温暖化

 ダンバーは、生物地理学的な特徴や進化面の特質から見ると、言語と生き物の種は共通点が多いと言います。彼は、もともと進化人類学が専門ですが、どうじに進化心理学教授も務めていることもあって、進化生物学と認知心理学、人類学の重なり合う領域で活動をしています。このような面から「言語」を見ると、いろいろなことがわかるのでしょう。種も言語も、高緯度地方より赤道付近のほうが、種類が豊富で、占める範囲が狭く、密集していると言います。高緯度になるほど季節の変化が大きく、予測が付きにくいのです。そのため広い範囲でお互いに情報を交換しあって、自然災害の影響をなるべく小さくする必要があったと言うのです。異なる種によるニッチ空間の取り合いといった現象も、その流れで起きることだろうと彼は言うのです。

 その地域でいちばん多くの人が話す言語を採用していきます。政治力を背景に、そうした圧力を掛けると、小規模な言語は消滅に追いやられます。小規模言語は自給自足できるところでしか生き延びることができないと言います。言語も種も、絶滅の流れを食い止めるには、救済行動が必要なのだと彼は訴えています。

 地球上の生き物にとって最大の脅威は、昔も今も気候変動だとダンバーは言います。2005年、モントリオールで開かれた国連気候変動会議で、アメリカを含むすべての国が温暖化を深刻な問題として捉え、最悪の影響を避けるための行動を検討することが決まりました。これで世界はひとまず安堵のため息を漏らしたそうです。実は、これは当時の様子ですが、最近のアメリカのトランプ大統領の行動は、少し心配ですね。トランプ米大統領は、持論の地球温暖化の否定に立って、これまでの環境規制を取り払い、石炭やシェール資源の開発認可にのり出そうとしています。さらに重要なことはトランプ大統領の一撃によって、国際政治における温暖化の意味が一変してしまうことであると危惧されています。しかし、ダンバーは、インド洋津波、パキスタン地震、ハリケーン・カトリーナと大規模な自然災害が連発し、あと起きていないのは火山の噴火だけという状態も関係しているだろうと考えているのです。

 さらに、2005年は本当に自然災害が多く、合わせて40万人という死者は平均的な年のおよそ5倍だそうです。ただし、これは災害だけの話で、実のところ交通事故の死者は世界全体で毎年100万人以上います。予防できる病気で生命を落とす子どもは800万人に上るそうです。

 地球の歴史全体を振り返ると、気候の激変は珍しいことではないとダンバーは言います。氷河期という言葉は誰でも耳にしたことがあります。ヨーロッパ北部全体が、断続的にではありますが、分厚い氷で覆われた時代です。氷河期はおおよそ6万年周期で訪れており、その間に温暖な気候の時代が挟まっているそうです。いまはちょうど温暖な時期というわけだそうです。

 最後の氷河期が終わったのは約1万年前です。このとき、徐々に温暖化していた気候が急激に寒冷に戻った期間があって、ヤンガードライアス期と呼ばれているそうです。地球の平均気温はわずか50年で7度も上がっています。それまでの温暖化で極地の氷が融け出し、海水面は90メートルも上昇しているそうです。それに比べると、今騒がれている温暖化はずっとおとなしく、2080年までに予測される平均気温の上昇はせいぜい4度だそうです。ですから、あまり危機感がないのかもしれません。