優れた五感

乳幼児の優れた能力が次々と研究されています。例えば、視覚については、新生児は目が見えないと考えられてきましたが、科学的な検証の結果、新生児は、視力は悪いものの、全く見えていないわけではないことが明らかになっているそうです。約30cm先にあるものに対して、焦点が合わされており、大人のように焦点を変化させることはできないのです。また、生後直後の乳児でも、動く物体を注視しようと試みますし、顔のような配置の図形を好んで見つめることも明らかになっているそうです。それは、通常、乳児の30cm先にあるものは、養育者の顔なので、そこに焦点を合わせているのです。また、動く物体を注視しようとしたり、顔のような配置の図形を好むというのも、養育者に対する反応なのでしょう。

では、聴覚についてはどうなのでしょうか?やはり、母親のおなかにいる頃から機能していることが明らかになってきているそうです。生後数日において母親の声と見知らぬ女性の声を提示した際に、母親の声を好むことや、父親の声と見知らぬ男性の声を提示した際には、好みが見られなかったことが示されているそうです。これらの結果には、赤ちゃんが母親のおなかの中にいるときに母親の声を聞く経験が影響していると考えられています。また、新生児は、音を知覚するとその音の音源に対して顔を向け、大人と同様に、不協和音を嫌い、協和音を好む傾向があることも知られているそうです。

臭覚や味覚については、まだ研究は少ないそうですが、新生児は苦い味よりも甘い味を好み、他人の母親よりも自分の母親の母乳の臭いのするパッドを好むなど、味覚や臭覚も乳児期から機能していることが明らかになっているそうです。さらにわかっていることに、大人の臭覚は、方向弁別能力という、臭いの元は左か右かを判断する能力は低いそうですが、驚くことに、乳児は左右の弁別ができるという報告もあるそうです。私が考えるには、味覚は、生まれたあとに赤ちゃんが口にするものに対しての防衛でしょうし、臭覚は母親の乳首を探して、そこに吸い付くためであろうということは容易に推測できます。生まれたあとのためにその機能を発達させているのでしょう。

このように新生児や乳児が視覚や聴覚などの感覚を発達させていることが明らかになってきたのですが、ピアジェの理論と最も大きく異なるのは、感覚と感覚の関係、つまり感覚間協応についての問題です。ピアジェは、把握や視覚などの枠組みは、早期には独立して機能し、後にそれらの枠組みが協応して働くようになるという考えを持っていました。この考えでは、新生児や生後間もない乳児では、視聴覚統合や、視覚と触覚の統合はあり得ないことになってしまいます。しかしながら、実験手法の確立により、新生児にも感覚間協応があることが示されているのです。

これらの研究で有名なのが、バウアー博士らの新生児のリーチング研究だそうです。リーチングとは、子どもの発達において対象物に向かって手を伸ばす行動のことで、例えば、乳児が、仰向けで寝ている姿勢で、目の前に興味のありそうな玩具を出したときにそれを見ながら手を伸ばし、触れたり掴んだりする行動のことです。そこには、玩具を見るという視覚と、それに触れたり掴んだりするという把握行動があります。ピアジェは、視覚と把握行動の協応ができるようになるには、生後数ヶ月を要すると考えていました。ところが、バウアー博士がネイチャー誌に報告した研究では、生後数日の乳児が、視覚的に誘導されたリーチングを行なうことが示されたのです。

優れた五感” への11件のコメント

  1. 随分昔と、乳児に対する考え方が変わってきていますね。視覚に続いて、聴覚もすごい力を持っています。聴覚に関しては、母親のお腹の中にいる頃から、音を知覚し、不協和音を嫌うというのは、すごい能力だと思います。しかし、それをすごいと思うのは、私たちが赤ちゃんにはそのようなことは無理だと思っていたからなのでしょうか。赤ちゃんの能力を信じていたら、そんなことは当たり前だと感じていたのかなーと思ったりしています。感動しないのも寂しい気がしますが。しかし、この後に書かれている、嗅覚について、大人には難しい方向弁別能力が、乳児にはできるという報告で、大人にできないことをやれる赤ちゃんに驚かされますね。赤ちゃんがどれだけ優れているか、知っていくとやはり感動します。

  2. 30㎝先のものを把握できるというのも、養育者との距離を意味しているのですね。多くの人は、乳児を見るときに顔を自然と近づけて覗き込むような形をとる印象です。それは、乳児が反応できる距離まで自然と近づいているということでもありそうですね。そうすることによって、乳児からの反応を受け取ることができるのであり、そのように仕向けているというのが、乳児の能力の一つでもあるということなのでしょうか。聴覚に関しても、胎児の時でも音を聞く能力があるというのは驚きですね。羊水の影響もあって緩やかでぼんやりとした音であるかなとは思いますが、その頃から外界で発せられる音を聞いているというのは不思議に思います。また、それは母親の声に反応があったということで、母親以外の人の声や音に関しては把握できていない証明されていないということでもあるのでしょうかね。

  3. 赤ちゃんの驚くべき能力が次々と分かってきているんですね。赤ちゃんはお腹の中で生まれた後の練習をしている、ということを聞いたことがありますが、お腹の中にいる頃から先を見通した活動をしているということになります。もはや、この部分も赤ちゃんにできて、大人になるとできなくなる能力なのかもしれませんね。そのようになることのないよう、その部分は削り取ることがないような関わりをしていかなければなりません。大切なものというのは研究により、新事実が分かっても変わらないものであるのだと思います。
    これからも赤ちゃんの研究により、次々と新しいことが分かってくることでしょう。その結果から導き出されるものがどんなものでも、ブレないものを大切にしていかなければなりませんね。

  4.  「父親の声と見知らぬ男性の声を提示した際には、好みが見られなかったことが示されている」父親としては何とも寂しい研究結果ですが、やはりそこは真摯に受け止め、父親としての役割を果たしていきたいという気持ちを強くさせますね。子どもの看病で一日つききりでいる日が増え、その度に絆というのでしょうか、そういったものが大きくなっていくことを感じているのですが、仕事から帰ってきた妻を見た時の嬉しそうな表情を見ると、母親の偉大さというものは計り知れないなと思います。同時にその有難さを強く感じさせます。家族の華たる役目を一身に背負っていますね。

  5. 視覚、聴覚、臭覚や味覚などの五感における新生児の有能な能力が多く発見されてきているのですね。私たち保育者は、子どもたちがこれらの能力を経験を通して育んでいけるように環境を構成し、見守っていく必要性を改めて感じた内容でしたし、前回の視覚の内容でも感じましたが、五感は生存戦略に通じているなと感じることもできました。また「方向弁別能力」を初めて知りましたが、大人は低いと言いますか、大人になる過程で薄れてきた能力を子どもたちが高い基準で持ち合わせていることに驚きますし、面白いなと思えます。感覚間協応についても「リーチング研究」によって、ピアジェの考え方から見直させれてきたのですね。子どもたちの優れた五感が単体で発達していくのではなく、連動して発達していき、ここにも発達の連続性があるように感じました。

  6. 視覚に限らず、聴覚や臭覚など様々な研究のなかで、赤ちゃんは生まれながらに備わっている能力があり、それを使う力があることがわかります。゛バウアー博士がネイチャー誌に報告した研究では、生後数日の乳児が、視覚的に誘導されたリーチングを行なうことが示された゛とありました。ピアジェの考えていたものよりも、さらに早い段階からこのような姿があることは、赤ちゃんがまさにお腹を満たすために、母乳を欲しがり手を伸ばしたり、近くにあるもの、例えば、指があったら指をというように、生きるために必要な行動、視覚から得た情報を他の五感へと信号を送るといった、五感の協応というものがいきるための発達に必要性があると考えられました。

  7. 「父親の声と見知らぬ男性の声を提示した際には、好みが見られなかったことが示されているそうです」とありました。藤森先生の講演の中でもありますが、この内容は男性にとってはほんのり寂しい結果でもあるのかもしれませんね笑。それにしても乳児の持っている能力は本当にすごいですね。方向弁別能力という聞きなれない言葉も出来てきましたが、そのような能力も備えていると知り、驚きました。これらのことからも、乳児は白紙で生まれてきて…という説が正しいものではないということを感じます。「視覚と把握行動の協応」とありました。これをピアジェは生後数ヶ月を要して表れると考えていたのに対し、最新の研究では生後数日で行うということが示されたのですね。ここまで、新しい知見が示されているのですから、教育もいつまでも同じようなことをやっていては時代についていけなくなってしまいますね。

  8. ブログを読んで瞬間的に思った事は、もっと次男を観察すべきだった!です。改めて赤ちゃんの能力のすごさというか、新生児でもここまでの能力を備わっていることに驚きます。おそらく、新生児の時にこういった行動や反応を示していたのかもしれませんが、全く無意識だったのでしょうね。確かにイメージで新生児の感覚機能はそれぞれが独立しているというピアジェの理論は聞いた瞬間に納得するのかもしれませんが、時代と技術、研究者の気づきによって新たな見解が解明されることで、批判というか異論を唱える人が出てくるのは当然の結果なのかもしれません。そして藤森先生の新たな理論を聞くことで、より一層、乳児保育の重要性が分かります。

  9. 新生児における視覚や聴覚の研究はとても興味深いです。聴覚について、不協和音を嫌い、協和音を好むとありましたが、大人でも人によって苦手な音や匂いがありますね。例えば、私は皿とスプーンが擦れる音が苦手で、どうしても食事中に周りの音が気になってしまいます。これにも何かしら関係があるのかなと思いました。方向弁別能力について、新生児が匂いの元を嗅ぎ分ける力があるのには驚きました。なぜ、大人になるとその能力が失われていくのでしょうか。人間の持つ力を知るほど興味が湧いて来ます。
    また、感覚間協応という言葉が出て来ましたが、ただ見るだけでなく、見て気になるから手を伸ばすということなのですね。当たり前の行動ですが、普段の自分の行動にも様々な感覚が関連していることに気づくことができ、発達する上でも大切なことだと思いました。

  10. まさに優れた五感であるように思います。視覚というのも生まれてすぐに機能していることも驚きですが、やはり胎児の時から母親の声を聞いているのこで、母親以外の声は好まないという結果が出ていることにやはり驚きです。臭覚や味覚もそうですが、羊水に味をつけた時に胎児がどんな反応を見せるかという実験があったように思います。甘いものにはあまり反応は示さず、苦いものには嫌な表情を浮かべていたように思います。こうした能力がもうすでに胎児から育っていることを知っているというだけでも今後の保育、子どもと関わる人には土台になる部分になるように感じました。

  11. 母と子の関係はすごいなと感じました。生後数日において母親の声と見知らぬ女性の声を提示した際に、母親の声を好むこと、父親ではそれが見られなかったと子とが書いてありました。体内から母の声を聞いており、それが影響していたんですね。赤ちゃんが母の声や、匂い、顔など、様々なものを記憶しながら生きていることにも驚きです。先日、子どもが反抗的な態度をとるのは最も自分を見捨てない人にすると聞きましたが、母に反抗する理由がすこしわかったような気がします。母って偉大です。

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