進化生物学

 最近のブログでは、なんだか保育に直接関係ないことを書いてきたように見えます。しかし、私が興味を持っているのは、人類が、特にホモ・サピエンスが生存戦略として築いてきた「社会」というものです。そして、その成り立ちから、社会という規模はどのような大きさが適当であり、その機能はどのようなことが起源だったということです。それをつながりの進化心理学説いて考察してきた一人者であるロビン・ダンバーの考察を読み進めてきました。

 もうすぐ園では年長さんが卒園して小学校に入学します。その時に歌う歌の中で「友だち100人できるかな?」がありますが、この歌詞は、2014年に亡くなられた詩人のまど・みちおさんです。この歌詞には賛否両論あります。それは、子どもたちに「友だち至上主義」を煽ってしまうということが主な反対する人たちの主張です。しかし、ダンバーは、「How many friends does one person need?」と問いかけています。この問いは、1994年~2006年に発行された週刊誌「ニュー・サイエンティスト」と、2005年~2008年に発行された「スコッツマン」にダンバーが書いたものです。彼は、この内容から、その10年ほど前から驚くべき成果を次々に挙げていた行動、特に人間の行動を進化面から探る研究の興奮と、おもしろさを少しでも伝えたいというねらいがあったようです。

 ダンバーは、オックスフォード大学の認知・進化人類学研究所所長であり、進化人類学者でもあります。また、リバプール大学の心理学教授も務めていました。彼は、この経歴からもわかるように、私の興味のある進化生物学と、認知心理学と、人類学の重なり合う領域で活躍しているからです。

 ダーウィンは、「人間の由来と性淘汰」で、長い進化史の産物である私たちには、その傷跡が今も残っていると言っています。なかには意外なほど新しい歴史の名残もあるとダンバーは言います。たとえば、肌の色ができ上がったのはせいぜい数万年前、アフリカから全世界に広がった人類の大移動をきっかけに、遺伝子が変異したためだと言われています。そうかと思えば、系統樹をずっとさかのぼった、より初期の種に由来するものもあるそうです。早産傾向もそのひとつだそうで、これはほかの霊長類にはない特徴だそうです。ほ乳類ではめったに見られないものなのです。オスの子育て参加を促すためにそうなったのだと考えられています。子育てというと、次に連想するのはミルクです。子どもにミルクで栄養を与えるというのは、ほ乳類の発明であるとダンバーは言います。

 男性の育児参加は、何も最近の傾向ではないようです。男性を含め、社会全体で子育てを行なっていたようなのです。いつの時代に、「子育ては女性のもの」「女性が子育てするもの」とすり込ませてしまってきたようです。

 ミルクを与えると言って、ダンバーは昔を思い出しています。「校庭で遊びたくてうずうずしているところに配られる小さな牛乳瓶……このせいで貴重な遊び時間が削られたものだ。冬は凍ったアイスキャンデー一歩手前、夏は凝固してチーズの一歩手前だった。それでも私たちはありがたく飲み干したし、ときにはおいしいと思うこともあった。しかし、あなたは知っていただろうか?そんな風に飲める自分が実は少数派だということに。世界のほとんどの人は、ミルクを飲むと体調が悪くなってしまうのだ。」