助っ人

「助っ人課題」とは、どのような実験なのでしょうか?Aが赤い箱に玩具を入れて退場します。その後、Bが青い箱に玩具を移して退場した後、AとBが2 人同時に戻ってきます。そして実験者が子どもにこう言います。「いま玩具は青い箱に入ってるよね? 2人はどちらの箱に玩具を取りに行くかな? 間違いそうな人を選んで、玩具は青い箱に入ってるよ、って教えてあげよう」

もし、誤信念を持っているのはAだということが分かれば、子どもはAを選ぶはずです。日本人の3~5歳児を対象に「助ける」状況のない場合と比較してみると、いずれも「助ける」状況にある場合の方が有意30 に正答率が高いことが分かったそうです。この結果は、「助けてあげる」というような、実生活につながる社会的な対人関係の状況になると、何もないニュートラルな状況に比べて、他者の心の理解が進むことを示唆しています。

では逆に、「玩具をちゃんと見つけてしまいそうな人に、嘘をついて見つけられないようにしちゃおう」という状況ではどうかと試してみたところ、ニュートラルな状況よりは正答率が高かったのですが、「助けてあげる」状況に比べると出来が悪かったそうです。したがって、3~5歳児では、「助ける」といった社会的な対人関係にプラスになる行為に関しては心の理解の反応が良いけれど、「騙す」といったマイナスになる行為に関しては反応が悪い、ということがわかったそうです。この実験のように、社会的な対人関係のなかで私たちは生活しています。特に圓においては、まさに子どもの社会が存在します。ですから、当然ここに見えるようなかかわりは行なわれるはずです。

また、ブログで紹介したように、何もないニュートラルな状況で、日本人は5 歳児の子どもでも半数ほどしか誤信念課題をパスできないことが分かています。その結果は、欧米の子どもに比べて、日本の子どもは誤信念課題にパスする時期が6 か月から1 年ほど遅いことがこれまでの研究でも明らかになっています。これはなぜでしょうか?

上越教育大学の内藤美加先生は、こういう場面ではこうしなさい、こうしてはいけない、といったように状況と行動が結びついた日本の親のしつけに関係しているのではないか、と指摘しています。つまり、特定の状況における対人ルールや社会的決まりごとが優先しているので、ニュートラルに自己や他者がいま何を考えているか、に思いが至る時期が遅くなる、というわけです。

心の理論の発達には、幼児の周りにいる大人の言葉がけや、対応が影響しているようです。その行動には、このような違いがあると言われています。母親が絵本を読み聞かせるとき、欧米は「自己主張型」で、母親や保育者は子どもに登場人物の思考や感情に対する考えを話すように仕向けていくことが多いと言われています。それに対して、日本では「状況依存型」という特徴があり、「ある状況下では、このように振る舞うべき」というように、場面に応じた登場人物の行動に話題の焦点を合わせます。

心の理論の研究でも、このような違いがあることがわかっています。親子の会話の中で「と思う(think)」「と信じている(believe)」「を知っている(know)」といった単語が何回出るかという調査をしました。すると、欧米では3 歳くらいから頻出するのに対して、日本では「好き」「嫌い」といった感情に関する言葉は出てくるものの、こうした思考に関する言葉はほとんど出てこない、という結果が出ているそうです。

助っ人” への14件のコメント

  1. とても考えさせられる実験の数々でした!なんだか道徳にもつながるような内容ですね。『「助ける」といった社会的な対人関係にプラスになる行為に関しては心の理解の反応が良いけれど、「騙す」といったマイナスになる行為に関しては反応が悪い…』ということからも子どもにもともと備わっている道徳感があるということを感じさせます。しかし、欧米の子どもと日本の子どもとの誤信念課題を比較した結果と、その原因と考えられている大人の関わり方というのは気になってしまいますね。「こういう場合はこう振舞うべき」ということを日本の大人は教えてしまいがちということでした。それは道徳を教科として取り組むべきであると考えている日本の人たちと同じようなことでもあるのかもしれません。それはもともと子どもが持っている道徳観を伸ばすという関わりかたではなく、子どもが状況によっての関わりかたを覚えるという方法では、まず相手の思っていることを察知するという感じではないのかもしれません。思えば、私たち大人も相手がどう思うかよりも、こういう場合はどうすることが正解なのかということを考える癖のようなものはあるのかもしれません。そのような思考はどうやって作られていったのかまた気になります。

  2. 『「助ける」状況にある場合の方が有意30 に正答率が高いことが分かった』という実験結果は、非常に面白いですね。火事場の馬鹿力という言葉があるように、ある状況下に陥るとアドレナリンのような物質が放出されて、普段では考えられないような力を発揮するそうですが、「助ける」という状況が人の判断力や道徳心にも影響を与えて、「他者の心の理解が進む」ための別の物質が放たれているのかもしれないとも感じました。そして、「状況と行動が結びついた日本の親のしつけ」や「特定の状況における対人ルールや社会的決まりごとが優先している」日本の状況には考えさせられますね。親は、「行儀良いのね」「躾が良いのね」と言われるため、社会人としてのマナーを優先するがあまりに、我が子を「状況依存型」として育ててしまうのでしょうか。それよりも優先させるものを明確にできる社会になればいいのでしょうか。

  3. 本当に面白い話でした。助っ人課題の結果を受けて、先生達が子供達に関わる姿と繋がるところがありました。先日、にこにこクラスに入り、遊ばせてもらいました。お片付けの時に、ある子供が重そうにおもちゃの箱を戻そうとしていました。その時、先生がある子に「ほら重そうだよ、一緒にもってあげたら」と声をかけていました。その子は素直に「うん」といって片付けを協力してやっていました。課題の状況とは異なりますが、「きっと箱が重くては大変なんだろう」という他者の気持ちになれたからこそ、素直に助けにいったのでしょうね。そういった環境を先生たちが子供達に促しているんですね。自分は子供達にたいする関わり方を未だわかっていなく、普通に一緒に遊んでいます。一つ一つの声かけに意味があって、他の先生たちは本当にすごいです。自分ももっと勉強して、頑張っていきたいです。

  4. 「助っ人課題」の実験方法も面白いですね。また、”3~5歳児では、「助ける」といった社会的な対人関係にプラスになる行為に関しては心の理解の反応が良いけれど、「騙す」といったマイナスになる行為に関しては反応が悪い”ということがわかったのですね。この点においても「協力的」「援助的」「利他的」な特性が作用していることがわかります。そして、日本人の子どもが他国の子どもと比べて心の理論の発達が遅れている理由に「状況と行動が結びついた日本の親のしつけに関係しているのではないか」という指摘がありました。マニュアルのようなものは必要な場合ももちろんあると思いますが、そのマニュアルが臨機応変さ、柔軟性の欠如を招くと考えると考えものですね。また、欧米の「自己主張型」と日本の「状況依存型」とあり、絵本の読み聞かせスタンスでも心の理論の発達に影響が及ぶとも考えられているのですね。ここでは母親の絵本の読み聞かせとありましたが、保育者からの絵本の読み聞かせでは他のお友達と一緒に見て、共感できたりもするので、同じくらい重要性があるのではないかと感じました。

  5. 〝何もないニュートラルな状況に比べて、他者の心の理解が進むことを示唆〟しているという「助っ人課題」の結果になったのは、やはり人間が「協力」や「協働」といったものを生存戦略として今日まで生きてきたというものが関係あるように思います。他者を助けるという行為や思いがそのような結果となる原因はどこにあるのでしょう。何かエンドルフィンのような脳内ホルモンが分泌されたりしているのでしょうか。
    日本人の絵本の読み聞かせでは〝場面に応じた登場人物の行動に話題の焦点を合わせます〟という「状況依存型」といわれる方法をとっていることが多いのですね。確かに、「このような場面ではこうあるべき」のようなことを息子たちには言っていることが多くある気がしました。例えば「食事の時は座って食べる」というようなことを…。その前にどのようにすれば楽しい食事となるのかということを考えていかなければなりませんね。

  6. 今回のブログを読んで、少し反省しました・・・。3歳クラスに進級したということもあり、自分の息子に対する言葉がけを少し厳しくしないといけないと思っていました。ブログに書いてあるように「こうしなさい」「これはダメ」と状況に応じた言葉がけです。親としては社会のルールを知り、最低限の集団生活のルールは守ってもらいたいという気持ちが先行してしまい、そういう言葉がけが多くなってしまうのかもしれません。私もそうです。それに対して欧米の「自己主張型」の読み聞かせは参考になりますね。これはすぐにでも実践できそうです。個人的には日本の「状況依存型」も決して間違いではないと思います。日本人らしいというか、相手への気配りに繋がると思います。よく思うのは、どちらかに特化するのでなく、バランスが大切だと思いました。

  7. 助っ人課題による子どもの姿というものは、面白さを感じると共に、人の生き方を感じました。困っている人がいると教えたくなることや例えば、子どもが何か困っている人を見ると声をかけたり、また、自分ではできないという場合には、声を保育者へ声をかけるのは、集団の中にある対人へ対するコミュニティーとして居続ける術だとも思いました。また、”心の理論の発達には、幼児の周りにいる大人の言葉がけや、対応が影響している”とありました。これを考えたときに私たちが行う保育は常に子ども主体であり、自発性を大切にしているために比較的、保育者からの声かけは多くないと思います。”特定の状況における対人ルールや社会的決まりごとが優先している”とあることは、どうしても子どもへ対しての親の子ども観というものが実際とはズレがあり、そのずれとなるものの大きさが違うことが外国との違いのようにも思いました。

  8. なるほどという実験ですね。「助けてあげる」ことと「騙す」という違いでは心の理解の反応はいいけれどあまりマイナスことには反応が悪いというのは生存戦略として備わっていることとは少し違うような印象を受けますね。また欧米との違いの理由というのも納得がいく理由のようにも思います。こうしたらこうしなさいという説明は日本人にとってよくある光景なのかもしれません。躾というのは履き違えるというケースも少なくはないのかもしれないですね。それが「状況依存型」として現れているというのが理解できます。「自己主張型」というのを意識してみたいところです。

  9. 「上越教育大学の内藤美加先生は、こういう場面ではこうしなさい、こうしてはいけない、といったように状況と行動が結びついた日本の親のしつけに関係しているのではないか、と指摘しています。つまり、特定の状況における対人ルールや社会的決まりごとが優先しているので、ニュートラルに自己や他者がいま何を考えているか、に思いが至る時期が遅くなる、というわけです。」とありましたが、とても納得してしまいました。しつけと言い、相手の気持ちを考えるということよりも、この瞬間での振る舞い方、ごめんなさいをするなど、態度や対応を教えることが多いですね。ただ、これは社会の問題でもあり、しつけ(教えること)が良いとされていることが多く、森友学園問題であの教育を良しとしている人が多数いて、まだまだ日本は変わらないと感じてしまいます。やはり、子どもは子どもの中で育ち合うことが大切だなと痛感します。

  10. 「3~5歳児では、「助ける」といった社会的な対人関係にプラスになる行為に関しては心の理解の反応が良いけれど、「騙す」といったマイナスになる行為に関しては反応が悪い、ということがわかった」という言葉から子どもはもともと持っているということがわかります。そして、子どもを取り巻く環境によってその道徳観に影響があるのように思います。保育士は毎日子どもたちと関わるので責任重大ですね。また、欧米「自己主張型」と日本の「状況依存型」とで差があるのですね。確かに、自分も絵本や紙芝居の読み聞かせで登場人物の思考や感情に対する考えを意識した話し方をしていることが多いです。こういった研究を知ることでまた新しい子どもとの関わり方を学べます。

  11. 助けられる存在にいるより、助ける側にいたい、と私は思います。この思いはどこから来るのか?助ける=手伝う、ということもあるのでしょう。善悪以前の感情とでも申しますか、他人が困っているのを基本、見過ごせない民族が私たちなのかもしれません。その意味では、互助精神が旺盛なのでしょう。動物占いという占いがあり、「自分軸」か「他人軸」かという分け方があったように思います。私は分類上「他人軸」に属するのですが、確かに他人目を気にするところはありますね。他人を不快にさせたくないという気持ちはあるのですが、結果として不快にさせてしまうこともしばしば。ということは、結局、私は「自分軸」で生きているのかも、という結論に達したところです。欧米と比較して進んでいるか遅れているかは、基準によるのでしょう。自己主張型の欧米の思惟方法に対して、私たち日本人は「状況依存型」=他人依存型。で、まぁ、この型で持ちつ持たれつの関係を維持できたのだと思います。自己主張ばかりしているとぶつかってばかり。状況依存型は、まぁまぁ文化、あるいは白黒未決着文化を形成するのでしょう。

  12. 相手のことを考えるということが子どもの頃からしっかり備わってきていますね。ただ、その背景には子どもに関わる大人の対応の仕方によってできる時期の違いはかなり大きいのですね。
    1つ1つの言葉かけに、答えをすぐに教えてしまったり、道筋を伝えてしまうと子どもの考えるきっかけを消してしまうように感じました。
    欧米の親子の会話でよく出てくる単語は、理屈だったものや明確であることや曖昧なものにつながるのではと思うと、すでに会話が大人と話すようなものになってるのではと感じました。

  13.  「『助ける』といった社会的な対人関係にプラスになる行為に関しては心の理解の反応が良いけれど、『騙す』といったマイナスになる行為に関しては反応が悪い」「助っ人課題」によって判明されたこの内容は、人間の道徳心の高さを物語っていますね。それを乳児から、むしろ生まれたばかりの赤ちゃん、お腹の中にいる胎児さえ持っているということを、やはりどうしても信じたい気持ちになります。視線の研究が進んでいますが、そういった高度な研究によって、赤ちゃんの心の理論が解明された時、その世界の奥深さに感動する人がたくさん現れることでしょう。赤ちゃん研究が、少子化や、経済に至るまでのあらゆる改善につながることを、改めて感じました。

  14. 幼児の周りにいる大人の言葉がけや対応が子どもたちの心の理論の発達には大きく影響していくのですね。そうすると確かに欧米の「自己主張型」、日本の「状況依存型」というように心の理論が共通化されるでしょうし、それがその国特有の文化的な考えになっていくでしょうね。日本はそういった意味では「おもてなし」や「思いやり」といった言葉をとても大切にしています。それは小さいころから大人の言葉や意識が他者に向かっていることや状況に合わせてどう振る舞うようにするかということを自然と学んでいるからなのでしょうね。よく保育の中でも「子どもは大人のことをよく見てる」ということがあります。よく見ているだけではなく、心の理論も大人の姿から学んでいると考えるとより考えさせられますし、保育としてどういった環境を作らなければいけないのかを考えていかなければいけないですね。

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