ネアンデルタール人

私にとって、人類の進化の中で大きな疑問は、「私たちの祖先であるホモ・サピエンス以外のヒト族は、なぜすべて全滅したのか?」ということであり、特に、「知恵も力もあり、長い間ヨーロッパを中心に生存していたネアンデルタール人が、なぜ滅びたのか?」ということです。その原因から、「子どもには遺伝子としてどのような力を祖先から受け継いできたのか」ということを知ることによって、「今の私たちがどう生きなければいけないのか」を考えるヒントがあるのではないかと思うからです。

「ネアンデルタール人が突然姿を消したのはなぜか?」という問いが、多くの研究者たちの興味を掻き立ててきたようです。まず考えられているのが、現生人類との混血が進んだというものです。それは、日本列島において、縄文人が多く住んでいたところに弥生人が入ってきて、あっという間に弥生人が日本列島を征服してしまいます。それは、縄文人と弥生人との混血が進んだからだと言われています。同じようなことがヨーロッパでも行なわれたかもしれないと言うものです。となると、現代ヨーロッパ人は2つの種のミックスということになります。たしかに胸板が分厚くて首が太く、腕と脚が筋肉隆々という、ネアンデルタール人の特徴を持つ人も見かけます。しかし、混血というわりには、ネアンデルタール人と対極のひょろりとした体格の人が多すぎます。この説は説得力に欠けるだろうとダンバーは言います。

もうひとつは、ヨーロッパ人が新世界やオーストラリアを侵略した過去を踏まえて、刃向かってくる邪魔者のネアンデルタール人を殺戮したというものです。悲しいかな、私たち現生人類は、同じ事を繰り返してきた歴史があるので、可能性がないとは言えないとダンバーは言います。さらに伝染病説もあるそうです。南アメリカのインディオでも同様のことがあったそうですが、アフリカから持ち込まれた熱帯病がヨーロッパに蔓延し、抵抗力のないネアンデルタール人はそれにやられたという説です。ただ、この説は、現生人類がアフリカから直接ヨーロッパに入っていないことが玉にきずであるとダンバーは言います。彼らは、東の黒海近辺から移動してきたので、少なくとも3万年近くのあいだは、ネアンデルタール人と同じ風土病にさらされていたことになるのではないかとダンバーは言います。

絶滅の本当の理由が何であれ、色黒の新参者に対するネアンデルタール人の反応は、今のヨーロッパ人とほとんど変わらなかっただろうとダンバーは言うのです・ネアンデルタール人の肌が白かったことは、最近発表されたDNA分析で明らかになりました。バルセロナ大学の遺伝学者たちが、スペインのエル・シドロン洞窟から見つかった四万9000年前のネアンデルタール人の骨からDNAの抽出に成功しました。そこに含まれているmclr遺伝子は、現代ヨーロッパ人も持っていて、メラニン色素の生成を抑えることで、肌の色を白くする働きがあるそうです。両親からともにこの遺伝子を受け継ぐと、日光に敏感な白い肌と、赤毛の持ち主になるはずです。赤毛で白い肌のネアンデルタール人のイメージは、ダンバーにとっては意外なようです。

近年の遺伝子研究からは、現生人類、とくに北半球の人間に特徴的な突然変異を、ネアンデルタール人がほとんど持っていなかったということもわかっているそうです。それは、どういうことなのでしょうか?