言語からわかること

 言語も動植物同様、大消滅時代にいるとダンバーは言うのですが、それは心配なことなのでしょうか?動植物は自然界のバランスが崩れ、私たち人間にも大きな影響があります。しかし、ある言語が消滅したとしても、それはどのような影響があるのでしょうか?その問いに対して、ダンバーは、言語の消滅は心配する必要があると言います。その理由はいくつかあるようです。まず、1つは全般的なことで、言語が進化する過程から学ぶことは多いですし、人間が移動してきた歴史も言語からたどることができるからだと言います。少数言語は、言語自体の特徴もさることながら、話者の遺伝子も合わせて調べることで、多くのことがわかるそうです。ただ、両者の結果が一致するとは限らないそうですが、言語は交易や征服を通じて普及することもあるからだそうです。

 ヨーロッパ系言語の歴史には、征服による言語伝播のあらゆるパターンが入っていると言われています。ローマ帝国が崩壊したあと、イタリア北部とフランスにはそれぞれランゴバルド人とフランク人が侵入しました。住民もしぶしぶ受け入れ、ランゴバルド人とフランク人はそれまでの母語を捨てて、まだ誕生間もないイタリア語とフランス語に乗り換えたそうです。そうかと思うと、アッティラ率いるフン族は、よほど脅威的だったのか、侵略先の住民たちは明らかにヨーロッパ中部の起源と遺伝子を持っていたにもかかわらず、フン族の話すモンゴル系言語をいそいそと受け入れたと言うのです。それが、いまのハンガリーで話されているマジャール語になったそうです。イングランドの場合は、もともとあったゲルマン系のアングロサクソン語と、1066年に征服王ウィリアムが持ち込んだフランス語を併用する道を選んだというのです。そのおかげで英語の語彙が豊かになったのはメリットかもしれないと言います。ほとんどすべての事物に関して、簡潔で直截なアングロサクソン系の単語と、凝ったフランス語系の単語が用意されていて、その使い分けで微妙なニュアンスを表現することができると言います。

 このような言語の変遷は、ヨーロッパでは多くに国に見られたのでしょうね。私たち日本人は、ありがたいことに、それまで使っていた言語が消滅の危機にあったことはありませんし、他の言語に取って代わられた経験もありませんので、それほど危機感を持っていません。その点、ヨーロッパでは危機感があるのでしょうね。

 それは、言語は、民族の知識庫でもあり、なかには医学的に重要な情報も含まれているからです。たとえば、アスピリンとマラリアの特効薬キニーネは、南アフリカのインディオから得た知識を元に作られているそうです。珠玉の知恵を取り出さないまま言語を消滅させると、優れた製品を世に出す機会も失われるからです。身近な例として、ちょっとした病気は、チキンスープで治すというおばあちゃんの知恵も化学的に裏付けがあるそうです。チキンスープには生化学的な有効成分がたくさん含まれていて、身体がウィルスなどの感染症と戦う手助けをしてくれるというのです。おばあちゃんのことばを誰かが記憶しなければ、何世代にもわたって編み出されてきた民間療法も消えてしまうだろうとダンバーは危惧しています。

 イギリスにも、おばあちゃんの知恵があるのですね。それは、言葉によって伝わってきているのですね。

言語からわかること” への12件のコメント

  1. 人間が移動してきた歴史も言語からたどることができるのですね。研究というのは本当に想像力がいることでもあるということを感じます。言語をそのような見方でみることができるという発想がすごいなと思えてきます。確かに、自国が他国に侵略されたらその土地で使われていた言語もまた変化しますね。日本ではまずそのようなことがありませんが、アジアの国の中には日本語を話すことができるお年寄りがおられるところがありますが、やはりそれも歴史を表しているということになるのですね。また「言語は、民族の知識庫」という言葉が印象的でした。その土地での歴史を残しておくためにはその土地での言語を持った人の存在が必要不可欠になってきますね。うまく通訳できればいいというそんな簡単なものではないと思いますが、言語をひとつ無くしてしまうということはその土地の歴史を知る手がかりを失ってしまうということにも繋がっていくのですね。

  2. 今回の話を読みながら、たしかに他国の言葉が消滅したとしても僕らの生活には問題が起こるわけでもなく、どうして消滅することを危惧しているのかわかりませんでした。もちろん、言語はその国の文化を表していて大切にしないと!とぼんやりと思ってはいたのですが、それを他人に説明しようと思っても、うまいこと説明できないでしょう。話を読みすすめていくと、言語をたどることで国の歴史であったり、移動の流れなどがわかることを知りました。なるほど、確かにそうだな!と思いました。しかし、言葉とは音声情報でありますので、それのルートを探るのは大変困難なことだと思います。ましては、文字として起こせない言語もあるでしょう。よく調査できるなと感心しました。
    日本では言語が消滅するといった危機にひんしていません。本当にありがたいことだと思います。こういった現状ですので言語の消失ということすら考えたことがありませんでしたが、とても勉強になりました。

  3. 言語には、医学的に重要な情報も含まれているということなのですね。日本にも、言葉による伝承から、様々な要素が知識として伝えられていると思うのですが、それは外国でも共通であるというのは、新しい発見です。また、言葉から医学というと、なんとなく想像がつきませんが、言葉の伝承には「あばあちゃんの知恵」というように、喉には蜂蜜や生姜が効くとかという豆知識のようなものが、結果的に医学というジャンルに入っているということでもあるようですね。そして、日本においては「それまで使っていた言語が消滅の危機にあったことはありません」とありましたが、日本は言語が一つという条件があったから大丈夫であったのでしょうか。そして、チキンスープに「ウィルスなどの感染症と戦う手助けをしてくれる」効果があったのですね。スープは好きなので、今後は食べる機会が増えそうです。

  4. 人類の歴史からみる、人類の進化過程が私たちにとって知るすべに言語があり、言語を辿ることでその時代に何があったのかをより知ることができるのですね。
    日本は言語としては、様々な語はなく、日本語の1つですね。そして、日本語には、ニュアンスで伝わるような方便があり、そのなかでの進化は、様々な地域であったのでしょうね。それを感じるのは、海外から日本へきたことでその地域のイントネーションや表現の方法を日本語で話しているのを見かけます。また、番組などで、他の国へ行き話を聞くと日本語を流暢に話し、理由を聞くと祖父母が移住したなどというようなをこのような形で、言語の動きと言うものは、人が歴史的にどう動いたのかを知る一つの
    伝承方法なのかなとも思います。

  5.  〈このような言語の変遷は、ヨーロッパでは多くに国に見られたのでしょうね。私たち日本人は、ありがたいことに、それまで使っていた言語が消滅の危機にあったことはありませんし、他の言語に取って代わられた経験もありませんので、それほど危機感を持っていません。その点、ヨーロッパでは危機感があるのでしょうね。〉日本が島国だったことの好影響がここにもあるように思えます。日本が日本列島という島の中で独自に発展することを許された国であるということを改めて思うと同時に、住井すゑ著『橋のない川』にあるような、日本語の豊かさ、そこには方言も入っていますが、言い回しやそこから感じる表現力、そういったものも発展していくことができたというこの恵まれた環境の有り様に、思わず感謝の気持ちが湧いていきます。
     危機感なく発展させることのできた日本語の持つ豊かさを、日本人が自ら放棄してしまっては、失ってしまってはなりませんね。たくさんの言葉を知って、たくさんの本を読んで、日本語の魅力を存分に味わい続けていきたいですね。

  6. 日本人は、それまで使っていた言語が消滅の危機にあったことはありませんし、他の言語に取って代わられた経験もないことが言語消滅の危機感の薄さにあらわれているのですね。確かに私も言語の消滅がどう私たちに影響を及ぼすのかわからずにいましたが、日本が言語消滅の危機に面したことがないことがその理由であることがわかりました。後世に伝承していく上で、進化上や医学的なことなど、言葉の役割はとても大きかったことが伺えますし、言葉があったからこそ伝承され続け、今があると考えると、ダンバーの言う通り言葉の消滅を未然に防ぐ必要性がありますね。しかし、どのように対処すれば言葉の消滅を未然に防げるのかがわかりません。日本でも地方の中では、若者が上京してしまい、高齢者が多い過疎地域があると聞いたことがあり、過疎対策も聞いたことがありますが、具体的な方法はそれと似たものになるのでしょうか。

  7. 言語も大消滅時代にあるということでしたが、少し考えても、消滅してしまうことで起こる影響を思いつきもしませんでした。
    今回のブログを読んで、言葉には歴史を読み解くヒントがあること、移動の流れのようなものが分かるということが分かりました。
    書かれてある通り、日本に住んでいると言語が消滅する危機を経験したことがありませんし、消滅するかも…と思ったこともありません。そのことは恵まれたことであるんですね。
    日本にいると気付きにくいことであるような言語の深い部分も学べたように思います。

  8. 言語も同じ消滅していく、それも大消滅時代と言われているとなるとかなりの数が聞かれなくなりますね。その問題として、歴史の流れをそこから読み取るきっかけの一つになったり知識を次の世代へと伝えるツールであるにも関わらず、言語がなくなればそれができなくなりますね。重要な内容や受け継いでいって欲しいものなど段々と薄れ言語とともに失われていきますね。その歯止めをする方法はあるのでしょうか。文章に残せば?とも思いましたが、結局は理解している人がいなくなるとその文も意味をなさなくなりますね。古代文字などがまさにそうですよね。

  9. ヨーロッパの言葉の移り変わりというのも面白いですが、言葉で歴史を辿るという発想もまたすごいことだと感じます。よく口コミと聞きますが、これは言葉でその良し悪しを伝えているようなニュアンスだとは思いますが、おばあちゃんの知識である病気にはチキンスープ(チキンスープが病院に聞くというのは恥ずかしながら初めて知りました。)というのも口コミといいますか、伝承されてきたことなのですね。その伝えが本当に裏付けがあるのがまた驚きというすごいところですよね。なぜ効くのか知っている起源というのも気になるところですが、それがしっかり伝承されてきたのは言葉のおかげというのは頷けますね。言葉が歴史を辿るための重要な手かがりの一つだということがよくわかりました。

  10. ヨーロッパの言語の変化を見ると驚きます。やはり、これも勝手なイメージで、現在は言語が変化するというのはないのかもしれません。それが当たり前のように感じているので、言葉が変わるという大きな環境の変化は無いと思っていました。特に日本に住んでいるから、やたら強く感じるのでしょう。
    「言語は民族の知識庫」という言葉はいいですね。チキンスープの例なんてなかなか面白いです。日本にも「おばあちゃんの知恵袋」という物があります。おそらくこれも似たような物で、おばあちゃんの言葉を代々伝えてきているのでしょう。言語が消滅するというのは、そういう知恵も失い、歴史も失うというのは・・・寂しいですね。

  11. 私は言語が好きです。ですから、今回のブログ内容をワクワクしながら読み進めました。私は、民族とは何か、ということを考えることがあります。その考えの末、今現在たどり着いていることは、民族形成の因子が宗教と言語である、ということです。よって、言語の消滅はその言語使用民族の消滅にも繋がることになります。世界に7000言語が存在するなら7000民族が存在していることになり、200言語ずつ消滅していくということは、200民族が消滅していくことに繋がる。これは私たちが大事だと考えている「多様性」の幅が狭まっていくことを意味します。「言語は交易や征服を通じて普及する」このことを私は自分が生まれ育った地域の「方言」の中の単語から実感しています。主には「交易」の結果だと思います。今はほとんど消滅しつつあるのが東南アジアにおける日本語利用可能人口(太平洋戦争までの日本の植民地地域)です。これは「征服」の結果。「ヨーロッパ系言語の歴史」の話もたまりませんね。蘊蓄、含蓄、知ったか、開陳オンパレードなトピックスです、私にとって。私の「知ったか」自慢の一つは、ハンガリーのマジャール語で挨拶ができるということです。(だから何だ!・・・一人突っ込み)。ハンガリー語「ヨー」と発音される語があります。意味は「良い」です。「ヨー」と「よ~い」と似ていますね。ハンガリー語も日本語も「モンゴル系言語」です。いずれにせよ、言語消滅の回避には、民族へのリスペクトと経済最優先発想からの脱却が必須だと思っています。

  12. 言語が進化する過程から学ぶものは大きいですね。「人間が移動してきた歴史も言語からたどることができる」というように言語を見ていると文化のルーツが見えてきます。日本語も中国語の影響を色濃く受けているのがわかりますし、今回のイタリア語、フランス語、英語のようなルーツから見えることもあります。言語は一つとっても様々な影響、その国のルーツが見えてきますし、歴史が身近に感じるものだと思います。また、今回はおばあちゃんの知恵といった伝承されるものも紹介されました。このブログでも様々な伝承が紹介されてきましたが、今の科学的な研究を通して感がるとそれがしっかりと利点としてあり、理にかなっていることが多いということがわかります。民間療法に関してもそう言える部分がたくさんあるでしょうね。言語が消滅することで伝承されるものがなくなっていき、過去の工夫が埋もれてしまうのはあまりにももったいないことだと思います。

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