行動環境学

これまで行動環境学の世界では、単婚を成立させているのは協力関係だということになっていました。しかし、研究者は従来の交尾戦略を見直し、コインの裏側に目を向ける必要に迫られているというのです。つまり、協力関係には、搾取されるリスクは必ずつきものなのです。単婚のオスは、パートナーが産んだ子の父親が本当に自分なのか、確信が持てません。協力を前提とするシステムには、ただ乗り戦略がつきものだとダンバーは言います。育児のコストは別の誰かにまんまと背負わせ、自分は利益だけいただく。決まったパートナーとの関係を続けるかぎり、ただ乗りされるリスクは常に背中合わせだというのです。かといって新しいメスに走ると、母親だけではわが子を育てられないかもしれないのです。それが、単婚のジレンマだとダンバーは言うのです。

しかし、あれもこれも手に入れたいのがオスというものであると彼は言います。ですから、進化の過程で、新しいメスとも交尾できますし、なおかつよそのオスの子を育てずにすむというずるい戦略を発達させたというのです。DNA解析によって、婚外交尾の実態が明らかになった今、研究者は従来の生殖活動の中に、「反寝取られ」戦略の側面があることに注目し始めているそうです。なかでも、ヨーロッパカヤクグリという地味な小鳥の例が有名だそうです。ケンブリッジ大学のニック・デイヴィスらは、ヨーロッパカヤクグリのオスが単に食べ物を運ぶ回数が、自分の血を引いたヒナの数に比例することを突き止めたそうです。そんな離れ業をオスはいかにやってのけるのか?種明かしは簡単で、産卵期にメスがオスの視界からいなくなる時間で判断していると言います。巣を留守にしているあいだ、隣家の旦那と草むらでよろしくやっているかもしれないということだろうとダンバーは推測しています。

婚外交渉に神経をとがらせるのは人間も同じだと言います。離婚した男性が、DNA鑑定で子どもとの血縁関係を確認したがるのはその表われであると言います。自分と血のつながらない子どもに養育費を払いたくないからだと言います。男たちの不安も無理はないとダンバーは考えています。マンチェスター大学のロビン・ベイカーとマーク・ベリスは、イギリス人の妊娠の1013%は、パートナー以外の男性との性交渉によるものだという推計を発表したそうです。計算のもとになったのは、重婚性交渉の頻度に関する自己申告だそうです。重婚性交渉とは、排卵期の5日以内に、本来のパートナー及びそれ以外の男性とセックスすることを言うそうです。

私はこの数字を聞かされるとびっくりしてしまいます。果たして、日本でも同じようなことが起きているのだろうか?それとも、今後そのような状況になっていくのであろうかと考えてしまいます。しかし、子どもと関わる仕事をしている者として、このような状況はきちんと認識している必要があるかもしれません。それは、その状況の中の子どもたちは、それを知ったら、さぞかし傷つくであろうと思うからです。また、家庭という集団、家族のあり方も違ってくるかもしれないからです。