自己調整

誕生後の1年間に、前頭前皮質は、自制と自発的変化に不可欠なかたちで発達を始めます。そして、おおむね3歳から7歳のあいだに、この発達のおかげで、子どもたちは、目標をより効果的に追求するために、注意を移したり、集中したり、情動を適応性のあるかたちで調整したり、望ましくない反応を抑制したりする能力を次第に高めていきます。幼少期における脳機能の発達を示したこんなグラフがあります。出展 : Graph developed by Council for Early Child Development (ref : Nosh,1997;Early Years Study,1999;Shonkoff,2000)出展 : Graph developed by Council for Early Child Development (ref : Nosh,1997;Early Years Study,1999;Shonkoff,2000)

 その中で一番早く発達のピークを迎えるものが、emotional controlとあります。まさに、感情をコントロールする力である自己抑制力の発達を表わしているのです。

こうした変化によって、子どもは年齢が上がるにつれ、自分の感情や反応を調整したり、あらかじめ組み込まれているもののなすがままにならずに、その現われ方を修正したりし始められるというのです。持って生まれた傾向の発現の仕方を変えるように自己調整するこの能力は、内気さの研究の第1人者で、ハーバード大学の発達心理学者であるジェローム・ケーガンは、こんな逸話を紹介しています。

 彼の孫娘が保育園児で、内気さを克服しようと奮闘していたときに、彼女は内気にならない練習が出来るように、自分のことを知らないふりをしてくれとケーガンに頼んだそうです。そして、やがてそれが功を奏しました。ケーガンが以前に行なった研究から明らかになっていたとおり、内気さのような傾向は遺伝的ルーツを持っているものの、変えることが出来るというものです。就学前に良い経験を重ね、保護者が自分を律して過保護にならないようにできれば、内気な子どもがあまり引っ込み思案でなくなるのを助けられるというのです。ケーガンの孫娘は、内気さの研究の権威に、子ども自身が自らの発育における積極的な主体者となって、さまざまな戦略を使い、人生で自分の気質がどう発現するかを、変えうることを示したのです。

 この研究からも大切なことが見えてきます。子どもは、生まれながら持っている気質を、年齢が上がるにつれ、自分の感情や反応を調整したり、あらかじめ組み込まれているもののなすがままにならずに、その現われ方を修正したりしていきます。この持って生まれた傾向の発現の仕方を変えるように自己調整するこの能力は、大人が自分を律し、過保護にならないようにする必要があり、子ども自身が、自らの発育における積極的な主体となることが必要なようです。それによって、生まれつきだとあきらめずに、望ましい気質が発現するようにできるのです。

 いろいろな研究に、人間を実験に使うことはできませんので、さまざまな動物を使います。その多くは、人類に近いと言われている霊長類です。しかし、人間に近い分だけ、体を酷使するような実験はできません。そこで、そのときにはマウスを使います。マウスというと、なんだか実験を思い出しますが、先日、職員のあいだで、ちょうど「ネズミ」について話をしました。私が子どもだった頃は、住んでいたのは下町でしたが、身の回りにネズミがたくさんいました。朝起きると、前の日に掛けたネズミ取りにかかったネズミを始末することろから始まりました。このように、ねずみは、家庭では長い間、避けられ、駆除されてきました。しかし、なんと、このマウスは、生まれと育ちの役割に関する実験の対象として人気があるそうです。