冷却するこつ

 よく、保育で「心情・意欲・態度」ということが言われます。保育所保育指針には、「子どもの発達は、子どもがそれまでの体験を基にして、環境に働きかけ、環境との相互作用を通して、豊かな心情、意欲及び態度を身に付け、新たな能力を獲得していく過程である。」と書かれてあります。発達というのは、豊かな心情、意欲、態度をみにつけることで、新たな能力を獲得していく過程であると定義しています。また、幼稚園教育要領には、「ねらいは, 幼稚園修了までに育つことが期待される生きる力の基礎となる心情, 意欲, 態度などであり,」と書かれています。これによると、ねらいを達成するために指導する事項が保育の内容であるとしています。

そこで、園現場では、子どもたちに自ら取り組むための心情、意欲、態度をどのように身につけるか、活動するかを考えます。また、子どもたちが、活動の中でいかに意欲を持ち、進んで行ない、その活動に熱中するかを計画します。しかし、園では、1日中子どもが意欲を持って、熱中できるわけではありません。なぜなら、どうしても昼食を時間が来たら食べなければなりませんし、ある時間になると片付けなければならない場面が出てきます。しかし、子どもたちはその活動に熱中すればするほど、その活動を中断しようとはしませんし、片付けようとはしません。では、心情を生み、意欲を育て、物事に取組む態度を付けることはできても、それをどのように止めさせればいいのかは、保育指針にも、教育要領にも書いてありません。ホットな刺激をクールダウンさせる必要があるのです。そのときのヒントが、マシュマロ実験の考察にはある気がします。

ミシェルは、マシュマロ事件を行なってみて、頭の中でどう刺激を表象するかを変えられれば、自制心を発揮し、私たちの行動をコントロールするまでになったホットな刺激の犠牲者という立場を脱せると確信したようです。彼は、ホットで魅力的な刺激を一変させ、認知的な再評価によって刺激の影響を「冷却」することができると言うのです。少なくとも、時折、特定の条件下では、そのこつは、条件を整えることになると考えます。歯を食いしばり、スパルタ式の難行苦行に耐えて自らを鍛え上げ、痛みをこらえる必要はありませんが、強い動機付けと最善の意図だけでは足りないと考えています。

必要な力は、前頭前皮質にあり、この皮質を活性化させれば、評価の仕方を変えて、ホットで魅力的な刺激を「冷却」する、ほとんど無尽蔵の方法を実現可能にしてくれます。前頭葉がまだ発達していない未就学児たちでさえ、おおいに創造力を活用し、素晴らしいお手本を見せてくれたのです。彼らは、自分が直面した誘惑を「ただの写真」に変え、頭の中で額縁に収めたのです。自作の歌を歌ったり、足の指で遊んだりして、自らの気をそらすことで、誘惑から自分の注意を完全によそに向けたのです。

あるいは、刺激の認識を変え、ホットで衝動を引き起こす特徴ではなく、クールで情報を提供してくれる特徴に、意識を集中しました。マシュマロをもっちりしたおいしいごちそうと考える代わりに、宙に浮かぶ、ふっくらした雲に変えてしまった子どもは、ミシェルと一緒に実験に当たった大学院生たちが、これ以上我慢できなくなるまで、お菓子を目の前にしたままじっと座っていることがたびたびあったそうです。