展開の仕方

誘惑に直面したときに、自制心を働かせられるようにする心のメカニズムは、悲嘆や対人関係で拒絶されたときの痛手など、不快な情動を調整したり、「冷却」したりする上でも不可欠の役割を果たします。それは、バラ色のめがねを通して、自分を眺めさせてくれ、鬱を寄せ付けないと言われています。このめがねを外すと、鬱になる危険性が高まってしまいますが、逆に、四六時中かけていると、錯覚に基づいた楽観に陥り、やたらに危険を冒す羽目になります。しかし、クールシステムを使い、バラ色のめがねが起こすゆがみを監視して正せば、傲慢にならずに済み、自信過剰がもたらす危難の一部を避けられるかもしれないと言います。

私たちは、心理的な免疫系の恩恵にあずかることが出来るというのです。この免疫系は、私たちが、ひどい気分になるのを防ぎ、自分の人生では自分が主体者であり、力をふるっているという感覚を育み、楽観的な見通しを持つことを可能にして、それによりストレスを減らし、心身の健康を維持するのだとミシェルは言います。このことは、保育をやる上でも、とても参考になります。保育の中でも、このクールシステムが効果的に機能するような環境を考えていかなければなりません。以前のブログでも書きましたが、どうもホットシステムに対してばかり気を使ってきたような気がします。ミシェルは、そのために次の課題の一つとして、これらのプロセスが、どう展開するのかや、クールシステムによって、どのようにそれを利用し、人生をいっそう良いものに出来るかを考察しています。

ミシェルによると、西洋では、人の特質や本質を考えるとき、自制や、欲求充足を先延ばしにする能力は、個人の一貫した特徴であり、さまざまな場面や状況で行動に反映されるというのが、昔から前提になっていたそうです。ですから、有名な指導者や芸能人、社会の柱石の人生の隠れた一面が暴かれ、判断と自制のとんでもない誤りと思える行状が明らかになるたびに、マスメディアは大きな衝撃と驚きを示していると言います。確かに、最近日本でもマスメディアではおおいに賑わせています。そのニュースを聞くたびに、自制心が弱いのだなあと思います。それは、EQ力でもあると言われています。その力の説明に、「衝動をコントロールし、快楽を我慢できる能力」とあります。このEQ力に優れていることが、社会で成功すると言われているわけですから、逆に社会で成功している人たちは、これらの力に優れているのではないかと思えます。多くの状況で、マシュマロを手に入れるのを待ち、欲求充足を先延ばしにできてしかるべきで、そうでなければ、そもそもそこまで成功を収められたはずはないと考えます。

しかし、それなのになぜ、菓子恋うはずの人々に足下にすくわれるのかとミシェルは考えます。それを理解するために、様々なときに、さまざまな状況で、彼らの言葉だけでなく、行動を注意深く眺めようとしました。誠実さや正直さ、攻撃性、社交性といった特性はそれぞれ、一貫した表れ方をするようです。しかし、それは特定の種類の状況下にだけ当てはまる一貫性だそうです。たとえば、Aさんは、職場ではいつも誠実ですが、家庭ではそうではない。Bさんは、親しい友人といるときには温かく愛想が良いのですが、大きなパーティーではそうではない。ある知事は、州の予算を扱っているときには、信頼できますが、魅力的なアシスタントに囲まれているときには、そうではない、といった具合だと言います。

したがって、私たちは、人が将来しそうなことを理解したり、予想したりしたければ、その人がどういう状況で誠実だったり、愛想が良かったりするか、あるいはそうではないかを見てみる必要があるとミシェルは言います。