行動の原因

1974年に、ミシェルは学生たちとスタンフォード大学で、未就学児が自分の行動の原因を、どう認識しているのかを評価する基準を開発しました。まず、彼らにこんな質問をしてみました。「クレヨンを折らずに、絵をまる1枚描ききったときには、それはあなたがとても注意深かったからですか?それとも、良いクレヨンだったからですか?」「誰かがプレゼントを持ってきてくれたときには、それはあなたが良い子だったからですか?それとも。その人がほかの人にプレゼントをあげるのが好きだからですか?」

このような質問をした後、ミシェルらは、こうした質問に対する子どもたちの回答が、彼らの行動をどう結びついているかを検証したのです。その際に、評価する行動も、自制を必要とする別の状況でのものとしたのです。この研究の結論は、自分の行動によって、結果はコントロールできるという未就学児の信念でさえ、彼らがどれだけ一生懸命試みるかや、どれだけ長くがんばり続けるかや、自制がどれだけ得意かとかなり関連していたそうです。自分がポジティブな結果の原因であると見なす度合いの大きい子どもほど、マシュマロ実験で欲求充足を先延ばしにしたり、自分の衝動的な傾向をコントロールしたり、望んでいる結果に行き着くために、自分の行動が役に立つさまざまな状況で、粘り強く取り組んだりする可能性が高かったそうです。彼らは、自分たちにはそれができると信じており、実際にそれをやってのけたのです。

 自分はできる、努力できるし、粘り強く取り組めるし、ポジティブな結果を生み出す行為者たり得る子どもの自己認識は、成功を助ける自制スキルによって、育まれるようです。スタンフォード大学のサプライズ・ルームで、首尾よく待って、手に入れたお菓子をただ食べてしまわずに、自分が勝ち取ったものを親に見せたがり、かばんにしまって家に持ち帰ることを選んだ、一部の未就学児たちのプライドに満ちた振る舞いに、それが見て取れたそうです。幼い頃に、より効果的に待って、より多くのお菓子をもらうためにがんばれるほど、また、そうした成功を可能にする、認知的スキルや情動的スキルが優れているほど、「そう、私にはできる!」という感覚を伸ばし、新たな、より困難な課題に立ち向かう準備が出来るということがわかりました。

 やがて、自分には物事をやってのける力があると自覚する経験と、新たに身につけるスキルそのものが、報酬となり、その活動自体から満足が得られるようになると言います。ミシェルは、こんな例を挙げています。「バイオリンの弾き方を習う」とか、「レゴで一大帝国を作る」とか、新しいコンピューターのアプリケーションを発明する」などを身につけるスキルそのものが、報酬となり、その活動自体から満足を得られるようにあります。保育という仕事は、まさにこのような満足が得られる可能性が高い職業のような気がします。

 子どもの自己効力感や、主体性の感覚は、成功経験に根ざしたものとなり、現実に基づく楽天的な見通しと抱負につながり、一回成功するごとに、次の可能性が高まるというのです。このときの「楽天的な見通し」とは、楽観であり、最良の結果を予想する傾向を言います。心理学者は、人が自分の将来に対して好都合な見通しを持つ程度というふうに定義しますが、それは、本人が本当に起こると信じている見通しで、「できると思う!」というマインドセットと密接に結びついていると言うのです。

行動の原因” への15件のコメント

  1. 「彼らは、自分たちにはそれができると信じており、実際にそれをやってのけたのです」という言葉が印象的でした。そう思っているからこそ、粘り強く取り組めることができるのですね。実際にできるか、そうでないかではなく、それに取り組む姿勢がいかに大切であるかということを感じます。「自分はできる、努力できるし、粘り強く取り組めるし、ポジティブな結果を生み出す行為者たり得る子どもの自己認識は、成功を助ける自制スキルによって、育まれるようです」ということからも自制スキルを発達させた子どもたちがいかに困難に対応できる力を獲得していくかというこが分かります。自制スキルは結果として人を幸せと導いてくれるのかもしれませんね。身につけるスキルそのものが報酬になり、その活動そのものから満足を得られるようになるというのはいいですね。できる、できないではなく、そのことそのものを楽しみながら、やってみて、深めていけるのが保育なのかもしれませんね。そんなふうに働いていきたいですね。

  2. 欲求を先延ばしにし、見事マシュマロを手に入れることができた一部の子どもがとった行動として、「手に入れたお菓子をただ食べてしまわずに、自分が勝ち取ったものを親に見せたがり、かばんにしまって家に持ち帰ることを選んだ」とあり、欲求を先延ばしにした、また先の予想が出来ていることが理解できます。自分の行動を自制できたことを報告することで、さらに自分への可能性を感じる機会に、また親からの言葉によって次なる成功の見通しなどが生まれそうです。そして、何よりも「自分には物事をやってのける力があると自覚する経験と、新たに身につけるスキルそのものが、報酬となり、その活動自体から満足が得られるようになる」ということで、経験が報酬という、実行に移すことで満足を得たり自制が強くなったりとする最高の成功体験への循環であると感じました。経験が報酬という人生に憧れますね。

  3.  〝子どもの自己効力感や、主体性の感覚は、成功経験に根ざしたものとなり、現実に基づく楽天的な見通しと抱負につながり、一回成功するごとに、次の可能性が高まるというのです。〟子どもを褒めて伸ばそう、とか、色んな知識を教え込むような認知型の保育、などが、子どもにフィットしない理由がこういったところにあるように思えてきます。子どもの成功経験とは、その子自身が得るものであり、やはり、そういったことを感じられる環境を多分に用意すること、そこに保育者の仕事があるように感じます。
     そして、〝このときの「楽天的な見通し」とは、楽観であり、最良の結果を予想する傾向を言います。心理学者は、人が自分の将来に対して好都合な見通しを持つ程度というふうに定義しますが、それは、本人が本当に起こると信じている見通しで、「できると思う!」というマインドセットと密接に結びついていると言うのです。〟脳は自分が思い描いた通りのものを引き寄せると言いますが、子ども達の成功体験もそこに根ざしたものがあるとすれば、ネガティブなイメージを作り出すより、何事に対してもポジティブなイメージを持てるこの方が、物事に対して自信をもって取り組めるようです。藤森先生のオプティミストの連載を思い出します。子ども達に、安心して想像力を働かせられるような環境を、提案し続けていきたいです。

  4. ブログの内容とは直接関係のないコメントです。ゴールドマン、セリグマン、ダイアモンド、そして今回のミシェル氏らの研究を当ブログでは縷々紹介してきました。単純に思っていることは、日本の研究者はこの人たちと同等の研究成果を世界に問うているのだろうか、ということです。もしかしたら、私が浅学だから知らないだけなのか。保育についてもそうですね。日本の学者の皆さんが取り上げるのは、欧米の保育事例や日本の過去の保育理論止まりです。現在の日本の就学前の子どもたちを観察することから一体どのような環境設定が日本の子どもたちの将来のためにふさわしいのか、その具体的な提案が出てこないような気がするのです。今回のブログ冒頭で紹介された「クレヨンを折らずに、絵をまる1枚描ききったときには、それはあなたがとても注意深かったからですか?それとも、良いクレヨンだったからですか?」という問いかけに象徴されるような研究手法とその成果のようなものが日本でも行われ、発表されて、現場に影響を及ぼしているのか。こうした点を今後注意深く観察していきたいものです。

  5. 〝手に入れたお菓子をただ食べてしまわずに、自分が勝ち取ったものを親に見せたがり、かばんにしまって家に持ち帰ることを選んだ〟とあり、欲求を先に延ばし、お菓子を手に入れた子どもたちが見せたこの行動が印象的です。
    彼らは、先延ばしして手に入れたお菓子を食べるだけでなく、それから先の見通しをもって親に見せたり、カバンに入れて持ち帰ることにしていると思います。
    そして、お菓子を見た親からの言葉や、家に持って帰ったことの満足感が、新たな『できると思う!』という気持ちを生んで、相乗効果をもたらしているように感じます。
    このようなことが感じとれる保育という仕事、まさに〝満足が得られる可能性が高い職業〟ですね。

  6. 「行動の内部コントロールvs外部コントロール」において、内部をより高く評価した子の方が「欲求充足を先延ばしにしたり、自分の衝動的な傾向をコントロールしたり、望んでいる結果に行き着くために、自分の行動が役に立つさまざまな状況で、粘り強く取り組んだりする可能性が高かった」のですね。内部をしっかりと評価するには、ありのままの自分を受け入れる「自尊心」が必要だと感じました。その上で「自分にはできる!」と信じ、行動に移していくことの大切さが伝わってきます。しかし、少し意味が違うかもしれませんし、若者というと自分も含まれているようで少し怖いのですが、近年の若者は、自分に酔ってしまう「ナルシスト」が多くなってきたと聞いたことがあります。何事も適度さが大切だとも思えましたし、外部の評価も少なからず必要であるのかなとも思えました。

  7.  自制スキルによって成功率は高くなることを学びました。成功を重ねる程、自己効力感も高くなります。次第に成長すること自体が目的となり、より積極的に挑戦する様になるというプラスのスパイラルです。その起点が自制スキルであることはとても大切だと思います。楽天的な見通しは高い自己効力感と結びついており、もっと言えば楽観は自制スキルと結びついているとも言えると思います。実行機能、信念、拡張的知能観そのどれもが繋がっていて、ベースには冷却スキルがあることに改めて驚いています。

  8. 初めの質問が非常に面白いですね。その回答で結果のコントロール、一生懸命やれるか、長続きするか、自制が得意かとまでわかるのですね。初めに読んだ時、大人だと色々考えてしまうような傾向にありますが、子どもの直感の回答はまさに現在の自分を表しているのでしょうね。欲求を先延ばしにし、見事お菓子を手に入れた子がそこから食べるのではなく、親に見せたり、カバンにしまって持ち帰るというさらに先まで「楽観の見通し」を持ち、行動している姿というのを考えると「自分はできる!」という満足感をさらに高められ、満足感の循環をそこで行っているような印象を受けます。「活動自体から満足が得られるようになる」まさに保育の中で行われていることですね。そのような活動ができる環境があり成功する自信をつけることで大切であることがわかります。

  9. 「保育という仕事は、まさにこのような満足が得られる可能性が高い職業のような気がします」この言葉を聞いて、本当にその通りだと心から思いました。子ども達が日々活動の中で色々なことに挑戦し失敗と成功の繰り返しの中で色々な事を学んでいます。例えば運動遊びで跳び箱がなかなか飛べなかった子どもが練習をして飛ぶことができた時の顔は嬉しさを通り越して、「えっ!?できたの!?」という顔をするのがほとんどです。運動以外にも製作やパズル、ゲームなど成功体験は色々あると思いますが、そうなるとやはり成功体験をたくさんできる環境が重要になってきます。またここで勘違いしてはいけないのは、子どもが自発的に取り組み、そして成功につながる事が重要だと思います。

  10. “ポジティブな結果を生み出す行為者たり得る子どもの自己認識は、成功を助ける自制スキルによって、育まれる”とあることから、楽観的に考えることができるような子どもたちへの楽天的な見通しが必要、成長の道となることがわかります。現代社会のなかで、社会に出ると苦労をしている姿、また、やりがいもなく生活する姿、例えばなのですが、こういった姿というものは、子どもが先を見通す上で、将来に対する悲観的な要素になりかねないと思います。子どもたちがいかにポジティブに自分はできる、努力できるし、粘り強く取り組めると思えるようなモチベーションであったり、自己信念としてもてるようにするのは、先に生きるわたしたちの役目だと思います。

  11. 私は根拠のない自信というものが好きです。人によっては説得力もなく、どこからその自信が生まれてくるのかと疑われたり、不安に思われてしまうこともあります。しかし、それは自分にはできるというポジティブな見通しと強い信念があるからこそのものではないでしょうか。困難に直面したり、高い目標に向かって挑んでいくときこそ、自分自身を信じるということが必要となってくる気がします。最近、自分の想い描く将来の展望について、時折不安に襲われてしまうこともあるため、特にそれを感じています。「自分はできる、努力できるし、粘り強く取り組めるし、ポジティブな結果を生み出す行為者たり得る子どもの自己認識は、成功を助ける自制スキルによって、育まれるようです」とあるように、自分はできるという強い信念とそれをイメージできる自己認識の形成のためにも自制スキルの役割の大きさを感じています。

  12. 「自分はできる、努力できるし、粘り強く取り組めるし、ポジティブな結果を生み出す行為者たり得る子どもの自己認識は、成功を助ける自制スキルによって、育まれるようです」とありましたが、この幼児期に積まなければいけないことは成功体験なのではないかと思います。好きこそものの上手なれという言葉を思い出しましたが、どんな体験の入り口も”好き”興味”関心”から入る必要があり、好きだからこそ努力をしたい、努力をする必要があると子ども自身も理解できると思います。きっとその子は努力を努力だと思っておらず、ただ楽しんでいるとは思いますが。藤森先生の講演で、「子どもは自ら環境に働きかけることで発達する。この”自ら”が大事」ということを仰っていましたが、子どもの「自ら」という言葉にこだわり、成功体験を積み自信へとつなげていけるような環境作りにこだわりたいと思います。

  13. なかなか書くことができませんが、日々ブログを読み、新しい視点を持てることは本当にありがたく思っています。今回のクレヨンの話も、また保育の中で、子どもたちを興味深く観察してしまう一つの要因になると思います。自らを自制できるスキルがあることは、子どもたちの「できる」という自己認識を育ててくれる。とても難しい表現でもありますが、見守る保育の、基本の一つでもあるような気がします。子どもたちのできるを信じて見守ってあげることは大切ですね。

  14. 「自分には物事をやってのける力があると自覚する経験と、新たに身につけるスキルそのものが、報酬となり、その活動自体から満足が得られるようになると言います。」このことこそがよく保育の中で出てくる「内発的動機付け」であり、保育者もこのことを子どもたちが持てるように保育をしているのですね。マシュマロ実験の内容になってから、私が専門学校で習ってきたことが現実的に子どもの環境を考えるうえで取り入れる内容が具体的に出てきているように思います。そして、その反面、実際の保育現場ではそのことについて、まだまだ、無知で結果として、現実味を帯びている内容だと捉えられていないことも多くあり、その理論と現場がリンクせずに差があることにとてもショックを受けています。
    内容を受けて、どう現場におろしていくことができるか、現場の視点として、どう見ていくことが必要なのか。一つ一つが課題で、問題で、悩むところです。

  15. 「自分はできる、努力できるし、粘り強く取り組めるし、ポジティブな結果を生み出す行為者たり得る子どもの自己認識は、成功を助ける自制スキルによって、育まれるようです」とありましたが、本当にそうですね。私も小さい頃に自分には今以上に全く自信がなく褒められたり、やらされた上で何とか達成でき、自分の中で「これならできそう」と思える事が自身に繋がっていったような気がします。過去に母親からみそ汁作りを命じられ、それを「美味しい」と言いながら食べてくれた父親の影響があり今調理師をやっていると思うと「子どもの自己効力感や、主体性の感覚は、成功経験に根ざしたものとなり、現実に基づく楽天的な見通しと抱負につながり、一回成功するごとに、次の可能性が高まるというのです。」といった言葉が自分のことのように思います。

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