ハンズ・オン

 私たちは、保育のあり方として象徴的に「見守る」という言葉を使いますが、この言葉は精神的な意味もあり、英語に訳すときには適当な言葉が見つかりません。それは、英語の日本語にするときにも同じようなことが言えるのですが、やはり、その概念が生まれた祖奥に出ないと、適切な訳語がないものです。そこで「MIMAMORU」とそのまま使うのですが、実は、科学における教師のあり方の提案の中に、この「見守る」と同じようなスタンスを表わす説明が「Science Experiences for the Childhood Years」の中にこう書かれてあります。「子どもたちが体験する(ハンズ・オン)ということは、できる限り教師は手を貸さない(ハンズ・オフ)ということも意味します。」以前のブログで、ファーストハンドという直接に体験するという考え方を書きましたが、このハンズ・オンも、体験型の学習方法のひとつです。実際に手で触れるなどの体験を通じて、より理解を深めることを目的とする考え方です。

 すこし、話はそれますが、20125月のダイヤモンドオンラインに、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授である楠木建さんが、「ハンズ・オンのリーダー像」ということを書いていました。「ハンズ・オン」と「ハンズ・オフ」について、経営者としてのあり方からヒントを得てみたいと思います。

「ハンズ・オン」という言葉を、1992年のジョージ・ブッシュが、大統領選挙演説でやたらと”hands-on”という言葉を連発していたと言います。奥座敷に引っこんでないで自ら現場に出る、自分の手でやる、ハンズ・オンというのは古今東西の優れたリーダー、経営者の重要な条件の一つでした。例えば、グーグルのCEOであったエリック・シュミットさんも徹底的にハンズ・オンの人で、彼が日本に来たときに、日本の事業や経営環境のことをとにかくよく勉強していて、本質的な具体的な質問を次から次へと繰り出したそうです。そして、帰りの飛行機の中ですぐに自分で詳細な出張記録を書き、オフィスに戻ってきたときにはすでにレポートができていて、たちどころに指示が飛んで実行に移したというような案配を行ったそうです。

 これは、他の指導者にも言えることで、GEのジャック・ウェルチさんも、そうであったそうです。一社員にしてみればCEOといえば雲の上の人で、直接やり取りする機会はまるでありません。ところがCEOであったジャックさんは、直接議論を持ちかけてくる。話を真剣に聞いてくれる。CEOとの距離感がまるで違ったそうです。「何枚もセーターを着て家の中にいると、外の寒さが分からない。寒さを肌で感じないと経営はできない」というウェルチさんも、やたらにハンズ・オンの経営者だったそうです。

このように優れた経営者にはハンズ・オンの人が多いようです。現実の現場にある現象や現物を自分の眼で見る。問題を自分の手で触って知る。社員や取引先、顧客、株主といったステイクホルダーの前に自ら出る。自らの戦略構想を自分の言葉で直接語りかける。社員や株主へのメッセージは自分で書く。メールが来ればすぐに自分で返事をする。というような経営者が優れた経営者であると楠木さんは言います。優れた経営者はなぜハンズ・オンなのかということにこう書いています。「理由は単純明快、自分の事業に対してオーナーシップがあるからに違いない。オーナー経営者(会社の所有権をもっている)かどうかの問題ではない。“俺がこの事業をしている!”というメンタリティー、気構えの問題だ。商売が自分事であれば、自分の眼で見て、自分の手で触り、自分の頭で考え、自分の言葉でコミュニケーションしたくなる。当然の成り行きだ。」と書いているのです。

ハンズ・オン” への16件のコメント

  1. ハンズと聞いて「東急ハンズ」が真っ先に浮かんできました。自分の手を使って修理したり、おもしろ雑貨があるあのお店の意味もまたそんなところからきいているのですかね。
    本を読むと「なるほど。よし、自分も実践してみよう」と思うことが多々あるのですが、ちょっと意識しないと直ぐにそのことを忘れてしまったり、本そのものもただ読んで終わっただけということになってしまうことがあります。ただ本を読むインプットだけではなく、アウトプットが大切と言われますが、「ハンズ・オン」はそんな「アウトプット」に繋がることでもあるのでしょうか。話し合いなどで「やってみたいこと」「やるときめたこと」の話は盛り上がり楽しいのですが、やはり一番大切なのは実際にやることですね。これは動きが伴うので、ちょっと手間がかかるのは間違いないのですが、それをやることが楽しくなってくることが何より大切なのかもしれません。実際にやってみる、これもハンズ・オンなのでしょうか。私はどうもハンズ・オンをそのようなことだとばかりに解釈しています(してしまっています)。なにより、このブログで学んだことも読むだけではなく、ハンズ・オン精神で実践に活かしていかなければと思っています。

  2. 「見守る」は極めてハンズオンであり、それゆえ、見守る保育とは、これも極めて、ハンズオンです。ということは、「見守る保育」を理解しない園長さんは、実際ハンズオンしていないリーダーということが言えそうです。かつて、私は成り行きで「園長」になってしまった経験を持ちます。この経験からわかることは、なりゆきで「園長さん」になった方はもしかすると現場がわからないことになるかもしれません。そのことを反省して園長職を退き、今があります。私は物わかりがあまりいいほうではないので、これから10年以上勉強しないとわからないのかもしれません。それでも、やっていきたいのは、やはり「“俺がこの事業をしている!”」という実感を持ちたいからでしょう。役割がありますから、自分なりのハンズオンを意識して貢献していきたいと思います。ハンズオンの実現は、明確に、そして具体的に、現場で行われることを創造していく作業に他なりません。「自分の眼で見て、自分の手で触り、自分の頭で考え、自分の言葉でコミュニケーション」することに他なりませんね。

  3. 数日前のブログにあった「さわってみて」という展示コーナーのように、直接自分の手で触れて、その物を感じる過程がまさに「ハンズ・オン」と結びつきました。さっそくそのコーナーを作って子どもたちにこれまで見たこともないような物をそこに置き、その後の様子を観察したいと思います。また、本だけで学ぶより、実際に体験して行った方が学習効果が上がるという考えは、現場にいれば誰しもが感じていることであると思います。しかし、そのハンズ・オンを用意し、それを促すような工夫という一歩がなかなかできずに留まっている印象を受けます。大統領や会社のCEOなどが、ハンズ・オンの重要性をみんなに訴えかけるくらいのパンチある影響力が、国民や社員の勢いを加速させてくれますね。単純に、“積極性”が増すと思いますし、何よりも、自分の経験が積み重なっていくことに快感や、楽しさが感じられるのではとも感じました。人に何かを伝える時というのは、相手の話を又聞きしたものを伝えるよりも、自分の経験から学んだ話をする時の方が、イキイキ話せますし、言葉にも説得力が増すのだと思います。

  4.  このお話で興味深いのはオーナーシップはオーナー経営者かどうかとは関係がないという部分です。確かに、私はオーナー経営者ではありませんが、園長としてのオーナーシップは持ち合わせているつもりです。不出来ではありますが、’’俺がこの事業をしている!’’というメンタリティーで自分事として取り組んでいます。一般的にはそれを責任感とも呼ぶのかもしれません。そしてそのオーナーシップや責任感は誰かが授けるものではなく、その範囲を自分で決めることができます。例えば幕末の志士達は国の行く末にオーナーシップや責任感を持っていたでしょう。ガンジーはインドの独立に、マララ氏はパキスタンの女子教育にオーナーシップや責任感を持っていると言えます。その主体性の強さたるやいかほどかと思います。オーナーでなくとも、誰かに頼まれなくとも、オーナーシップや責任感は自分自身の主体性で担うことができるということです。私も乳幼児教育者の端くれとして一隅を照らしたいと願っています。

  5. ハンズ・オンとハンズ・オフの考え方を読んでいて、さて目指すべきなのはどんなタイプなんだろうと考えてしまいました。ハンズ・オンの方は、一見全て自分でやってしまって良くないというイメージを持ちがちですが、読んでいると少し違うようにも感じます。とにかく現場でおきていることを自分で見て、感じて、そして自分で考えるということでしょうか。そして、ハンズ・オフの方も決して悪いようにも思えず、任せっきりとかではなく、出るところと出ないところをわきまえているというか、とにかく勝手な解釈でそんな風に考えました。何を自分で知ることが必要なのか。そしてどこから自分の手から話して人に任せるのか。そのバランス感覚というかさじ加減というか、自分の役割をきちんと理解しておくことが必要だということなんでしょう。

  6.  最近はクラスのリーダーを任されている時、「このクラスの経営者は自分だ。」「藤森先生ならどうするだろう。」「あの人ならどうするだろう。」と、置き換えて考えてみたりしています。環境を設定し直してみたり、特定の子にあそびの提案をしてみたり、とにかく基本は笑顔で楽しく、と自分の頭の中で色々考えながらやるのがとても楽しいのです。現場を知らない園長先生の話を耳にすることがありますが、こういった子どもと直に接して初めて感じること、子どもと接している現場の職員と直に接して初めて感じること、つまり〝ハンズ・オン〟の精神なしに、血の通った保育園経営などできるものなのでしょうか。
     藤森先生は、このようなブログを通して、常に僕らコメンテーターにもハンズ・オンを実践して下さっています。それは、藤森先生に自分の気持ちを受け止めてもらっているという安心感です。僕だけではないと思うのですが、藤森先生と話す時は、このブログが土台となって会話が始まる気もしています。なので、例えば先生が長く出張に行かれていたとしても、会話の始まりにその出張期間分の隔たりがないのです。〝優れた経営者にはハンズ・オンの人が多いようです。現実の現場にある現象や現物を自分の眼で見る。問題を自分の手で触って知る。社員や取引先、顧客、株主といったステイクホルダーの前に自ら出る。自らの戦略構想を自分の言葉で直接語りかける。社員や株主へのメッセージは自分で書く。メールが来ればすぐに自分で返事をする。というような経営者が優れた経営者である〟ということですが、多くの素晴らしい経営者のことを指すと同時に、それは僕が言うまでもないことなのですが、藤森先生のことを言っていると思います。

  7. 間違った解釈かもしれませんが、ハンズオンと聞くと藤森先生を思い浮かべます。データや実験の結果からの話ではなく、保育園で実際の子ども達の姿を観察して、考察するしたことを講演等で聞くのでとても素直に頭に入ってきます。私自身はハンズ・オン、ハンズ・オフどっちのだろうと考えたときに悩んでしまいます。職員を信じて任せる部分と、実際に見て感じた部分に直接手を貸す部分、あえてどちかのタイプを目指すべきか。幼稚園の経営者として保育に携われることはとても楽しく感じます、もし、経営だけをして保育に携わらないのならやりがいも感じないと思います。私はすぐれた経営者にはなれないので、保育を楽しむことを目指したいと思います。

  8. ハンズ・オン、各事業者のトップにあたるひとが意識し、そして、意図的に実践している、子どもの姿を見て新たな発見、教科書などでは学べないものがあり、実際の子どもの姿を見ることが、子どものための環境構成にあたっても重要な点であることに近いものがありました。
    そして、「ハンズ・オンのリーダー像」という内容を読んだときに、藤森先生のお話を聞く中でも実際の子どもの姿を見て、子どもの育ちや保育者としての専門性などをお話されているのを思い出しました。藤森先生が、実際の子どもの姿を話されていることは、自分自身の目でみて体験されたこと、ハンズ・オンを藤森先生から感じました。
    実践に勝るものはないとは、まさにこの事だと思いました。

  9. 「自分の眼で見て、自分の手で触り、自分の頭で考え、自分の言葉でコミュニケーションしたくなる」とありましたが、優れた経営者に共通しているのはそのような行動力ではないかと感じました。決して人任せにするのではなく、直接自分で見て関わるということ、そして常に学ぶということを惜しまない、そんなトップの姿を間近で見たとしたら、その周りの人たちは刺激を受けないわけがありません。そういった影響を与えられるのも、ハンズ・オンのリーダーの資質ではないかと感じます。私の場合は何でもまずは試したい、触れたいと思ってしまうので、そういった意味ではハンズ・オンの状態にあるのかもしれませんが、それで終わるのではなく、そこからどうするべきか、何に繋げていくべきかをもっと考えるべきだと感じました。

  10. 優れたリーダーは優れた行動力を持ち合わせているんですね。
    子どもと同じように大人も主体的に行動することにより、より大きな成果が得られるものだと思います。
    自分が積極的に行動し、そこに結果がついてきてもついてこなくても、自信につながりますよね。優れたリーダーはそのように自信を自分の中に溜めこみ、そのリーダーシップを発揮してるのかもしれません。
    自分の目で見て、自分の手で触り、考え、自分の言葉でコミュニケーションするという積極性は、研修に自ら参加して、そのことをみんなにアウトプットするというのに近いものがあるのでは、と思いました。

  11. 「ハンズ・オン」自体は聞いたことはあるものの、詳しい概念は初めて知りました。優れた経営者には、ハンズ・オンの人が多いという実情にも頷けます。自分のこの後の人生がどこにむかおうとも、このハンズ・オンの概念に沿った人生にしていきたいものです。特にジャック・ウェルチさんの「何枚もセーターを着て家の中にいると、外の寒さが分からない。寒さを肌で感じないと経営はできない」には痺れました。最後にある通り、「“俺がこの事業をしている!”というメンタリティー、気構え」が大切だと思えました。私たちが日々の保育の中で子どもたちに自分でできると思ったことは自分でやろうとするといったチャレンジ精神を伝えていくのと同じく、伝える役割を担っている私たちこそチャレンジ精神に沿った実践をしていかなければなりません。辛いとき、上手くいかないときなど現状逃避してしまいがちですが、そんなときだからこそしっかり現状と向き合い、自分事として捉えていく必要性を感じました。

  12. 「見守る保育」はまさに保育における「ハンズ・オン」であるように思います。「ハンズ・オフ」(子どもの体験・様子を見守る)ことができるのは、その奥にある深い「ハンズ・オン」(環境の意図)があるからだと思います。そして、その根底にあるのは深い「理念」があるからではないでしょうか。そして、その思いがあるから「俺がこの事業をしている」という気構えが強く園の雰囲気にも影響しているように思います。自分は今の園でもちろんその気概をもってやっているつもりですが、文章を読んでいるとまだまだ、その気構えの脇の甘さを痛感します。まだまだ、勉強しなければいけないことが多いですね。

  13. 優れた人にハンズ・オンをする人が多いとあります。その例を読む限り、藤森先生が頭にすぐ浮かびました。その理由として藤森先生が園を案内されているのを職員が一緒に見ていました。その際感じたのは学生でも保育士でも園長先生であっても相手が誰であれちゃんと理念と保育環境を説明していたと感じたそうです。どんな人にもしっかりと伝えているのに大きさを感じます。また現場を知らない園長先生がいることに対して藤森先生は子どもたちがすごい作品を午前中に作った際に午後壊れてなくなった保育室を通りかかり、あれはどうしたの?と職員に聞いていました。午前中見かけなかったのにいつ見たのだろうと不思議に思うほどしっかりと現場を見てくださっています。その安心はまさに現場にいる保育者の安心へと繋がり、ハンズオンを実践しているからこそ生まれる職員との繋がりだと感じます。他に思いつくことがたくさんありますが…。このハンズオンという意識は私は非常に少ないと感じています。もっと意識する必要があると感じています。

  14. 「ハンズオン」いう言葉は何となく聞いたこともあるような気もします。子供たちが自ら体験するハンズ・オン、できる限り教師は手を貸さないハンズ・オフ。見守る保育がどう世界でとらえられるかということにあって、どう訳されるかは大切なことですね。本や、考えを世界の言葉に訳してもらって終わるのではなく、どう訳されているかしっかりと考える。まさに藤森先生自身がハンズオンなスタンスですね。
    私も自分の眼で見て、自分の手で触り、自分の頭で考え、自分の言葉でコミュニケーションすることを大切にしていきたいと思います。

  15. 教育はまさに「ハンズオン」の世界かもしれません。藤森先生がよく言われますが、いくら机上の上で子どもの姿を想像して、色々な本を読んで学んだところで、実際に目の前にいる子ども達の姿を見ないと保育、教育については語れないと思います。そういう意味で藤森先生はまさに「ハンズオン」ですね。 「自分の眼で見て、自分の手で触り、自分の頭で考え、自分の言葉でコミュニケーションしたくなる」常に藤森先生はこのスタンスです。だからこそ講演を聞いても分かりやすく、そして理想論でなく、まさに現場その物を言葉にしてくれます。おそらく、藤森先生の話を聞いてピンと来ない人は現場を知らない人かもしれません…。

  16. ジャック・ウェルチさんの例は読んでいると藤森先生がイメージされました。「直接議論を持ちかけてくる。話を真剣に聞いてくれる」というところは正にその通りですし、「面白そうだから、一緒にやってみよう」という職員に対する言葉がけなども、普通の園長やその辺の社長ではきっと言わないセリフだと思います。また、優れた経営者にはハンズ・オンの人が多く、「商売が自分事であれば、自分の眼で見て、自分の手で触り、自分の頭で考え、自分の言葉でコミュニケーションしたくなる。当然の成り行きだ。」とありましたが、主体的に活動している子どもも楽しんでいればオーナーシップと同じ状態になっているような気がします。

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