物体認識

バウアー博士は、新生児は、環境にある特性を、特定の感覚に頼ることなく取り入れていると主張しました。このように、新生児の知覚研究は、知覚についても新しい視点を提供したのです。

乳幼児の実験的研究が進む中、認知的能力も研究されるようになってきたのです。認知能力の研究は、1歳にも満たない乳児が成人と類似した知識や概念を有していることを示し、乳児の有能さを強調するに至っているそうです。例えば、以前のブログでも紹介した対象の永続性に関する研究においてもそれが言えるそうです。たとえば、ぬいぐるみが布に隠されると、乳児は探そうとしなくなってしまいます。このことから、ピアジェは、対象が目の前から消えてしまうと、乳児はその対象がもはや存在しないと考えていたということを紹介しました。ところが、新しい時代の研究者たちは、生後半年以下の乳児が対象の永続性を持つことを示したそうです。

この点について有名なのはベイラージョン博士の研究だそうです。彼女は、3ヶ月半の乳児が対象の永続性を持つことを示したのです。この研究では、テーブルの上にスクリーンを置きます。そのスクリーンは、乳児から遠ざかるように回転し、180度になるまで回転し続けます。続いて、スクリーンは反対方向、つまり乳児に向かって回転し始めます。この様子を乳児に何度も見せ、馴化させます。乳児が飽きた頃に、テストが行なわれます。テストでは、箱をテーブルの上に置き、その箱は、スクリーンが90度に達したとき、スクリーンに隠れてしまう位置に置いてあります。

テストの条件は二つあります。可能事態条件では、スクリーンが最初の状態からちょうど箱にぶつかるところまで回転し、箱の位置でスクリーンは動きを止め、元の状態に戻ってくる事態が乳児に示されました。これは、物理的法則に従ったものでした。もうひとつの不可能事態条件では、スクリーンが90度の位置まで回転してもさらに、そこには箱がないかのように180度の位置まで回転し続ける事態が乳児に示されました。箱があるのにスクリーンが180度に位置まで回転するわけですから,物理的にはあり得ない、不可能な事態です。もし乳児がスクリーンで隠されても存在すると思っているなら、不可能な事態が生じた場合に、驚くに違いありません。可能な事態では、驚かないだろうという予測も立てられます。つまり乳児は、可能事態よりも、不可能事態を長く注視するはずだということです。結果は、この予測を支持したのです。3ヶ月半の乳児でも、対象の永続性は理解できていることが明らかになったのです。

このような物体について乳児が持っている素朴な知識や直感的理解のことを素朴物理学と呼ぶそうです。ボールから手を離すと落ちる、個体は別の個体を通過させない、などの知識のことです。素朴物理学は、学校教育で習う科学的物理学とは矛盾することもありますが、乳児は生後間もない時期から物体の連続性などの素朴物理学的な知識を持っていることが示されているそうです。

もしかしたら、この直感的理解とは、私が考えている赤ちゃんが持っているダークセンスであるフォースに近いものかも知れません。

物体認識” への12件のコメント

  1.  認知能力の研究によって、1歳にも満たない乳児が成人と類似した知識や概念を持っているということは、藤森先生の話を聞いていたら、当たり前のように聞いていましたが、やはり驚くべきことだと思います。というより、これまで、赤ちゃんは無力だということが、当たり前だと考えてきたからで、研究が進むにつれて、考えも改まってくるのでしょうね。
    ベイラージョン博士の実験が、うまくイメージできませんが、物体について乳児が持っている素朴な知識や直感的理解のような素朴物理学な知識を乳児が持っていることは、なんとなく理解できます。

  2. 「乳児は、可能事態よりも、不可能事態を長く注視するはず」という仮説から研究が行われ、それを実験に応用したのが「乳児研究」の仕方であるように、乳児が見つめる時間の長さでそれが「不可能事態を長く注視する」ということと把握できるのですね。「乳児が持っている素朴な知識や直感的理解のことを素朴物理学と呼ぶ」とありましたが、直感的な理解というものが元から存在するということに衝撃でした。小さな経験からそれらの現象などを知っていくのかなとは思っていましたが、直感的に「これはこうなる」という予測がついているというのは面白いですね。その能力によって、「不可能事態」という現象をそのまま把握できるということであることが理解できました。

  3.  「乳児は、可能事態よりも、不可能事態を長く注視する」とても興味深い研究結果ですね。0歳児クラスの子どもたちも不思議なもの、事柄などに対してとても興味を持ちますし、その時のその表情は明らかに変わります。変化というものにも敏感です。それは逆を言えば変化していない状態、馴化されたいつもの状態を把握しているからであり、だからこそ変化後のその違いに気付けるということになるように思います。
     先生の仰るように赤ちゃんの直感的理解は、未知なる力の存在を暗示しているかのようですね。宇宙の神秘にも似た赤ちゃん研究の底知れなさを思います。

  4. ピアジェが対象が目の前から消えてしまうと、乳児はその対象がもはや存在しないと考えていたことも、現在では覆り、ベイラージョン博士の研究によって、3ヶ月半の乳児でも、対象の永続性は理解できていることが明らかになったのですね。このベイラージョン博士の研究に用いられた「可能事態」と「不可能事態」は、以前の内容にあった長く注視した方が好きとか嫌いよりも、より明確な形で示されるなと感じました。また「素朴物理学」という言葉を初めて知りましたが、生後間もない乳児が素朴な知識や直感的理解を持っていることに驚かされます。そういった能力も含めて、より豊かに培っていけるような環境が乳児の時期から必要であり、能力の解明が環境の構成にもつながるように思えました。

  5. 乳児の研究というものは、様々な視点から乳児のもつ能力を見いだすための柔軟であることを感じています。物体認識の実験のなかで見られる゛乳児は、可能事態よりも、不可能事態を長く注視するはずだということ゛から示唆されることは、乳児のころから直感的におかしい、なぜだというような感覚というのでしょうか。うまく言えませんが、そういった科学的根拠のあるものへ対して、疑問を抱くのですね。こういった感覚があるからこそ、探究心、好奇心が表面にでてくるように考えられます。〇〇だったはず、などという目に見えないものを知的に理解している、感覚の使い方は、乳児に勝るものはいないでしょうね。

  6. 〝可能事態よりも、不可能事態を長く注視するはずだ〟という予測をもとに、進んでいく実験の根拠はどこからくるのだろうと自分の中で疑問を持ちました。もしかするとそこは現場でみた、感じた印象からそのように推測し、実験をしてみようと考えたのかもしれません。そのように考えていくと、現場と研究室は密接につながっている、つながらなければならないのだということを改めて感じます。
    素朴物理学という言葉を初めて知りましたが、赤ちゃんは直感的に理解しているのではないか、と考えるとそれは、どこからのものなのか気になりますね。未知の能力というものが存在するということすら感じさせます。

  7. 乳児の持っている能力には驚かされます。実験の様子が紹介されていましたが、物理的法則までも理解しているのではないかと考えられる研究があるのですね。物理的法則は私たちの生活する場面に溢れていますが、そういった意味でもこれらの力を持っていることが、生きる力にどのように結びついていくのか気になります。また、物体について乳児が持っている素朴な知識や直感的理解のことを素朴物理学と呼んでいるのですね。はじめて聞いた言葉でした。これは、赤ちゃんが科学する心を持っているという部分にも繋がっていくのかもしれませんね。また、直感的理解がダークセンスということではないかともありましたが、まさにぴったりな言葉であるように思いました。

  8. ピアジェの永続性の話しを妻にしました。そしたらバッサリと「8ヶ月頃から動けるようになるから、探し始めるのは当然じゃん」と。確かにその通りだ・・・と一人なぜか落ち込みました(笑)やはり研究でも3ヶ月から永続性の理解をできるということになります。ブログの後半には「素朴物理学」と書いてありますが、最近、椅子に座ると、おもちゃなどを下に落として、じっくり観察し、またテーブルに置くと、再度下に落とします。この行為が「素朴物理学」かどうか分かりませんが、そういった赤ちゃんが何度も繰り返し行う行動は科学者のように見えてきます。

  9. ベイラージョン博士の実験を読み頭の中でいろいろと考えましたが、まず3ヶ月半の乳児の研究というところでだいぶイメージする難しさがありますね。そして、その結果は対象の永続性があることを証明したというところでより、その研究を実際に見てみたい衝動にかられました。こうしたの乳児の素朴な知識や直感的理解を「素朴物理学」ということですが、難しい実験ではなく、普段のかかわりの中でイメージすると、何となく思い当たる行動がある気がします。赤ちゃんの持っている力をしっかりと見ようとしなければやはり気付くことはできませんね。

  10. 「3ヶ月半の乳児が対象の永続性を持つことを示したのです。」という研究がすごいですね。以前ブログあったと思うのですが、乳児も足し算、引き算ができるという内容を思い出します。いやこれはおかしいという不可能な事態が起きた時、つまり、隠した1つのボールが出てきたときに増えているなのどの現象に長く見るといったことでした。こうしたことと同じ事でしょうか。それが新生児は直感的に理解しているということに驚きです。そういった乳児の理解のことを素朴物理学というのですね。更にはそれは藤森先生のいうフォースとなるとまた想像が膨らみます。

  11. ベイラージョン博士の行った研究はとても面白いですね。研究者は本当に様々な発想があって、すごいなと思います。
    ベイラージョン博士の結果により、乳児でも対象の永続性は理解できているという結果を支持したんですね。赤ちゃんが自分達を世話してくれる大人を実は使っているという話を聞きますが、よくやる「いないいないばあ」も可愛く思われたいためにわざと面白がっているのかもと思いました。乳児の能力は本当に計り知れないです。そして、こう言った素朴な知識、直感的理解のことを素朴物理学と呼ぶんですね。乳児は生後間もない時期から物体の連続性などの素朴物理学的な知識を持っていることが示されているとあります。自身の身を守りために、こう言った知識を持って生まれてくるのでしょう。

  12. 3ヶ月半で永続性を理解しているのですね。3か月半というとないのもできない赤ちゃんという印象がありますが、ブログを読むにつれて、赤ちゃんの持つ力に驚かされています。私たちはブログを読ませていただくことで、赤ちゃんの持つ力を知ることができていますが、周りの人たちは知らない人の方が多い気がします。こうした、赤ちゃんの持つ力を知ることで赤ちゃんに対する、接し方も変わってきますね。保育士として、赤ちゃんのことをよく知り、発信していくことも私たちの役目かもしれませんね。

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