったかを説明しながら皆に夜の研修会で、プロジェクターで見せます。また、それが何かわからない写真については、他の人が聞いた話をします。そうやって、見学先の環境を共有していくのです。それを見るたびに、私は「えっ?こんなところあったっけ?」と思うことがしばしばです。また、同じところを見ても、「えっ?そんなことに使うんだ!」と思っていたのと違うこともしばしば。よくドイツでは、「子どもに関する記録は、人の見方は偏ってしまう可能性があり、それを子どもが知ったら、大人になってもトラウマになってしまうことがあるので、一切しません。」というのを聞いたことがあります。

2017韓国での講演

世界銀行が提案しているように、社会的流動性を高めるためには、教育への投資が、効果ありそうです。南アフリカのように、一層貧困状況の悪い(教育への投資もはるかに少ない)国々よりも悪い成績を収めている学校がほとんどである国の脆弱な学校制度では、賃金上の特権階級をなくすほど急速に能力が成長することは見込めません。そうなると、政策上の焦点は教育の質を向上することに置かれるべきであるということになるのです。

このような観点から、『OECD保育白書2017年版(Starting Strong 2017)』でも、安価で質の高い早期幼児教育・保育(early education and care, ECEC)を提供する取り組みを強化するべきだと提案しているのです。ここで、「安価」という意味がこの文からだけですとよくわかりませんが、社会的流動性のためにも、質の高い幼児教育を提供することが必要であるとしているのです。この報告書によると、「ほとんどの政府が近年、入園、入学者を拡大するためにより多くの託児所と学校を開設するための投資を増やしていることを明らかにしています。今後各国は、教諭の労働条件の改善、あらゆる子供に公平な利用の機会を確保すること、新たな指導方法の導入などに焦点を当てる必要があります。」とあります。そこでは、世界銀行が思い切った教育改革が必要とあるように、あらたな指導方法の導入を勧めています。

「あらたな指導方法」とはどういうことでしょうか?それは、時代的に、少子高齢化社会を迎え、AI社会の到来に向けて、本来の人類の進化から伝統的育児を見つめ直し、そして格差社会において、インクル-ジョンの考え方からの保育に取り組まなければならないこと、そして、乳児からの教育の必要性など、今回、私が韓国での講演に際し、最初にこのような提案をしたのです。なぜ私が乳幼児教育において「見守る保育」を提案しているのか?それに対して、子どもの主体性と自発性の保障、自ら取り組める環境、それらは、常に不易であり、大切なことです。しかし、それらはすでに韓国ではヌリ課程により規定され、すべての園で取り組んでいます。しかし、少子化以降、子どもたちの育ちに変化があり、新しい保育が必要であること、それは、乳児からの子ども同士の活動、また、大人からの指示で動くのではなく、子どもへの言葉がけは、子ども自身が考えるような質問形式で行なうこと、自分の考えを言う機会を増やすことなどの提案をしたのです。

私の園での1歳児の朝のお集まりから、午前のおやつに至る動画を見ながら、解説をしていきました。まず、お集まりには、先生はせかすことなく、子ども自身が判断して、集まり、自分の座る席を探し、そしてみなが揃うのを待っている様子。その後の午前のおやつのパンは、子どもにただ配って歩くのではなく、一人一人にジャムが付いたパンか、何も塗っていないパンかを子どもに見せて、「ジャムが塗ってあるパンと、何も塗っていないパンのどちらがいい?」と聞きながら配っていきます。食べ終わりも、自分の判断でやめ、自分で食べきれないパンや飲みきれない飲み物を残菜カゴに入れ、食器を片付けていきます。その後のお手ふき、エプロンの片付け、1歳児は自ら試行錯誤しながら、また、友だちや先生の手を借りながら行なっていきます。この動画は、韓国の園長先生たちには、大いに感心されました。

このように、かなり反応があった講演会は終わりました。

格差

『OECD保育白書2017年版(Starting Strong 2017)』で、「各国は、社会的流動性を高め、あらゆる子供が自分の能力を最大限活かす機会を得られるように、安価で質の高い早期幼児教育・保育(early education and care, ECEC)を提供する取り組みを強化するべきだ」としています。これをどう解釈したらいいのかは、本文を読んで、その前後関係を読まないとわかりません。ですから、OECDが提案することとは別に、この文章から私が日頃考えていることを書いてみます。

まず、「社会的流動性」とはどういうことなのでしょうか?世界銀行のブログページに、“所得格差と政策の選択 [via: The World Bank]”という記事が書かれていたことを、編集者である松本優真さんが紹介しています。そこでは、「政府による教育への投資が、所得格差を埋める重要なカギになる、というのが前者での主張でしたが、この論考では南アフリカの教育の現状が紹介され、単に政策的な投資がなされているというだけでは問題はほとんど解決せず、長期的な視野でもっていかなる形で投資するのかが肝要だ」ということが示唆されているそうです。それは、例えば、アメリカで1960年代に行われた「ペリー幼稚園プログラム」が有名です。このプログラムでは、貧しい地区に生まれたアフリカ系住民の3歳から4歳の子どもたちに、質の高い就学前教育を提供したペリー幼稚園に通った子どもは、通わなかった子どもに比べて、「人生の成功者」になる確率が高いことがわかったというものです。それは、どういうことかというと、たとえ貧しい家に生まれても、質の高い就学前教育を受けることができれば、高い学歴を手にし、安定的な雇用を確保し、犯罪などに走ることが少ないということを示しているのです。その結果を受けてアメリカ政府では、教育に投資して、所得格差を埋めようとしています。

しかし、この世界銀行のブログでは、南アフリカの教育の現状を見ると、単に政府からの投資だけでは、問題はほとんど解決されていないと分析しています。どのようなところに、どのように投資するかを長期的な視点で考えないと効果がないという主張なのです。効果がないということは、貧困層と富裕層の格差は、埋めることができないということになります。これが、「社会的流動性」が低いということになります。

さらに世界銀行のブログでは、「所得の分配は、政府の政策決定の文脈であれ、国家開発計画の策定の場であれ、あらゆる政治的な議論で特に取りざたされる論題です。しかしながら、こうした不平等の根本が、労働市場の、とりわけ賃金の分配に横たわっていることや、賃金の分配状況を変えるためには南アフリカ国内の学校のほとんどの低い教育水準を劇的に改善しなければならないということが十分に理解されているとは言えません。」とあります。今回、日本では選挙が行なわれましたが、その際の政策公約に、消費税の分配がありました。政府としての所得の分配です。今回、幼児教育の無償化と防衛費の増額に使われるとの公約が掲げられました。それらは、社会的流動性を高めることになるのでしょうか?南アフリカでの格差を埋めるためには、その根本が賃金格差にあるということ、その格差を埋めるためには教育水準の劇的な改善が必要であることを指摘しているのです。

それは、労働市場の不平等の根本原因、つまり教育の質にこそ取り組まなければならないことを提案しているのです。

2017韓国三日目午前

今回の韓国訪問には、韓国の保育園であるオリニジップの見学と、もう一つ目的があります。それは、韓国内多くの企業所内オリジニップの運営委託されているハンソル希望教育財団において、その財団が運営しているオリニジップの園長向けの講演を頼まれているのです。今回のツアーの参加者は、23名でしたが、私が講演している間、せっかくなので韓国観光で、世界遺産や博物館の見学を計画していました。講演には、私と助手を務める西村君他1~2名の参加予定で、ツアー参加者に、講演への参加希望を聞いてみました。なんと、全員が参加したいとの意向でした。韓国での講演といっても、いつも日本で話していることですし、それほど特別なこともないので、是非観光の方に行ってくださいとお願いしたのですが、皆さん、まじめなのか、私に気を使ってなのか、参加を希望してくれたのです。私としては、もちろん嬉しいことなのですが、観光を計画してくれた金さんにも悪いし、財団でもそんなに無理だということで、交渉した結果、半分の十人くらいならということになりました。そこで、朝、くじ引きで参加者を決めることにしました。

しかし、朝になって、私は一緒に勉強する人をくじ引きで、「当たった!外れた!」などで決めるのはおかしいと思い、今回は、若い保育士さんは、これからも機会があるだろうということで、園長先生たちに決めさせてもらいました。それは、ちょうど10名くらいだったからです。皆さんが参加してくれることは心強く、もし導入に関して質問が出たら少し話してもらえると思っていました。

私はお迎えの車に乗り、残りの人はタクシー2台に分乗し、財団に向かいました。着いてみてびっくり。そのビルは37階建てで、すべてが自社ビルで、色々な事業を展開している財団のようです。会場は、17階でした。会場には、私たちのメンバーが10名ほど前の方を占めてしまったので、後ろのほうは立ち見で、100ほどの参加者で会場がいっぱいでした。通訳は、「見守る保育」の韓国語版の時に翻訳してくださった韓国の保育者養成校の烏山大学大学院教授の孔先生が務めてくれました。

現在、幼児教育に各国力を入れるべきだと主張し、現在の保育に警告を出し、教育の見直しを進めているのが、教育学者でもなく、保育学者でもなく、経済学者であること、そしてそれを先導しているのがOECDです。2017年8月22日の日本経済新聞朝刊にOECDに関して少し書かれてありました。「経済協力開発機構(OECD)を中心に子育て施設での教育の研究が進められている。子どもは生まれて3年間で言葉や数の概念などを学ぶ。保育所や幼稚園などは子どもの発達に影響を与えることから、子育て施設には教育の質を求める。」私の講演は、その研究の紹介から始めました。そこでは、乳児保育、3歳未満児保育における高い質の重要性が謳われています。

では、具体的に高い質と言われる保育とはどのようなものかという話になります。その保育の内容を検討する前に、OECDが、こんな提案を、「早期幼児教育・保育の改善で、より多くの子供を成功させ社会的流動性を高めることができる」というテーマで『OECD保育白書2017年版(Starting Strong 2017)』の中で主張しています。そこでは、各国は、社会的流動性を高め、あらゆる子供が自分の能力を最大限活かす機会を得られるように、安価で質の高い早期幼児教育・保育(early education and care, ECEC)を提供する取り組みを強化するべきだ」と提案していることを紹介しました。

2017韓国二日目午後2

韓国では、日本における東京23区と同様、ソウル特別市25区に分かれています。ソウルは、大韓民国の首都で、かつて朝鮮王朝の首都「漢城府」と呼ばれていました。「ソウル」とは朝鮮語の固有語で「都、首都」の意味だそうです。日本統治時代の朝鮮では漢ではなく京を使い「京城府」と呼ばれた時代もありましたが、もとは京畿道に属していましたが、1946年に分離し「特別市」となっています。その25区の中でも中心地が中区です。私たちが宿泊したホテルは中区にあり、官庁や大企業本社、金融機関、明洞や、南大門市場、東大門ファッションタウンなどの繁華街もあり、韓国の経済、商業、文化の中心となっています。

また、ソウル特別市西部、漢江北岸にあるのが麻浦区です。ここは、ソウルワールドカップ競技場があり、2002 FIFAワールドカップの開会式が開かれた競技場として有名です。ほかにも、弘益大学校のある弘大地区は美術・デザイン系学生が集まる学生街・繁華街であり、バーやクラブ、ライブハウス、ギャラリーなどが多く集まっています。また、ソウルで住みたい場所No.1に度々選ばれマスメディアでもよく取り上げられているそうです。二日目の午後2園目の見学は、この麻浦区役所内にあるオリニジップです。区庁舎を入って、ロビー左手にオリニジップの入口が見えてきます。そんな入口ですから、日本にもよくあるような企業所内保育所のような、一部屋に様々な年齢がいるようなイメージで中に入って、びっくりしました。絵本が棚にびっしりと並び、木陰でお迎えの時に親子でくつろいで本を読むための空間が広がっています。そして、その後、説明のために通されたホールは、まわりには乗りものの遊具が並び、ボール遊びもできるような空間が用意されています。

日本では大阪市内には市庁舎や区役所に設置されるようですが、いずれも定員は10~20名ほどですし、東京都庁内の保育所は48名だそうです。しかも、そこに働く子弟だけでなく、地域枠もあるそうで、どのくらいの費用を掛けるかわかりませんが、費用対効果としてはずいぶんと少ない定員の気がします。また、園庭はあるのでしょうか?プールや砂場はあるのでしょうか?運動会やおたのしみ会などの行事はあるのでしょうか?韓国の麻浦区役所内保育所は、定員は108名で、ちゃんと園庭や砂場はあります。しかし、やはりビルの一角ということもあるのでしょうが、地面はすべて人工加工物であるクッション系のもので敷き詰められていました。ケガをしないで安心かも知れませんし、砂埃がたたずに安心でしょうが、やはり土の部分がほしい気がします。この園庭の境のフェンスの向こうには、区役所の林が広がっていたので、私は、区と交渉してもう少し向こうにフェンスを移動させてもらったらどうかという提案をしました。すると、園庭の隅が林になると、もっと子どもの遊び体験は豊かになると思うのですが。

保育室内も、かなり充実しており、子どもたちは様々な体験が出来るようになっています。特に、自然物を使った装飾を始め、観察領域としての自然物、制作領域に使う自然物と子どもたちが様々なところから季節を感じるようにしてあるのは学ぶところが多いです。しかし、その意味では秋はとても感じることができる素材は多いのですが、他の季節には、どのような物を置いてあるのか興味あるところです。   

2017韓国二日目午後

二日目の午後の施設見学は、昨年お世話になったハンソル未来教育財団の運営している施設2箇所でした。昨年紹介したように、この財団では、国内140カ所くらいのオリジニップの運営を委託されています。この財団は、ほかにも様々な施設、事業を展開しているそうです。特にオリジニップの運営を委託されている企業は、大きな有名なところが多いので、その子弟を預かるということで、保護者にインテリが多くいます。また、資金も国からの補助の他に、企業からもかなりあるそうで、遊具が豊富で、贅沢な空間作りになっています。

この背景を見ると、全体の質の底上げとして有効なヌリ課程が、それ以上の保育を目指すときの妨げになっている部分を感じることができます。様々なルールや規則、役所からの指導は、基本的には性悪説からきているのではないかと思うことがあります。もっと、園を信頼してくれてもいいのですが、どこか悪いところがないかを探し、ちょっとしたミスでも、さも悪意を持ってそれをしているかのような指摘をします。日本での監査では、書類を細かくみて、その作成に子どもを見る時間が減るのではないかと思われるものや、そうでなければ、時間外で作成しなければいけないようなものを要求してきます。本当にこれで質が向上するのかと思ってしまうのですが、それを監査官に言うと、「あなたの園は、見ればわかりますが、他の園では基本的なところができていないところが多いのですよ。せめて書類を整えさせることが、ある質を保証しているのです。」と答えます。たぶん、これに似たようなところがヌリ課程にあるのではないかと思います。ですから、私たちの見学先では、かなりヌリ課程に否定的な園が多いのもそのような事情からなのでしょう。

午後の1カ所目は、青瓦台に勤務している職員の子弟が通う施設です。青瓦台とは、日本で言えば、首相官邸、アメリカではホワイトハウスと同じで、韓国のソウル特別市鍾路区の北岳山の麓に所在する大統領官邸です。その建物の瓦が青いのでその名が付いています。そこに勤める保護者ですから、要求も多いのでしょうか?また、そのような裕福な保護者が多いので逆に少ないのでしょうか?私の経験からすると、少ない気がします。もちろん、高い質であることは当然ですが。

まず、この園は隣接して2園造られています。どのように分けているのかわかりませんが、もう一棟は最近できているので、増築したのでしょう。希望者が多くなったので、部屋に多く詰め込むとか、その建物を増築するのではなく、別棟にきちんとした様々な機能を備えた別の園をつくるとはさすが贅沢です。それは、建物がそこに入所する子どもの定員で完結するような造りになっているからです。それは、外観も園庭からも感じます。私の園では、園庭や保育室以外の各室はそのままで、定員を1.5倍にするように区役所から要求されました。様々な事情からしかたないと判断し、受け入れたのですが、当初の感謝はどこへやら、いろいろなことを次々に要求してきます。

昨年、ヌリ課程でどこまで規定されているのかということを思ったのですが、今回、ランチルームが用意されているのは、独自の取組みのようです。ここには立派なランチルームがあるのですが、その後見学した、この財団が委託されていない園には用意されていませんでした。しかし、園庭に菜園を用意することは規定されているようです。近くの公園を園庭がわりにすることは認められているのですが、きちんと園と契約をして、そこに園児による菜園を用意することが決められているようです。ですから、いくら企業所内の園でも菜園を持っていました。     

韓国二日目

韓国の明洞は不思議な街です。その地域は、南大門市場の通りを挟んで反対側にあります。主婦層の多い南大門市場に比べ、ここでは若者の姿が多く見られます。その街の雰囲気は、日本の様々な街と比較されますが、私の印象は、原宿の竹下通りのようです。違うのは、通りの両脇にはびっしりと屋台が並び、様々な食べ物が並び、その食べ物を食べながら歩き回る若者が多いという点でしょうか。もう一つ、店の種類として、ここで非常に多いのが、韓国コスメの店です。衣料品の店が多い原宿と違って、化粧品、顔パック、クリームなどのコスメが多いのです。カタツムリパックとかカタツムリクリームは有名です。また、高級ブティックやカラオケボックスやメガネ店やファストフード店と並んで、公然と偽ブランド品を売っている露店もあります。また、ここでは多くの客は中国からだったそうですが、最近は中国で海外での買い物を禁止したためにめっきり少なくなったそうです。

夕食の帰り道、そんな明洞を通ってホテルに戻りました。

次の日は施設見学です。午前中は公立のオリニジップです。オリニジップとは0歳から6歳までの園です。昨年、韓国報告をしましたが、日本では、選挙公約で5歳児保育料無料化が叫ばれていましたが、韓国では、現在0歳からすべての年齢において無料化されています。そのために、政府では質を担保するために、3歳以上児に対してヌリ課程、未満児に対して教育標準過程というものを定め、3年に一回、その通りに保育されているのかを評価指導に来るそうです。この時に、韓国ではオリニジップとキンダーガーデンとの間で3歳以上児に対する過程の一体化が行なわれたのです。このヌリ課程は、今回訪れた各園では、かなり否定的でした。それは、すべての園の底上げに有効ですが、今回訪れたような良いと言われている園からすると、園による創意工夫がそがれてしまっていると言います。例えば、異年齢保育を行なおうとしても、ヌリ課程では年齢別で保育をすることと書かれてあるそうです。特に、4,5歳の異年齢、3,4歳の異年齢はいいのですが、3歳から5歳児までの異年齢保育は行なってはいけないことになっているそうです。しかし、政府では、「教育課程を実行する側の教師の専門性と力量によって効果的に応用することができる」と言っています。

それでも、このヌリ過程は、大学の教育関係者によって作られているものですから、その内容からはどのような保育が質に必要であるかを見ることができます。昨年に引き続いて、私が韓国ツアーを企画したのは、世界標準の保育を見るためです。それは、1園だけを見ても、それがヌリ課程で定められている部分であるかがわかりませんが、今回5園を見ることで、どの園でも行なっている保育、環境が定められていることかがわかってきます。その上で、難しいながらも、各園が創意工夫をして、質を独自で高めているかを知ることができると考えたからです。

例えば、各保育室には7カ所の領域が用意され、子どもたちはそれを自ら選択して遊びます。そして、それぞれの領域には、どんなものが最低限必要であるのか、どのような環境構成が必要であるかがわかります。また、保育室は子どもの数に比べて狭い気がしたのですが、全体はゆったりしています。それは、子ども一人当たり2.6㎡で、日本の2.98㎡に比べてかなり狭いのですが、園全体の面積も子ども一人当たり6㎡と決めれているそうです。職員室もない、玄関ホールもない、収納室もないなどの園はいくら企業所内保育所と言ってもありませんでした。

韓国一日目夕方

夕食まで少し時間があったので、ホテルの近くの南大門市場に行ってみました。ここは東大門市場と並ぶソウル二大市場の一つです。通訳の方に、二つの市場の韓国語の覚え方を教わりました。だじゃれですが。南大門はナムデムンといい、東大門はトンデムンと言うそうです。覚え方は、「なんでもない」と「とんでもない」だそうです。南大門市場にいたのですが、まあ、すごい熱気というか、庶民が買い物、観光客が買い物でごった返しています。かなり安いものもあるのですが、どれがコピーかわかりませんので、買うのをためらいます。しかし、ここはかなり歴史が古く、市場にある新世界百貨店本店は、韓国が日本の統治下に合ったときには、三越百貨店(京城三越)だったそうです。

そこを通り抜けて、3人になってどこか近くに行くところがないかと地図を見たら、ソウル駅があることに気づきました。毎年ミュンヘンに行くと、ミュンヘン駅に行きます。韓国の駅はどのようだろうかと興味が湧きました。道に迷い、遠回りをしていると、向こうに歴史のある建物が見えてきました。きっとそこだろうと向かったのです。そこは、ソウル駅ではなく、博物館でした。しかし、案内板を読んでみると、旧ソウル駅だということがわかりました。もともとは、1900年7月8日に京仁鉄道合資会社の「南大門駅」として開業した駅でした。その外観は、何となく東京駅に似ていますが、その設計士については、色々な説があり、はっきりしていないそうです。しかし、このレン場造りの建物は、1923年1月1日に「京城駅」と改称され、1925年、赤レンガの駅舎が竣工したそうです。

現在のソウル駅は、この旧駅舎の並びに、ガラス貼りの近代的な建物になっています。2004年1月に新駅舎が完成しています。ミュンヘン駅と違って、このソウル駅は、終着駅ではなく、乗換駅です。この駅の特徴として、駅構内に、「ソウル駅都心空港ターミナル」があることです。ここは、仁川国際空港での搭乗手続きを帰国当日に、空港まで行かずともソウル市内で事前に済ませられるサービス施設です。

また、駅舎には、「ロッテマート」をはじめとして、様々なショッピングができる店が並び、2013年には、「ロッテアウトレット」もオープンしています。

ホームは1~12番まであり、1~8番までがKTX・鉄道用のホームで、9~12番が地下鉄路線だそうです。チケット売場は、正面入口を入ってすぐ左手にありました。この売り場は、1番はお年寄り・障害者優先窓口です。

ここを見た後、南大門に行ってみました。この名前は通称で、正式には、「崇礼門」と言い、1398年に城郭の正門として建立されたそうです。近くまでは無料で行けますので、よく見ることができます。花崗岩で造られた土台の上に木造の二重楼閣が建てられており、ソウルにある木造建築の中では韓国最古のものだそうです。しかし、2008年2月、放火により全焼してしまい、2013年4月まで復元工事が行なわれています。

そして、急いでホテルに戻り、夕食です。韓国一の繁華街である明洞のなかにある店に行きました。この店の売りは、焼き肉ですが、後日焼き肉は堪能するそうで、今回は違うものをそれぞれ注文しました。メニューを見ると、意外と安いものが多くあります。ちなみに、1000ウオンは、だいたい100円です。その中で、私は「カルビタン」を注文しました。タンとは、舌ではなく、湯と書いてスープのことです。

今日から韓国

昨日から韓国の保育事情の視察と、韓国の園長先生向けの講演で韓国に来ています。韓国の保育事情については昨年の韓国報告で行ないましたので、今回は、ドイツ同様、旅行記の色彩を帯びた報告を行ないます。乳児研究に関しては、少しお休みです。

金浦空港

韓国へは、お隣の国ということもあって、日本各地の空港から韓国便が出ています。そこで、このツアーの参加者23名は、それぞれの空港から出発して、韓国で落ち合います。しかも、その便は、韓国の空港である仁川空港と金浦空港の二カ所に着陸します。その意味では、ドイツと違ったドキドキ感があります。今回は、羽田発、金浦空港着(飛行時間が2時間20分)が14名、関空発、仁川空港着(1時間50分)は、時間がずれてそれぞれ1名、福岡空港発、仁川空港着(1時間25分)が5名、仙台発、仁川着(2時間30分)が2名です。

私は、昨年成田発仁川空港着でしたが、今回は羽田発金浦空港着です。韓国へは今回で3度目ですが、金浦空港は初めてです。仁川と金浦の違いは、日本の羽田と成田の違いに似ていて、基本的には、仁川空港は、中心部から少し遠い国際空港で、金浦空港は、中心部に近い国内空港ですが、羽田発の何便かは、金浦空港を使用します。

仁川空港

また、使用航空会社は、申し込みの時期が何人かギリギリになってしまったので、アシアナ航空と大韓航空とANAと三社に分かれました。

アシアナ航空

私たちの便は、羽田9時発ですが、国際線のため、飛行時間は国内線とさほど変わりませんが、機内サービスがずいぶんと違います。まず、機内で配られる飲み物ですが、エコノミークラスでしたが、試しにジンジャエールを注文してみたところ、ちゃんと奥から取り寄せて提供してくれました。今回、一緒に行く西村君はスプライトを頼みましたが、ほかにもずいぶんと色々と用意されているようでした。

ジンジャエール

また、機内ではさまざまな映像サービスがあり、映画のラインアップも多くありました。私は、昨年の経験からフライト時間と放映時間がギリギリのスパイダーマン-ホームカミングを見たのですが、途中、機内アナウンスだけでなく、機内販売のコマーシャルもはいったため、最後のシーンはきわどいところ観ることができませんでした。機内映画

あと、国際線だということで昨年焦ったのが、機内食が出ることです。水平飛行になった10時頃に食事が提供されます。それが、かなり重いものです。今回もすき焼き風煮込み、ご飯、パン、ヨーグルト、フルーツでした。これは、何食だろうと思うほど中途半端な時間に、かなりの量が提供されるので、面食らいます。

機内食

今回、日本には台風が来ているのでかなり途中揺れましたが、無事に韓国に参加者みな到着しました。韓国の昼間は、日本と違ってかなり暖かく、少し汗ばむほどです。しかし、朝晩はかなり冷え込むそうです。そしてホテルまでバスで移動です。

韓国のホテルは、私たちの宿泊したホテルはそれほど豪華ではありませんが、まずネット環境が素晴らしく、部屋のTVも、BSプレミアム、BSTBS、BSフジ、BS朝日など日本の番組が入ります。

BSプレミアム

ホテルに着いてから夕食までの時間、少し間があったので、南大門市場からソウル駅まで散歩したので、それについてと夕食の報告は明日します。

暗黙と明示

ベイラージョン博士のグループの研究が、サイエンス誌に発表されました。この研究では、期待違反法を用いて15ヶ月児の誤信念理解を調べたものだそうです。この実験の標準的な誤信念課題の特徴は。登場人物が一人である点だそうです。まず、黄色い箱と緑の箱を置いておきます。そこへ登場人物が現われ、対象を数秒持ち、緑の箱の中に入れます。乳児はこのような様子を数試行見て、馴化させられます。その後、登場人物の前の壁が下りて、登場人物から二つの箱の様子が見えなくなります。この間に、緑の箱に入っている対象が、自力で黄色い箱の中に移動します。標準版誤信念課題では、もう一人の登場人物が玩具を移動するのですが、この実験では対象が自分で動きます。その後、壁が上がり、登場人物が再びあらわれ、テストが与えられます。テストでは、登場人物が緑の箱を探す条件と、黄色い箱を探す条件が与えられました。ここでは、登場人物は玩具が黄色い箱の方に移動したことを知らないわけですから、緑色の箱を探すはずです。この実験が、注意深く設定された統制条件とともに行なわれました。その結果、黄色い箱を探す条件の方が、緑色の箱を探す条件よりも、注視時間が長いという結果が示されたそうです。つまり乳児は、登場人物が黄色い箱を探すことに驚いたということです。これは、乳児が他者の誤信念に対して、感受性があることを示していることになるのです。

様々な研究者が、1歳から2歳の乳児を対象にしてこの実験結果を追試しているそうで、この結果は妥当であると考えられています。さらに、最近では、手法を変えて7ヶ月児でも他者の誤信念に感受性がある可能性も示されているそうです。これらの研究は、洗練された素晴らしい研究だと森口は言いますが、問題は、これらの結果と標準版誤信念課題における4歳半の結果の間の、3年間のラグをどう埋めるかだと言います。乳児研究を推進するベイラージョン博士らは、幼児を対象にした誤信念課題を通過するには、他者の誤信念を推測する能力に加えて、反応選択システムと反応抑制システムの三つが必要であると述べているそうです。反応選択システムとは、課題の質問に答える際に、誤信念の表象に対して言語的にアクセスするシステムのことで、反応抑制システムとは、間違った箱を答えそうになるのを抑制するシステムのこととしています。この三つが必要ということは、幼児版の誤信念課題には不必要な要素が含まれており、誤信念理解を正しく評価できていないのではないかと言うのです。もう一つの考えは、乳児研究も幼児研究も誤信念理解を測定しているのですが、そのレベルが異なるという考え方だそうです。乳児版のように視線で計測されるのは暗黙的な理解であり、幼児版のように言語で説明させるのは明示的な理解であるというものです。

これは、私が乳児研究において常々考えていることで、その姿を見せないと、そのことを理解していないとすること、口紅を塗った鏡を見て自分の顔に手をやらなければ、鏡に映った自分の姿を、自分の姿だと理解していないとすることに違和感を感じるのです。明示的な理解を理解とするか、暗黙的な理解の時点で理解とするかです。

乳児研究の結果を受けて、誤信念課題をつくったバーナー博士らは、発達心理学専門誌で心の理論特集を組み、明示的な誤信念理解の重要性を強調しているそうです。