物理から数

乳児は生後間もない時期から物体の連続性などの素朴物理学的な知識を持っていることが示されているそうです。また、ベイラージョン博士らのグループは、乳児の物体がものを支えること「支持」の理解についても検討を行なったそうです。乳児に、物体Aが物体Bの上に載っている状態を見せ、その後実験者が物体Aを動かします。可能事象では、物体Aを物体Bからとった後に、物体Bのところに戻します。不可能事象では、物体Aを物体Bから離れた場所に置くのですが、その場所には物体Aを支えるものはなく、空中に浮いた状態になります。可能事象と不可能事象の注視時間の差を測定し、統制条件の注視時間と比較してみたのです。統制条件では、可能事象および不可能事象と動きは同じでしたが、常に物体Aから手を離しません。何も不思議なことは起こりません。その結果、実験条件において、4・5ヶ月児の注視時間が長いことが示されたのです。

また、別の研究では、ある条件では、物体Bの上に物体Aが置かれ、物体Aを人差し指で押して動かし、物体Aの半分程度が物体Bに支えられている様子を乳児に見せたのです。もうひとつの条件では、同じように物体Aを動かすのですが、物体Aのほんの一部だけが物体Bに支えられています。重力を考慮すれば、物体Bが物体Aを支えるには、後者では不十分です。この結果、6・5ヶ月児は、後者の場面を見せられると注視時間が増加したそうです。これらの実験結果から、生後半年頃には、乳児は物体と物体の支持関係や重力などのような物理的な知識を獲得していることが示されたのです。

次に数の認識についてはどうでしょうか?ピアジェは、論理的思考ができるようにならないと、数概念は充分に獲得できないと考えていました。しかし、乳児研究の進展は、ピアジェのこの考えも覆したそうです。

まずは、乳児の数概念についてのある研究では、スクリーンと二つの物体が用いられました。まず、二つの物体は、スクリーンの後ろにあるので、乳児からは見えません。その後、物体Aがスクリーンの後ろから横に出てきて、またスクリーンの後ろに隠れます。この様子に乳児が飽きてしまったら、二つのテスト試行を行なってみたのです。一方では、スクリーンが取り払われると、二つの物体が現われました。もう一方は、スクリーンが取り払われると、物体がひとつしか現われませんでした。すると、12ヶ月児は物体がひとつしか現われない方に驚いたのです。乳児は、二つの物体が入った場所には、二つの物体があるはずだという数の同一性を保持しているということになると言うのです。

実は、このような実験結果については、私はずいぶん前から知っていました。2015年10月2日にブログに「赤ちゃんの物理学」というタイトルでこの内容を書いています。このときに、それよりも20年ほど前のディスカバリーチャンネルでいくつか見た記憶のことが書いてあります。そこには、「見つめる時間」についての研究から、まず赤ちゃんの「初歩の物理学」について、そして、次々と研究者たちはこの方法を使って、赤ちゃんの人間に関する予測、すなわち、「初歩の物理学」ならぬ「初歩の心理学」を調査し始めたことが書かれてあります。そのときのブログとダブりますが、まずは、乳児の数概念についての研究をもう一度振り返ってみます。

物理から数” への12件のコメント

  1. 乳児の数の概念についての研究が書かれていますが、2つの物体を見えない状態で置いてあり、なぜ2つあるというのが理解できるのでしょうか。それとも私が、実験を理解できていないだけでしょうか。。。
    藤森先生がディスカバリーチャンネルで観た「見つめる時間」についての研究から、赤ちゃんの「初歩の物理学」ならぬ「初歩の心理学」を調査するというのは、とても興味深い研究です。次回からの数概念が楽しみです。

  2. 学生時代では難しいイメージしかなかった「物理」ですが、「物体がものを支える「支持」という面、また「乳児は物体と物体の支持関係や重力などのような物理的な知識を獲得している」というように、まさか乳児でも把握する能力が存在するとは思いませんでした。物事は思っているよりもシンプルで、不思議に思うところに学びがあり、生まれながらにして持っている能力を失わせないようにするということを乳児の姿を通して感じます。そして、「数の同一性を保持している」という言葉にも目から鱗のように、これまでの乳児に対する考え方を新たに、乳児の有能性や自発性をもとに「数」というものを自ら関わり理解しているという前提があるということを感じました。

  3. ゛生後半年頃には、乳児は物体と物体の支持関係や重力などのような物理的な知識を獲得していること゛とありました。この物理的な理解があることは、そういった能力が生まれながらに物理的な知識を獲得できる力が備わっていると、理解ができ、そういった能力は、普段とは違うような現象が起こりえることで可能事象と不可能事象で注視時間の長さが異なる、のように私たちにとっていつもと違う出来事は意識するように表現的には危険を察知するようなかんじでしょうか。生まれながらに生きる力が備わっていることを感じます。゛乳児は、二つの物体が入った場所には、二つの物体があるはずだという数の同一性を保持しているということになる゛とあり、「数の同一性の保持」という言葉が、不可能事象のなかで見られ、それが2つという数の理解に繋がっていることから、乳児のとから、数への認識があることを感じました。

  4. 支持の理解の実験も文章で見ると少し難しく感じますが、実際に受ければよくわかるのでしょうね。それにしても「生後半年頃には、乳児は物体と物体の支持関係や重力などのような物理的な知識を獲得していることが示された」ことにも驚かされます。視線からわかる乳児の有能性は本当にたくさんありますね。また、ピアジェの数概念も乳児研究の進展によって「数の同一性を保持している」と覆ったのですね。ピアジェの考え方がいくつも覆っていますが、ピアジェの先駆け的な考え方が乳児研究を進展へと導き、ベイラージョン博士のように疑問を持って追求する方々が出てきたようにも思えました。

  5. 1つ前のブログであった「素朴物理学」を理解しているということが数の概念へとつながっていくんですね。そこには、自発的に行われる活動であることが前提であると思います。自分は「物理」と聞くと公式に当てはめての計算ばかりで面白さを感じませんでしたが、赤ちゃんたちはそのようなことはなく、楽しみながら「どうして?」の追求をしているのでしょう。その行動が後にいろんなことにつながっていくと考えると、大人が簡単に遮っていいものではない高いレベルにあることが理解できます。

  6.  「物体と物体の支持関係や重力などのような物理的な知識」「数の同一性の「保持」20年以上も経過された研究結果ながら、保育に携わる人に与えるインパクトの何とも大きい研究であることを改めて思います。初めてこの研究結果に触れた時の驚きが思い出されます。
     2015年のブログから丸2年経つのですね。今年度のドイツ報告の連載をスタートさせる際に「私の思考は、年間どうも周期があるようです。」と先生はブログに書かれていますが、今回のこの流れもまた殆ど同時期であることが何とも不思議で、その周期の中で学びを得ていることも、何とも意味深げなものを感じてしまいます。
     

  7. 「生後半年頃には、乳児は物体と物体の支持関係や重力などのような物理的な知識を獲得していることが示されたのです」とあり、驚きました。物理という私たちの身の回りで起きている事象を赤ちゃんもしっかり把握しているということは、どういうことなのでしょうか。藤森先生はよく赤ちゃんは大人をうまく使っているということを言われますが、そのことができるためにもあらゆることを認識しているということが前提なのかなと思えてきました。そうなると、やはり大人は赤ちゃんの世話をしているというより、うまくさせられているということにもなるのかもしれませんね。乳児の数概念について、楽しみです。数や、物理、科学というと難しいものというイメージがありますが、乳児の姿からそれらを見ると、本質を楽しく知ることができるのかもしれませんね。

  8. 確かにずいぶん前から藤森先生は赤ちゃんの数の理解については講演でお話されていましたね。あの時、聞いた瞬間はやはり赤ちゃんが数の認識をしていることに驚きました。ということは人類は地球上に誕生した時には、物理の原理というか、そういった不可思議な現象に対して疑問を感じていたということでしょうか。だからと言って乳児が数も物理を理解しているから、それを保育にどう活かすか?となると、正直分かりませんが、まずは赤ちゃんに対しての刷り込みを亡くすことが大切のように思います。赤ちゃんは何も出来ないし、理解できないから、大人が必要であるという世間一般で理解されていることから、赤ちゃんは既にあらゆる能力を身につけて生まれてくるという理解に・・・。

  9. 乳児の数についての認識については先生からのお話を聞いたことがありましたが、「物体と物体の支持関係や重力」といった物理的な知識については知りませんでした。これでは物を支えられないといったような不思議さを乳児がわかるというのは本当にすごいことですね。今回の「20年ほど前のディスカバリーチャンネルでいくつか見た記憶」というところに、それほど昔の記憶も保育の中に取り上げられる先生のすごさを感じつつ、その以前のブログも自分はどんなコメントをしたのだろうとみてみましたが、見ると思い出せるものの、見ないとというところにまだまだ自分の勉強不足を感じました。

  10. 直感的にこうした重力や物理のことを理解しているというのは驚きです。さらにはスクリーンの後ろにある物体の実験では不可能な事態に注視時間が伸びたとあります。これこそが本当に「驚いている」ということになりますね。さらにこれを以前のブログで書かれているというのもすごいですね。物理的なことを理解した上で次は数へとシフトしていく様子が非常に理解しやすい流れですね。ここまでわかるのであれば数もわかるでしょーというくらいの勢いも感じます。こうした探究心から様々な発見が生まれていくのでしょうね。

  11. ベイラージョン博士の行った実験で、可能事象と不可能事象の2条件とコントロール条件で行った結果、不可能事象の条件で、注視時間が長いことが示されたんですね。個人的にですが、マジックを見ているような感覚になったのでしょうか。普通じゃありえないことが起こって、「おお」って驚く瞬間。こう言った気持ちに赤ちゃんもなっているんだろうなと思いました。それには、普通じゃありえないの「普通」を理解していることが条件ですが、赤ちゃんはこれをクリアしているんですね。そして、数の同一性を保持しているとあります。数の理解は論理的思考ができるようになってからと思っていましたが、そうとも限らないんですね。数概念の話が楽しみです。

  12. 今回のブログでも、赤ちゃんの持つ力について知ることができました。
    数の実験については、以前のブログで読んだことがありましたが、「物体の支持関係や重力などのような物理的な知識を獲得していること」については、初めて知りました。子どもたちと遊んでいると、積み木を重ねる遊びの時にバランスよく積むことができず、すぐ崩れてしまう様子が見られます。それでも、重力や支持関係について理解しているのですね。そして、積み木などを通した経験からそうした理解を確立していくのかもしれませんね。ブログを読むたびに、赤ちゃんの持つ力について新しい発見があり面白く感じています。

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