実行機能と想像力

未就学児は、マシュマロ実験や、母親が部屋を出て行ってしまうテストのようなホットシステムにかかわる課題に直面したとき、実行機能を必要とします。しかし、見たところクールな課題にも実行機能が必要な場合があるようです。たとえば、学校で算数を学ぶといった一見クールな課題も、失敗を恐れる気持ちや、うまく出来ないのではないかという不安が、ホットシステムを活性化させます。その一方で、クールシステムを弱めたときには、ホットなものにあっさり変わり、ストレスを増し、学習を妨げかねないと言います。

また、ある人にとっては、ホットな課題も、別の人にはクールな課題となることもあります。ある種の課題には、優れた実行機能を持っていながら、別の種類の課題はもっと難しく感じる人もいると言われています。たとえば、教室という場面では、優秀なのに、対人関係でホットな情動を引き起こされたときには、手の付けられないかんしゃく持ちに変わる子どももいるようです。それとは逆のパターンを示す人もいて、こういう人は対人関係ではクールなのですが、集中力や的を絞った努力が必要とされる学校という場面では、ストレスを覚え、認知的なコントロールが出来ないのです。

就学前に実行機能を十分発達させる子どもは、ホットな本能的誘惑が引き起こすストレスや葛藤に対処しやすいようです。それと同じスキルが、読み書き計算を習うときにも日頃から役に立つそうです。逆に、実行機能が十分発達していない未就学児は、学校時代を通して、ADHDをはじめ、さまざまな学習上の問題や情動的問題に直面する危険が高まると言われています。しかも、ミシェルによると、最近は、残念ながらこのような未就学児が多すぎるようです。

実行機能は、私たちに、自分の志向や感情を認知的にコントロールすることを求めますので、創造的なプロセスや想像力に富んだプロセスの正反対と思われやすいようです。しかし、実際には、幼い頃の「ごっこ遊び」を含め、想像力と創造活動の発達に不可欠なもののようです。実行機能のおかげで、私たちは目の前の状況や「今、ここ」という世界から抜け出して、現実の枠を超えて考えたり空想したり、不可能なことを想像できたりできます。そして、実行機能は、想像を容易にすることで、柔軟で適応性のある自制心の発達を促します。実行機能は、他者の心や感情を理解する能力とも強く結びついており、子どもが、触れ合う相手の意図を推測したり、反応を予測したりするための、いわゆる「心の理論」を発達させるのを助けるということが分っています。

私は、20101128日のブログで、はじめて「心の理論」について書きました。そこでは、「心の理論」とは、「洗練されたミラーニューロンによって、ある行動の予測をするという仮想現実のシュミュレーションを行うことができ、極めて社会的な生活を送れるようになります。ということは、人間が社会を構成することができる生き物であるということは、他人の心を推し量れる能力があるということであり、逆にそのような力が備わっていないと社会は構成しにくくなるということのようです。この能力は“心の理論”と呼ばれ、ヒトしか洗練されていないようです。」と説明しています。実行機能が、この「心の理論」を発達させるのを助けるということから、なんだか結びついた気がしました。

さらに、ミシェルは、「私たちの心の理論は、ジャコモ・リゾラッティがサルで発見したミラーニューロンに関係しているかもしれない。」と言っています。ミラーニューロンに言及しています。