自制心や誠実の一貫性

 ミシェルは、自らのさまざまな体験から、人の特性に一貫性がないことを確信してきます。日本のことわざに「人は見かけによらず」というものがありますが、その意味は、「外見で人を判断すると、正しい判断をあやまりやすい」ということで、少し意味は違いますが、おおむね同じような意味です。また、これを英語で言うと、“Don’t judge a book by its cover.”と言うそうで、意味は、「本のカバーを見るとつまらなそうな内容の本に思えても、読んでみるととても面白い」ということで、英語のことわざの方では、人だけでなく、物事の判断にも広く適用されていて、物事の価値は外見だけで判断すべきでないと日本のことわざより広い意味になっています。そのような言葉があるように、人の振る舞いには一貫性がないことを昔から思い知らされているのでしょう。

 ミシェルは、自らの体験から、特に自制心や誠実さに注目して、振る舞いの一貫性のあるなしについて、さらに調べることにします。研究を進めるうちに、彼のチームは実際に一貫性を見出します。それは予想外の場所でした。それを発見したのは、治療を目的とした子どもたちの合宿のことだったのです。彼らは、一夏の半分をかけ、1日何時間ものあいだ、来る日も来る日も彼らをそっと観察し、一人一人の子どもがどんな行動をするのかを注意深く見守りました。この合宿は、日常生活で長い時間にわたって、さまざまな状況で人がどう振る舞うのかを詳細に観察するための自然の研究室であり、人格の理解の仕方を変えるような、驚くべき発見をもたらしたそうです。

 7歳から17歳までの子どもたちが6週間、同年代ごとに男女別の小グループに分かれて、数棟の丸太造りの建物で生活し、それぞれの建物には、5名ほどの大人のカウンセラーが配置されました。子どもたちは、家庭や学校で、社会的適応性の深刻な問題、特に攻撃性、引きこもり、鬱といった問題を抱えていたために、このプログラムに参加することになったのです。ほとんどの子が、ボストンやその近郊の家庭から来ていました。合宿が提供する治療環境の目的は、より適応性があり、前向きな社会的行動を促進することだったのです。

 ミシェルらの研究仲間は、6週間の治療コースのあいだずっと、子どもたちの行動を系統的に観察することができました。彼らは、屋内で過ごす時間から、水辺での活動や食堂での時間、さらには美術や工作やその他のもろもろの時間まで、合宿のさまざまな活動や場面全般を通じて、子どもたち一人一人の他者との毎日の交流を幅広く、ただし、目障りにならないように注意しながら記録していきました。それは、厖大なデータ集めの仕事だったため、プロジェクトの計画を立て、観察結果を分析しました。

 観察者たちは、夏の間一人一人の子どもが、同じさまざまな状況で他人と接しているときに何をするかを連日記録しました。ミシェルらは、そもそも子どもたちがここに来る原因となった、ホットシステムが引き起こすネガティブな行動、ほとんどが言葉や身体を使った攻撃だったのですが、その分析に焦点を当てました。

 子どもたちが色とりどりのビーズを糸に通したり、水泳をしたりしているとき、万事がうまくいっていれば、強い情動が引き起こされることはまずありません。情動がほとばしり出るのは、一人の子どもが一生懸命に作っている塔を別の子がわざと壊したり、誰かが一緒に塔を作ろうと優しく誘ったときに、その子を馬鹿にするようなことを言って意地悪くからかったりするときです。