人生の意義

根強い利己主義の習慣を変えるために、セリグマンは4つの案を出し、そのうちのどれか一つを自分でできないかどうか感えてみてほしいと言っています。

 「自分の楽しみのために定期的にしていること、例えば、週1度外食する、火曜の晩レンタルビデオを見る、秋に毎週末狩りをする、仕事から帰ってからテレビゲームをする、新しい靴を買いに行く、などのうちどれかをあきらめる。そして1週間それと同じだけの時間をほかの人のため、または地域社会のための活動、例えば、貧しい人を対象にした給食施設や教育委員会の運動にボランティアとして参加する、エイズ患者を見舞う、公園を清掃する、母校のために資金を募る、などに使う。楽しみをあきらめたために浮いた金は貯めておいて、この活動をさらに支援するために使う」

 「自分の子どもに、ほかの人のために何かを差し出すことを教える。こづかいの四分の一を寄付するように言う。子どもたちにお金を必要としている人やプロジェクトを自分で見つけさせる。」

 この提案は、昨年のNHK「病の起源」の中で、うつ病を回復させるために、他人のために貢献することであると言っていたことと同じです。うつ病にならない民族は、すべて獲物を捕った時に、みんなで平等に分け合う民族であり、それをうつ病患者に適応したところ、8割の患者が回復したという内容でした。人類は、生存戦略として、物を分け合うとか、協力するとか、人に貢献するという遺伝子を持ってきたことがあります。セリグマンは、これらの案について、こう書いています。

 「社会との接触を深めることは気持ちが落ち込むもとだと言う人もいるかもしれない。うつ病を避けたいのなら、ホームレスに宿を世話するよりも、アカプルコで金持ちと交わっていた方がいいし、週に一度エイズの末期患者を訪問するのは、毎週うつ病にかかりに行くようなものだと言うかもしれない。実際そういうケースもあるだろう。しかし、人間の苦しみを目の当たりにすることは、悲しくはあるけれど、この本で使ってきた意味での“落ち込む”経験ではないはずだ。」

 かなりの期間このような活動を続けていると、誰でも人生に意義を感じるようになるはずだとも言います。以前のように簡単に落ち込まなくなるかもしれないし、病気にもかかりにくくなるかもしれないとも言います。自分一人の楽しみにふけっているよりも、社会のためになることをしているという満足感が得られるだろうとも言います。一番大切なのは、気ままな個人主義によって生まれた空虚さが次第に満たされてくることなのです。

こんな言葉で彼はしめています。「選択の時代である今、生き方を選ぶのは自分だ」

うつ病の蔓延から抜け出す方法の一つは、「個人主義と共通の認識のバランスを変えること」であり、もう一つは「強くなった自己の力を利用すること」です。その利用の仕方の一つは、「自己と共通の認識とのバランスを変えること」であり、もう一つは、「楽観主義を身につけること」であるとセリグマンは言います。この楽観主義の習得は、この本の全体のテーマです。そこで、彼の著書「オプティミストはなぜ成功するか」のサブタイトルは、「ポジティブ心理学の父が教える楽観主義の身につけ方」です。そこで、いよいよ最後の項目に入ります。