恵まれた信念

ミシェルは、サルも人間もミラーニューロンを持ってはいますが、私たちの方が共感するのがはるかに得意で、その違いは、人間らしさの重要な要素だというのです。人間のミラーニューロンの役割については、まだ論争が続いているそうですが、ミラーニューロンは、他人が考えたり感じたりしていることの軽いバージョンを、私たちが経験するのを可能にする神経構造の一部らしいと彼は言います。心の中にあるこの鏡のおかげで、優しげな人に微笑みかけられると、私たちは思わず微笑んでしまいます。また、他人が怖がっていると、私たちも恐れを感じ、他人が痛みや喜びを感じていれば、私たちも同じように感じます。リゾラッティの言うように、この鏡は私たちが、「概念を使う論理的思考ではなく、直接のシミュレーションを通じて、他者の心を把握する」ことを可能にしてくれます。「考えるのではなく、感じることによって」ミラーニューロンは、社会の中で相互に依存する社会的な生き物として私たちが機能し、生き延びるための土台なのだとミシェルは言います。

このミラーニューロンについては、このブログで、何度も取り上げ、その機能、また、その反論などを紹介してきましたので、その役割については納得がいきます。また、生き延びるための土台が、社会の中で相互に依存する社会的生き物として機能することにあるということも、同意することができます。

人生の初期に、実行機能が十分に発達すると、子どもたちは望むとおりの人生を築く可能性が高まるとミシェルは言います。そうした子どもたちには、私たちが自分の愛する人には備わって欲しいと願うもののリストで当然高い順位を占めると思われる自己信念を築くための基盤ができています。この自己信念とは、自分には自制能力や問題解決能力があるという意識や、将来に対する楽観的な見通しといった、相互に関連した信念だと言います。このような恵まれた「資源」は、各自の自分についての信念であり、外部の評価でも、達成度や力量の客観的なテスト結果でもないことが、是非とも理解しておかなければならないとミシェルは言います。

ストレスのネガティブな作用が、本人がそのストレスをどう認識しているか次第であり、誘惑の影響が、本人がその誘惑をどう評価し、どう頭の中に思い描くか次第なのとちょうど同じで、私たちの能力や業績や将来の見通しがもたらしうる健康上の恩恵は、それらを私たちがどう解釈したり、評価したりするかにかかっていると言います。とても力量があるのに、ネガティブな自己評価を下し、身のすくむような自己疑念を抱いて、自らを害している人を、知っているでしょうから、そんな人のことを考えてみるといいとミシェルは提案します。自己についての信念は、力量や問題解決能力の客観的測定値と相関しているものの、その相関は、完全にはほど遠いとミシェルは考えています。

心理的にも生物的にも首尾よくやっていくためには、こうした信念が重要であることを裏付ける、目を見張るような証拠は、増える一方であると言います。健康心理学という分野の創始者で、カリフォルニア大学ロサンジェルス校の教授であるシェリー・テイラーが率いるチームは、自己効力感や楽観的な期待があれば、ストレスの有毒な影響を和らげ、健康に関連した、望ましい神経生理学的・心理的な結果を多く招くのが見込まれることを証明したのです。