チンパンジーは、「フェアな獲物の分配を伴うゴールの共有」ということを示していると思われていましたが、最近の研究では、そうではないことを示しているそうです。
それは、第1に、獲物を仕留めたチンパンジーはすぐに、できることなら獲物と一緒に仕留めた場所から雲隠れするか、梢の橋まで登って、他のチンパンジーの接近を制限して仲間を避けようとするそうです。すなわち、とっさに独り占めしようとするのです。しかし、多くの場合、独り占めは成功しません。肉を引っ張って分配を求める個体に囲まれてしまうことになるのです。獲物の所有者は、要求者がいくぶんかの肉を得るのをたいていは認めてしまいます。
その行為を研究者が調べてみたところ、要求や嫌がらせに対する直接の反応としてこのような寛容が起こることが分かりました。要求者は、要求や嫌がらせをすればするほど、より多くの食物を得ているようなのです。嫌がらせの激しさは、それを行なう個体がどの程度本気で戦うつもりなのかの指標であり、この戦う意思は、少なくとも部分的には、狩りに参加したことによる興奮からもたらされていると考えられます。
獲物を仕留めることに参加したものが、多く分配を受けるのは、参加したためにその報酬として多くとるのではなく、参加したことによる興奮が、激しい要求として分配を多く受けるというのです。そうなると、仕留め損ねた狩猟者ですら、後から来た個体よりは多くの肉を得られる可能性があるということになります。狩りに参加していた狩猟者たちは最初に獲物に接し、物乞いを行えるけれど、後で来た個体たちは、第2陣に甘んじることになるからです。
チンパンジーの集団狩猟に関するこういった見解を、以前、ブログで紹介した2本のロープを同時に引かないと、食べ物を手元に引き寄せられないようにした実験の結果が後押しをしていると考えられます。つまり、ひとやまにした食物のときには協力をしないという結果だったことです。一般的にチンパンジーは食物に関して、競合的であるため、彼らが行為を同期させられるのは、獲物の分配問題がなんらかの形で、解消に向かう場合に限られてしまうのです。
このような行為は、人間に最も近く、より協力的であると言われているボルボでさえ、それほど大きな差は出ないのです。それが、ヒトの子どもの場合は、食物が凝集しているからといって協力行動が妨げられることは全くなかったそうです。それどころか、彼らは、小競り合いすら起こさずに等分するために様々な手段を講じるのです。しかも、この実験の子ども同士の関係には兄弟はいなかったそうです。
そして、興味深いことに、このような中で子どもたちは互いに、公平性を巡って異議を申し立て合うことがあるそうです。実験した中で、一人の女の子が、パートナーと一緒に引き寄せたキャンディーを独り占めしてしまったことがあったそうです。しかし、キャンディーがもらえなかった子は、異議を申し立て、欲をかいた方の子はすぐに折れることになったと言います。二人とも同じだけ分け前を手にした時には、異議申し立てをするのを見たことがなかったそうです。