数から算数

乳児が二つのものと三つのものを区別できるかを検討したこんな研究があります。この研究では、二つのドットを乳児に提示し、それに馴化させた後に三つのドットを提示してみたのです。その結果、乳児は三つのドットに対して脱馴化したのです、この結果は、乳児にも数概念を持つ可能性があるという点で注目を集めたそうです。しかし、二つと三つのドットを区別することが数概念を持つことを意味するのかは疑問です。もしかしたら数ではなく、スクリーン上に何らかの変化が起きたために乳児が驚いたという可能性はあります。実際、別の研究グループは、乳児はスクリーン上に提示されたドットの数ではなく、ドットの輪郭の長さに脱馴化していると主張しているそうです。このような反論は、証拠を伴って行なわれる場合、科学的な研究においては重要なのです。最近は、乳幼児の有能生を強調しすぎるあまりに、反証論文が少なくなっているような気がしていると森口は言っています。

正確に数を数える能力とは別に、乳児にはおおまかに数を見積もるアナログ表象の能力もあると考えられています。たとえば、8個の飴と16個の飴を提示された場合に、大人はどちらが多いかを瞬時に見積もることができます。スペルキ博士らは、6ヶ月児が8個と16個の区別がつくこと、8個と12個の区別は難しいことを示したそうです。ある群の乳児は、スクリーン上で8個のドットを、別の群の乳児は16個のドットを見せられ、それに馴化します。その後、テスト試行で8個のドットか16個のドットを提示し、脱馴化するかどうかを検討したそうです。

この研究が重要なのは、様々な物理的変数で説明されないような工夫をしたということだと言います。スクリーンの明るさやドットがスクリーン上で占める密度などを統制したそうです。このような場合においても、乳児は8個と16個を区別できたそうです。8個と12個の区別は10ヶ月頃までにできるようです。このように、違いが4個以下の場合とそれ以上の場合で区別できる年齢が異なることから、数概念には4個以下の数を表象するシステムと4個以上の数を表象するシステムの二つがあるようです。

最後に森口は乳児の「算数」についてウィン博士の研究を紹介しています。彼女らは、乳児が「1+1=2」や「2-1=1」を理解しているかを検討したのです。5ヶ月児は演劇を見せられます。舞台上に一つ目のミッキーマウスが置かれ、スクリーンに隠されます。次に、スクリーンの後ろに二つ目のミッキーマウスが置かれます。この時点で、スクリーンの後ろに二つのミッキーマウスがいます。この様子を見せられた後に、乳児にテスト試行が与えられたのです。片方のテスト試行では、スクリーンが取り払われた後ミッキーマウスが二つおり、もう片方ではミッキーマウスひとつしかいません。

もし乳児が「1+1=2」であることを理解しているのであれば、ミッキーマウスが一つしかいない場合に驚くはずです。逆に乳児がディズニーランドについて熟知しており、ミッキーマウスが同時に二ついるはずがないことを知っていたら二つの方に驚くでしょう。結果としては、ミッキーマウスが一つしかいない場合に乳児は驚いたそうです。この結果から、乳児は「1+1=2」を理解しているようです。このように乳児が算数をできるとすれば、驚きです。この研究に対しても様々な批判がなされているのも事実だそうです。現在では、様々な研究が乳児の計数能力を示唆していることから、わずかながらも乳児には計数能力があると森口は言うのです。

数から算数” への14件のコメント

  1.  森口さんの算数の研究について1+1=2や、2−1=1などを理解しているかを、乳児が理解していることはすごいなと思うのですが、笑ってしまうところがありました。スクリーンが取り払われた時に、2つのミッキーマウスが置かれることに対して、ミッキーが同時にいるはずないと驚くことがあるかもしれないと、森口さんがおっしゃってますが、そんなことがあるのでしょうか。読みながら、笑ってしまいましたが、結果としては、やはり1つしかいないことに驚いたのですね。これは、まさに1+1=2というのを理解していますが、この研究に対しても様々な批判というのは、どんな批判なのか気になりますね。

  2. 乳児の有能性が出てきているからこそ、「乳幼児の有能生を強調しすぎるあまりに、反証論文が少なくなっているような気がしている」という森口氏のコメントがあるのですね。新しいものに対しては、急激な変化とともに行きすぎな面も出てきてしまうのだと思いますが、正しい実験や研究によって更なる知見を増やしていくことが大事であり、また、「スクリーンの明るさやドットがスクリーン上で占める密度などを統制」というように、多くの実験における微妙な環境の違いをなくし、条件を一つに統一するということが需要であり、そこが難しい部分でもあるのかなとも感じます。そして、乳児の算数能力についても衝撃ですね。乳児が「数」を直感的に理解しているということだけでなく、通常の現象でなかったらそれを「おかしい」と思う違いに気がつく能力が非常に長けているということも感じました。

  3. ゛違いが4個以下の場合とそれ以上の場合で区別できる年齢が異なること゛とあるように、それぞれに理解し、概念化できる年齢というものがあるのは、三までの概念が2歳児頃の発達にはあるように私たちは、それがなんなのかということを゛乳児にはおおまかに数を見積もるアナログ表象の能力もある゛ということを知っておかなければならないと思います。この正確ではなく、おおまかに見積もることも年齢によって、より、比べる対象のものとの差が少なくてもわかるようになってくるのですね。おやつの時などに5こまでという表示の他に実際にお皿に1個の皿から5個の皿を並べています。それを子どもたちを選択してもっていくのですが、そうしたなかでも、比べたりしながら選ぶといった姿、おあつまりのときに休みの人数を表示し、合わせたりすることなど、゛わずかながらも乳児には計数能力がある゛という乳児のころから計数能力をどのような場面で使うのだろうかと考えていたみたいです。

  4. 〝最近は、乳幼児の有能生を強調しすぎるあまりに、反証論文が少なくなっているような気がしている〟とありました。新しい研究や結果を鵜呑みにするのではなく、しっかりと見極めていくことも大切になってくるんですね。
    赤ちゃんの驚くべき能力が次々と明るみに出ている反面、行き過ぎてしまうこともあるということなんでしょう。それを踏まえ、乳児は計算ができる、おおよその見積もりができるというのは驚きです。また、違いに気づき、そのことを誰かに伝え、共有したくなるということもあるのではないかと思いました。

  5. 「最近は、乳幼児の有能生を強調しすぎるあまりに、反証論文が少なくなっているような気がしている」とありました。ピアジェの考え方に疑問を持って研究する人があらわれたことによって、乳幼児の有能性が明らかになってきたことと同様に、有能性についても疑問を持って追求する人たちが出ないとより定かな乳幼児観に近付かないような気がしてしまいます。また「算数」についての研究も面白いですね。結果的には「1+1=2」を理解しているようだとありましたが、批判もあるのですね。その批判がどのようなものなのか気になりますが、確かに一概には言い切れないような気もしてしまいます。しかし、結果がどちらに転んでも、批判を追求していく形がより真相に近付くと思えるので、研究には批判歓迎的な部分があるのかなと感じてます。

  6.  「結果としては、ミッキーマウスが一つしかいない場合に乳児は驚いたそうです。この結果から、乳児は「1+1=2」を理解しているようです。」「このように乳児が算数をできるとすれば、驚きです。」本当にそうですね。驚きです。それが算数であることを乳児は知らないはずなのに、その概念は脳の中にインプットされながら生まれ出でているということなのでしょうか。それとも、例えば生まれて目が開き、外界の景色を取り込んでいく中で、重力にして、算数的な理解にしてを、瞬時に理解していく程の学習スピードを、赤ちゃんの脳は持ち合わせているということなのでしょうか。想像が膨らみます。

  7. 「乳幼児の有能生を強調しすぎるあまりに、反証論文が少なくなっているような気がしている」とありました。乳児研究ではこのような傾向がみられているのですね。いい研究にはいい反証があるということは、それらがあることでより研究が深まるということになるのでしょうか。あらゆる可能性を考えることで、見えてくるものがあるのかもしれませんね。そして、乳児の数概念は「4個以下の数を表象するシステムと4個以上の数を表象するシステムの二つがあるようです」とありました。年齢によって区別できる数が異なるということからも、それぞれの発達にあった関わり方が大切になってくるということを感じます。早くさせたり、早く教えるということがいい訳ではありませんね。

  8. 先日、誕生日を迎えて1歳になった次男ですが数をどこまで理解しているのか、ブログに書いてある実験を行ってみようと思います。「1+1=2」を理解しており、表情の著しい変化が見られたら、なんだか嬉しいですね。研究者が乳児に対して研修を始めたのは、なぜなんだろう?と考えてしまいました。ピアジェの乳児の理論が実際に違うからか?そこには人類がいままで 進化してくるために必要な「好奇心、探究心」が影響しているように思います。藤森先生が言われるダークセンス、それを知りたいという一心のような気がします。それは私たち、現場も同じ気持ちで、赤ちゃんだけでなく、子どもという存在に対して可能性を感じることが大切だと思います。

  9. われわれが乳児が数の概念を持っていると感心しているうちに、どのくらいの範囲までが理解できるのか、ドットを数を使った研究もおこなわれているのですね。先の先まで考えられた研究、そして結果が分かったもの以外にも数多くの研究をなされてきたのだろうなと本当に驚かされます。そして、ミッキーマウスという研究の中にも少し遊び心を取り入れるあたりも、研究時代を楽しんでいる感じが伝わり、またうらやましく感じてしまいますね。

  10. 「スクリーンの明るさやドットがスクリーン上で占める密度などを統制したそうです」とこうした細かい部分でも統制していかなければ本当にそれを理解しているかということに繋がらないという研究の難しさを感じます。やはりこういった研究にも批判というのはあるのですね。そんな中でもしっかりとこうした乳児の結果が出ているという事実は確かですね。実際の現場でも試すことでまた信憑性というのも高くなるでしょうね。しかし、乳児の計数能力には驚きます。この直感的に計算というのがフォースのような力に近いのですかね。

  11. 乳児が数の違いの置いて、4個以下の場合とそれ以上の場合で区別できる年齢が異なるとあります。こう言った発達による能力の違いはしっかりと理解していきたいと思います。子どもに対する声かけも変わってきますね。こっちより、こっちの方が多いねと大人が見てわかるのは簡単ですが、違いが4以下である場合は、おんなじくらいだねという声かけになるんですね。こう言った発達を意識した接し方を少しづつ学んでいけたらと思います。そのためにも、子どもの行動、他の先生の接し方をしっかりと見て、学んでいけるよう頑張りたいです。

  12. 乳児の持つ力について知ることは面白いです。乳児が8個と16個の区別ができても8個と12個の区別は難しいこと、10ヶ月頃になるとその区別ができるようになることを知ることができました。このように、様々な方法で乳児について解明されてきていることもすごいことだと感じました。普段、保育で子どもたちと関わっているのに知らなかったことが多いのですが、ただ関わるだけでは理解することは難しいのだと思います。乳児の持つ力について勝手な固定概念を持たず、乳児の持つ力をさらに知っていけたらと思います。

  13. 数の概念からより進んだ算数の概念までも実験されているのですね。「1+1=2」の概念がわかっているというのはこれまでのブログでも取り上げられてきたことです。その中で4つ以下の違いの場合と4つ以上の数を表すシステムが2つあるというのも面白いですね。ダンバー数のように、「4」という数字に何か意味があるのではないかと推測してしまいます。脱馴化・馴化から見通していける発達の過程は多岐に渡りますね。このようなことを考えていくと保育の環境においても、もっと幅のある環境を作ってもいいのかもしれません。「赤ちゃんはなにもわからない」というのではなく、目の前の赤ちゃんを見て「試せる環境」を用意しておくことでまだ、研究されていないなにかも見えてくるのかもしれませんね。

  14. 正―反―合の弁証法を思い出してしまいました。「反論は、科学的な研究においては重要」これも確かでしょうね。「乳幼児の有能性を強調しすぎるあまりに、反証論文が少なくなっている」事実は学界にとってはマイナス要因か。「反証論文」ではなく新発見や新事実解明論文がいっぱい出ているのか。ここ10年間の乳児研究の成果は著しいような感触を持っています。こうした研究成果を大いに取り入れ、私たちが持っている「子ども観」を変えていく必要がありますね。現場で働いている先生たちには研修等の機会を通じて研究成果から得られた新知見を入れて頂き、新しい「子ども観」の共有を図っていくことが期待されますね。さて、今回は乳児の数概念把握能力。「わずかながらも乳児には計数能力がある」という森口氏の見解は子どもたちの遊び環境、乳児を取り巻く環境をどう構成していくのかについて現場の先生たちが考えていく参考になることでしょう。「数概念には4個以下の数を表象するシステムと4個以上の数を表象するシステムの二つがある」という知見は私にとって新鮮でした。「4」という数概念。4以上であるか以下であるかはどんな意味を持つのか、個人的に関心を抱いたところです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です