発展的な活動

 いくら子どもの心を分析しても、そこから次の保育が見えてこなければ意味がありません。私は、保育は、次々と子どもの発想に合わせて展開していくものではなく、発達を豊かに遂げさせるために、その発達を促すさまざまな観点からの環境を用意すべきだと思っています。それは、早く発達は遂げさせることでも、先を目指すことではなく、その時々が大切だからです。そのような環境を用意することは、私は「発展」と考えています。

 科学概念の学習における発展的な活動についても、いろいろと考えることが必要になります。その学習活動は、ガードナーが見出した多重知能のうちの複数の関連において行うことが重要です。それは、昨日のブログで紹介した「算数の活動」のほか、「音楽的な活動」は、私たちはあまり意識したことがないものでした。そこには、なぜ、本や学校が出現する前の何世紀もの間、人々を教育するのに歌や民謡が使われてきたかという答えのヒントにもなります。

 学習するうえで、音楽的知能と関連させることで、学びをよりやさしく、さらに長持ちさせることができると言われています。就学前の子どもたちにキーボードを使わせて、リズムやメロディーのパターンを訓練すると、時空間的な推論が向上すると言われています。時空間的な推論は、科学と数学の基礎です。最近の脳スキャニング研究によると、音楽が処理されるのは、短期記憶と長期記憶とを、感覚的、感情的、運動的に結び付ける部位であることが明らかにされています。そのため、私たち人間は、音楽に対して、感情的にも身体的にも、記憶したり反応したりしやすくなっているようなのです。それは、人類の長い進化の歴史からみてもいえるようです。

 つぎに、「書物や絵本」との関係です。私たちの園にも、絵本ゾーンに書物や絵本が置かれていますが、観察ゾーンには図鑑などが置かれていますし、自然散策のときには、図鑑を持っていくことがあります。それは、書物や絵本は、科学概念を、生き生きとした言葉やイメージと結び付けてくれるからです。また、比喩的な意味でも、物語としても科学概念を拡張させてくれます。物語の中に科学概念が偶然含まれているときもあります。科学的な読み物や詩の中心的なテーマとして科学概念が紹介されるときもあります。どちらの場合でも、なじみ深い知識に新しい状況で出会うことになります。そして、子どもたちの心に感情的に焼き付けられます。子どもたちに自分自身の物語や詩を書かせたり、語らせたりすることは、言語的知能を使って事実、空想、感情を創造的に統合させることになります。就学前の子どもたちが、関連した指遊びを楽しむときにも、身体・運動的な知能を科学学習に組み込んでいることになるのです。

 この説明を読むだけで、いかに子どもたちの活動は、統合的であるということが分かります。私は、以前、自発的な活動を保障するために、子どもたちが選択できる環境として「コーナー」を設置しました。しかし、本コーナーにある絵本は、他のコーナーに持ち出すことは禁止していました。それは、持ち出した先にも、自発的に活動している子どもがいて、その子の活動を保障するということからでした。しかし、絵本、書物は、決して読むだけのものではないのです。調べるための資料であったり、制作するためのヒント集であったり、もしかしたら、楽器を演奏するための楽譜であったり、他人とのコミュニケーションツールであったりします。そして、科学的概念を学習することもあるのです。絵本、書物を通じて、様々な活動を発展させていくのです。

発展的な活動” への15件のコメント

  1. 音楽が「感情的にも身体的にも、記憶したり反応したりしやすくなっている」というのは、おそらく多くの人が納得することではないでしょうか。ある曲を聞くことで、それを聞いていた過去の情景がかなり鮮明に思い出される体験は多くの人がしてきていることだと思います。なぜあんなにも鮮明に思い出すんだろうと不思議でしたが、こうした説明を聞くことで理解できます。また書物に関しても、そこに書かれている知識が身に付くだけではなく、そこから科学的概念へと広がっていくというのは新たな気づきでした。心の育ちについての説明は多く聞いてきましたが、もちろんそれはあるでしょうが、今回のような捉え方は覚えておくべき事ですね。子どもたちの育ちから学ばなければいけないことはまだまだたくさんあります。

  2. 私自身の保育を振り返ってみると、子どもの発想に合わせて活動や環境を展開していたことが実際にあったと思います。しかしそうではなく、発達を豊かに遂げさせるために、その発達を促すさまざまな観点からの環境を用意することが必要なのですね。この二つを混同しがちになってしまいそうですが、「発展」という考え方、捉え方をしっかりと意識する必要があると感じました。そしてその発展的な活動として音楽が関係してくることは面白く思います。音楽には言葉では表すことのできないような不思議な力を感じるのですが、それが科学や数学の基礎にも関連があるとは考えたこともありませんでした。また音楽が体に染み付くというような表現を耳にすることがありますが、脳の中で音楽が処理される過程を知ることで、その理由についても少し理解できたように思えます。「人類の長い進化の歴史からみてもいえるようです」とあるように、人と音楽は切っても切り離せない関係にあるようですね。

  3. 子どもの発想に合わせて展開していく保育は私自身の保育の中でも思い当たる点がたくさんあります。そうではなく、発達を豊かに遂げさせるために、その発達を促す様々な観点から環境を用意する保育が大切になってくるのですね。この発想に合わせることと、発達を促す環境の違いはしっかり理解していかないといけないなと感じました。子ども達の活動の中で発達を促す環境を用意できているのか考えながら保育ができるということはその子に合った、今の発達を受け止め、周りと合わせるようなことをしたり、早く次のステップへと焦らすのではないということにも繋がっていくのでしょうか。まだまだうまく理解できていないので、しっかり掴んでいきたいなと思います。年齢や経験、状況が違ってくるだけで同じ音楽を聴いても抱く感情が全く違うという経験をしたことが何度もあります。また、ある音楽を聴くとかつての自分の気持ちを思い出すなんてことはしばしばです。音楽が処理される部位が記憶に関連しているということで、そのような気持ちの起こりの理由を感じることができました。

  4. 先日、二人の子どもが一つのメロディオンを演奏していました。この文を見て「?」が浮かぶと思います。どうしてかというと、メロディオンはもともと一人で使用するものです。どうやって二人で一つのメロディオンを演奏していたかというと、一人が唄口を加えて息を本体に送り込み、もう一人がキーボードを押していたのです。まず、しっかりとメロディーがリズムよく流れていた事、そして二人の阿吽の呼吸ともいう“タイミング”が抜群であったことに非常に驚きました。息を吹き入れる方はというと、ただむやみに息を吹いていれば息切れを起こして最後まで演奏できません。また、キーボードを弾く方も、なんとなく体で押すタイミングを相手に伝えているのです。曲の演奏が終わると、二人で顔を合わせてとても楽しそうに笑い合って話していました。このような子どもたちの姿を見たら、場合によってメロディオンは、音楽的知能の「科学と数学の基礎」に加え、コミュニケーション能力という“対人関係”の知能も含んでいるといったことが分かります。まさに、一人でやる演奏から、二人で一緒に演奏して楽しさを共有するといった「発展」が見られた事例であったと思います。

  5.  〝発達を豊かに遂げさせる〟という言葉に、心が震える思いがします。しりとりや連想ゲームのように保育がなされていく事例を耳にしたことがあります。そういった事例を耳にするといつも疑問を感じるのは、どこかで大人のエゴに近い意図が露骨に見えてしまう部分があるからです。〝その発達を促すさまざまな観点からの環境を用意すべき〟であると強く感じると同時に、それこそが環境をデザインしていく、見守る保育の基本姿勢であり、保育者の主たる仕事であると思います。
     〝音楽的な活動〟と聞いて思い出されるのは、先日の生臥竜塾ブログでの邨橋先生の『仕事・職場・遊び心』です。その時に〝遊び心〟についてインターネットで検索したところ、〝音楽を楽しむ気持ち、たしなむ気持ち〟という内容が出てきて驚きました。音楽を楽しむ気持ちは遊び心の要素であるということです。〝音楽〟と〝遊び〟、〝音楽〟と〝発達〟関連性が強いこと知り、音楽が好きな僕にとってはなんだか嬉しい気持ちになります。

  6. 当初、せいがの森保育園を見学させていただいて、コーナー遊びの素晴らしさに感動しました。当園でも見よう見まねでコーナー保育を導入し一通りのコーナーができたときに、ゾーンという概念を教えていただきました。最初は言葉だけをまねていましたが、少しずつ子ども達の動き、遊びが変わったような気がしていました。今回のブログを読むことで遊びの連動というか繋がりがより深く理解出来たように思えています。増々、環境の重要性を感じています。

  7. 私はこれまで縁あってハンガリーを訪れ、同国の乳児施設・幼児施設そして小学校や養成校を見学する機会をえました。小学校1年生の算数の授業を見学したのですが、算数の授業なのに、先生と子どもたちはわらべ歌を歌っています。ついには、歌いながら踊り始めます。どんな内容なのか通訳の方を通じて伺ったところ数に関するわらべ歌と、数をリズムで習得する踊りでした。さらに、彼らは色鉛筆を用いてぬり絵を始めます。1+1=2は赤、1+2=3は青などなど、足し算の結果をいろで塗り分けていきます。そしてやがて出来上がった数のぬり絵作品は民族伝統の刺繍の模様でした。あっという間に算数の時間は過ぎ去り、子どもたちは楽しそうでした。算数という教科なのに、歌あり踊りあり、そしてぬり絵あり、と教室は楽しさいっぱいでした。ところで、音楽は基本的には理系の人でなければうまくできないと思っています。なぜなら、拍やリズム、音程や音階等々極めて理数的です。しかも論理的です。音楽と言語が一緒になるときわめて数の世界になるだろうと思っています。ちょっと抽象的なコメントになりました。

  8. 人間は音楽に身体的にも感情的にも反応するようになっているというのはうなづけます。
    音楽が流れると自然に身体が動いたり、過去のある風景を思い出したりするのには、そのような脳の構造が関係していたというのを初めて知りました。
    確かに子どもの遊びは統合的ですね。いつも見ていて思います。あそびのつながりというか〝発展〟の重要性を感じ、大切にしていきたいです。

  9. 文章を読んでいると、保育をしているなかで、子どものためによりよい環境とは?子どもの成長はなど、考えすぎてしまうと、自分自身の考え方、主観が入り、いつの間にか大人主体の考え方になってしまうようなことを思い出しました。
    人間は、音楽に対して、感情的にも身体的にも、記憶したり反応したりしやすくなっているようなのです。ていうのは、音楽を聴いて、体を揺らしたり、泣いたりしてしまうことも繋がってくるのでしょうか。
    卒園式など、子どもの成長した姿の中に感動して涙を流している時のに、音楽を流していると、涙を流す相乗効果になっているなと思っていましたが、関係性を感じました。
    新宿せいが保育園を見学したなかで、確かにコーナーというものは、その遊びの保障はできていると思いますが、
    園の子どもたちの遊んでいる姿を見ていると、ゾーンとしているからこその遊びの保障を感じました。
    子どもの世界の広がり、ゾーンで遊ぶ子どもの姿は、本来、子どもが持っていること力を存分に発揮できる場所だと改めて感じました。

  10. 一昨年の頃の成長展の際に、子どもたちの日々の活動には保育士の意図があり、それによって遊びが「発展」しています。とてて展示されていたのを思い出しました。また藤森先生のお話のなかで「絵本というのは全てを賄える」絵本と聞くと文章が書いてあるストーリー物をイメージしがちですが、ブログにも書いてあるように子ども達からしたら図鑑も立派な本です。そして、本をきっかけに色々な事に興味関心を抱き、具体的な遊びへと発展します。製作で立体物を作ったり、実際に生き物を捕まえて、飼ってみたり、子ども自身が遊びを広げ発展させていきます。それらの子どもの行動をどう保育士が拾い上げ、絶妙な関わりをしていくのが重要ですね。

  11. 遊びを発展していくにはその時々が大切とあります。その時々によって子どもたちの遊びの発展が違うことがよくわかります。これは算数の方に発展していくのか、それとも音楽に発展していくのかと様々だと思います。その時々を見極め環境を用意してあげたいと思いますが、なかなか難しいことでもあると感じています。ただ発展するのではなく保育者の意図というのも必要ですね。日々実践していきたいと思います。音楽の関連した記憶というのは大人になってからよくわかるようになりました。それはこの音楽を聴くとあの時代を思い出すといった感じでしょうか。これが関連して覚えるということでしょうか。絵本一つにしてもどこにでも発展していくことが読んでいてわかりますね。そう考えると子どもたちの環境を用意するためにはもっともっと頭を柔軟にしていかなければなりませんね。

  12. 日々保育していて子どもたちの姿を観察していると、どうしても子どもの発想に合わせて展開していってしまうのことがあります。そうではなく、発達を豊かに遂げさせるために、その発達を促すさまざまな観点からの環境を用意すべきなのですね。その上で音楽的知能と関連付けていくことで子どもたちの豊かな発達を促せることがよくわかります。音楽を聴くと、その曲をよく聴いていたころを思い出したりと様々な記憶が呼び起こされることがあります。音楽には不思議な力がありますね。園歌や校歌など今でも部分的に覚えていますが、口ずさんでみると断片的で曖昧な記憶ですが蘇ります。園歌や校歌には、このような意図も少なからずあって作られているのかなと思いました。
    学童でも、子どもたちの遊びの中で「書物や絵本」から子どもたち自らで遊びを発展させていったことが数多くあります。感心させられることからくだらないことまでありますが、そのどれもが子どもの豊かな発達に関連していることがわかります。その「発展」を喜び、見守っていこうと思います。

  13. 絵本や童謡も、何かに関連付けて覚える、学ぶという意味があるのですね。そういった捉え方はしたことがありませんでしたが、たしかにそうですね。昔の人の知恵というものはすごいですね。本能的にどうすれば、人が成長するのか、生きる能力を身に付けることができるのかということを見つけてしまうのですね。そういったことは何もかもが事足りた現代では、難しいことなのではと感じてしまいます。だからこそ子どもたちの環境に一番近い私たちが気を付けていけるよう心掛けていきたいものですね。

  14. 私はよくアップテンポの音楽を聴いていて、そのミュージシャンのコンサートなどへ行くと周りが音楽に合わせて自然と飛びはたり、身体を揺らしたりしています。保育園でも同じように曲によって子どもたちも思い思いに身体を動かしています。そして、一時有名になった坂本龍一さんの音楽には「1/fゆらぎ」というリラックス効果があるそうです。「私たち人間は、音楽に対して、感情的にも身体的にも、記憶したり反応した」とありましたが、書物や絵本なども同様に、人間に対して何かしらの感じるものがあります。子どもたちがその感じたものを感じたままに表現し、そこから発展していけるような環境や考え方が大切なのだなと思いました。

  15. 「人間は、音楽に対して、感情的にも身体的にも、記憶したり反応したりしやすくなっている」というのは子どもたちを見ているとよく分かります。特に最近では「アナと雪の女王」の曲はいろんな世代の子どもたちが歌っていますね。幼児の子どもたちが歌うのは分かるのですが、2才の子が歌い、1才の子も歌詞がなくても、音程を聞いていると明らかに歌おうとしているのを見ていると笑ってしまいますが、それほどキャッチーなものほど自然と体に感覚的に入ってくるんでしょうね。
    本のコーナーの作り方は確かに困りますね。読むもの、調べるもの、参考にするものとその用途によって本の使い方は違います。それほど多目的に使えるからこそ、それを存分に使える環境が必要ですね。それだけ柔軟な使い方のできる環境を用意しなければいけませんね。

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