戦略

 給食の献立が洋風あるいは中華風の料理であることが多く、大人になった時の嗜好がどうしても和食離れになってしまっています。それは、給食の主食が長い間パンだったからです。その点、米飯というものは素晴らしく、和風はもちろん、洋風にも、中華風にも合います。洋食屋に行っても、「ライスにしますか?パンにしますか?」と聞かれますし、中華料理店に行っても、ライスを頼むことができます。しかし、和食屋に行って、パンはたのみません。

  このように万能な米飯給食は長い間学校給食では行われませんでした。「日本人のひるめし」の本の中で、酒井さんはこう指摘します。「パン中心の学校給食では煮魚ではなく魚のムニエル、ホウレンソウのおひたしではなく、ホウレンソウのバター炒め、つまり洋風の味付けをしたおかずが主役をつとめることになる。そのような給食のメニューを通して、児童の好みは次第に変化していき、成人した後の嗜好にも影響が現れてくるのである。」

  最近の家庭の食事から、日本の伝統的な食事である和食が次第に姿を消してきたのは、これだけの理由ではないともいますが、酒井さんの指摘には一理あるかもしれません。それは、今に始まったことではありません。戦後、食糧難の時代では、日本人には食べ物を選択する自由はなかったと言います。米が手に入らないのであれば、とにかく小麦粉をはじめとする放出の食糧を食べる以外に、生き延びる道はなかったのです。こうして、日本人は知らず知らずのうちに小麦粉を食べる習慣を身につけてきたと言われています。

  誰にでも悪評の高い脱脂粉乳でも、戦後の子どもたちの栄養をまかなうために、大いに貢献したのです。こんな時期では、好き嫌いも、残食もなかったでしょう。食べられるだけでありがたかったのですから。

  酒井さんは、このころの食事に影響したのは、それだけでなく、豊かな国アメリカの食生活へのあこがれもあったと言います。その憧れもあって、日本で昔から行われてきた小麦粉を使ってうどんなどの麺類を作ることから、パンを作るようになり、戦前のパンがアンパンやジャムパンなどの菓子パンとして米飯の補助食やおやつとしての食べ物から、米飯にかわってパンが主食として食べる食習慣が広まっていったと言います。

  私が子どもの頃、朝食はパンが中心に変わりました。その理由の一つに、パンを食べた方が賢くなるという説が信じられていたからです。どの家庭でも競ってパン食に変わっていきました。その説は、今は、どこにいったのでしょうか?

  このように、各家庭における朝食がパン食になってきたのです。しかし、それだけではなく、実はここにアメリカの食糧援助戦略が関係していたのです。学校給食はアメリカで余った食料のまたとない受け入れ先だったのです。その主なものが、脱脂粉乳や小麦だったのです。同時に、その食糧援助が日本人の食習慣や嗜好少しずつ変えていったのです。その経緯が、祖田修氏の「コメを考える」という本の中に書かれてあります。

  「昭和20年代から30代にかけて、“米を食べると頭が硬直してバカになる。小麦を食べると頭脳が弾力的になって賢くなる”、“三度三度コメを食べるとガンになる”などというまことしやかな説が、こともあろうに一部の農学者やジャーナリズムによって流布された。そして、最近アメリカは、これらのキャンペーンがアメリカの余剰穀物を処理する目的で、膨大な宣伝費を使い、意図的になされたものであることを認めている。」

  いつの時代でも、どんな分野でも根拠のない説がまことしやかに語られることがあるようです。

戦略” への16件のコメント

  1. 時代の流れの中で、好き嫌いがでてきてしまったということでしょうか。たしかに、私たちもいくら嫌いなものがあったとしても、食糧難に陥っているのならば、しぶしぶでも食べてしまうと思います。好き嫌いというものがある、できるというのはある意味、恵まれているということですね。
    食事のメニューについて、私自身も知らずに、パンにあうもの、ご飯にあうもので、同じ魚などでも、メニューを変えている気がします。
    生き延びるための道、豊かな国アメリカへの憧れからの小麦が主役となっていく時代、パンというものが、どう言った形で、主食として、ご飯とパンになったのかを
    わかったような気がします。
    そして、様々なまやかしの言葉、信じてしまいますね。
    魚は頭から食べたら頭がよくなる、尻尾から食べれば足が早くなるなどは聞いたことがありますが、ご飯とパンについては、あまり聞いたことがなかったので、少し驚きを感じてます。パンを食べてもらうための戦略的なものだと思うと、食材の消費量というのは社会情勢に影響力のあるものだと改めて考えることができました。

  2. 和食=日本人の食卓での食べ物ではなくなってきていますね。和食に関する本をつい最近読みましたが、私を含め、本に書かれているような和食が現代の日本人の食のスタイルかと言われれば、そうではない部分もたくさんあるなと思いました。パンはもちろんですが、洋食中心で、カロリーの高い肉食などが中心になっていますね。もちろん、みなさんがそうではないのですが、洋食文化の影響はかなり受けていますね。米や味噌汁はそれだけでかなりの栄養素があり、万能な食べ物であるというようなことも書かれてありましたが、米や味噌といった日本独自の発酵食品が持つ力には驚かされました。そんなことを知ったばかりだったので、米を食べるとバカになる、ガンになるということが言われていたと聞いて驚きました。日本人がずっと食べてきた米がそのように否定されては日本人そのものを否定されたような気分にもあるようです。このような宣伝が意図的に行なわれたということにまた驚きますが、現代ではさらにこのような嘘か本当か分からないような宣伝は溢れているように思います。いろいろな情報を仕入れる中でそれが信憑性があるものなのか判断できる力や分からないものを吹聴するようなことは気をつけたいなと思います。

  3. さまざまにご批判を頂くかもしれませんが、我が家の朝食は、私が米飯食、家内がパン食です。結婚してから20年近くになりますが、振り返ると、ずっとそうで、私はどうもパンがあまり得意ではありません。それは生い立ちから来るのでしょうね。何せ、我が生家には食事にパンがでることがない家でした。挙句の果てには、学校給食の経験もありませんから、食事のうち主食がパン、という経験は、保育務めを始めた30代後半からでした。「パンを食べた方が賢くなるという」説、初めて知りました。そうしたことを知っていれば、結婚してから朝食は私もパン食だったかもしれません。しかも「米を食べると頭が硬直してバカになる」なんて言われたら、疑わずにパン食でしたでしょう。それでなくても、西洋かぶれ的な側面がある私のことですから、パン中心の洋食三昧になったかもしれません。もっとも、私の場合は、米飯中心だからといって和食なわけではなく、ご飯にハンバーグとかウィンナーという若い時代を過ごしていましたから、何とも言いようがありませんね。食について、あれがいい、これがいい、あれはダメ、これはダメ、と言われていますが、今回のブログを読む限り、「根拠のない説がまことしやかに語られることがあるよう」ですから、まぁ、バランスよく何でも食べることが結果としていいような気がします。

  4. 確か映画で、凶悪なウイルスと同時に抗ウイルス剤を作り出し、人類をパニックにさせて抗ウイルス剤を高額で求めさせるといった内容のものがあったと思います。それと比較するのはおかしいかもしれませんが、現実にも、穀物を消費するために根拠のない情報を流すなどの行いがされていたのですね。そういった意味でも藤森先生が日頃からよく言われる「そもそも論」は、その情報や行為に根拠はあるのかといったことを見極めることができます。「余剰穀物を処理する目的」が裏では動いていたという背景から、情報というのが、決して真実だけではないということを深く思わせる事例ですね。そして、日本はどうしてこんなにも「アメリカ」に憧れがあるのかと思っていましたが、「豊かさの象徴」のような存在であったからなのですね。今ではそんなことはないのかもしれませんが、学生時代、海外というとまず“アメリカ”を思い浮かべていました。その固定観念も、アメリカの思惑にのせられているのかもしれませんね。

  5.  嘘のような話に思えてしまうのですが、実際にパン食が主流になっている現代を考えると納得をしてしまいます。戦争に負けた代償というよりも、戦争をしたことによる代償の大きさというべきでしょうか。日本は戦争によって自分達の文化まで脅かされてしまったことになります。
     その意味では、今こそまさにきちんとした知識をもって日本人の本来のものを取り戻すことができる時代になってきているのかもしれません。北朝鮮が情報規制などを強いている姿を見るとまるで昔の日本だという人がいますが、今の日本はその当時に比べればとても開かれていると思いますし、例えば迷信や不吉な占いや根拠のない話などその真実を確かめる術がいく通りもあります。日本人らしさというのでしょうか、日本人皆がその良さに気付き、磨きをかけていくことは十分に可能であると思います。僕が藤森先生のブログから日本の保育や給食などのそもそもを知ることでとても納得した気持ちになるのは、真実を提示されているのはもちろんのこと、日本人にとっての本質のようなものを藤森先生は理解されて表出されているからではないかと思うからです。日本人であれば納得できるというような心の根底にある部分を揺さぶるべく、多くの人に藤森先生のブログが読まれることを望みます。

  6. 戦後、食糧難の時代では、生き延びるために小麦粉などを使った食事をするしかなかったとありますが、米から小麦へと食の占める割合が変化していった要因にまで戦争が関係していたのですね。給食の目的だけでなく、主食にまで影響を与えてしまう戦争の力の大きさを改めて感じます。もしも戦争というきっかけがなければ、今日のようにパンの占める割合も少なく、米中心の食事のままだったのかもしれませんね。それにしても、ぱんを食べた方が賢くなるや、三度三度コメを食べるとガンになる”などというように考えられていたのには驚きです。結局はアメリカの思惑があっての情報ということだったようですが、その当時は見事にその策に翻弄されてしまっていたようですね。米離れの原因が様々なことと関係していて、それが今でも受け継がれていることを考えると、一度習慣化してしまったものを変えていくということの難しさを感じます。

  7. 確かに戦後の食料難の頃に好き嫌いなんて命に関わってきてしまいますから、そんこと言っている場合ではないですね。そんな中で、「米を食べると頭が硬直してバカになる。小麦を食べると頭脳が弾力的になって賢くなる”、“三度三度コメを食べるとガンになる”」という説が出回ったというのは初めて聞きました。アメリカからなのか日本政府からなのか、そのような説でも食料難という状況で出されてしまっては小麦や脱脂粉乳を食べることに拍車がかかってしまうと思います。そして、そのような噂で日本中に広まった噂というのは例えば、土用の丑の日や恵方巻きなども噂で広まった文化だったと思いました。

  8. 子どもがごはんと味噌汁を中心とした食事をとることの大切さについて、かなり時間をかけて学んできました。アメリカの余剰食料問題を解決するため日本の給食が利用されたことも学びましたし、そのときに米食にはたくさんの問題があるという説が広がったことも学びました。食は文化であり、そう簡単に変わるものではないと思っていたのですが、様々なタイミングが合えば結構簡単に変わってしまうんですね。そしてそれを覆すのが難しいことも、食でも保育においても感じているところです。ごはんがパンに変わるとそれに合わせて副食も変わり、油と砂糖をたくさん使った料理が増えてしまいます。そのことが子どもの健康に大きな影響を与えている事実を知り、ごはんの良さを見直すことにした経緯があります。食のあり方が変わり、選択肢も圧倒的に増えた今だからこそ、子どもがごはんを食べることの意味について丁寧に考えたいと思います。

  9. 自分が子どもの頃、ハンバーガーが食べたくて仕方がありませんでした。それは、学校で周りの友だちがハンバーガーを食べに行き、景品をもらっていたという話をよく聞いていたからだと思っていましたが、ここに書いてある通りアメリカの戦略にまんまとはまっていたのかもしれないと思いました。
    小麦を食べると賢くなるという噂は初めて聞いたので驚きました。そのようなことは今ではあり得ないことですが、信じてしまう情報の恐ろしさを感じます。
    今の世の中は当時よりも情報であふれ、しかも前より簡単に手に入れることができるようになっています。今を生きる自分たちはより気をつけなければなりませんね。

  10. 「根拠のない説がまことしやかに語られる」これには本当に困ることが多々あります。“米を食べると頭が硬直してバカになる。小麦を食べると頭脳が弾力的になって賢くなる”、“三度三度コメを食べるとガンになる”というのは初めて聞き驚きました。様々な戦略があるにせよ、このような根も葉もない噂は嫌です。ブログの冒頭にある洋食屋や中華ではご飯も食べますが、和食屋でパンは食べない。言われてみれば当たり前のことですが、今まで気にもしたことがありませんでした。

  11. 私は今現在ではお米かパンかと聞かれたら迷わずお米と答えます。しかし、以前はパン好む時期がありました。その理由は全く覚えていないのですが、朝食はパンが良いなと思っていました。それに家庭ではパンは一切食卓には出てこなかったため、、学校給食の影響が大きかったことが考えられます。「パンを食べた方が賢くなるという説」があることを初めて知りました。なので私が子どものころには既に消息していた迷信だと思いますが、そのころまでにこの迷信が存在したら、今の自分はお米よりパンを好んでいたかもしれません。また、“米を食べると頭が硬直してバカになる。小麦を食べると頭脳が弾力的になって賢くなる”、“三度三度コメを食べるとガンになる”等も初めて知り得たことばかりです。これを知っていたらなおさらパン色が濃くなっていただろうなと思ってしまいます。おそらく現代でも多くの迷信が存在するのでしょうね。もしかしたら既に迷信に踊らされていることもあるのかもしれないと思うと少し怖くなります。

  12. パンと米といったら圧倒的に私は米が好きでどんなおかずでも米で食べてしまうほどです。ただ、誰にでも悪評の高い脱脂粉乳でも、戦後の子どもたちの栄養をまかなうためにという状況であったら間違いなくパンでもなんでも好き嫌いなく食べていたのだろうと感じますね。そんなことを言っていられない状況に比べると今の現状には感謝すべきです。なぜ、パンを食べるようになったのかはアメリカの食生活への憧れがあったのですね。更にパンを食べたほうがかしこくなるというのは初めて聞きました。そのことを知っていたら少しは影響され、パンの方に意識がいっていたかもしれませんね。そんなまことしやかな説に左右されることは日本人はよくありそうです。パンからも様々なことがわかるというのにも驚いています。

  13. 最初のお米が、和風はもちろん、洋風や中華風に合うというのは、とても納得しました。お米というのは、何にでも合います。これは私が日本人だから思うことだと思います。
    そして、そのお米に代わりパンが少しずつ中心になってきた背景には、アメリカの戦略があったことに驚きました。1つは、アメリカで余った食料を日本に送り、それが脱脂粉乳や小麦で給食に出ていたこと。2つめが、米を食べるとバカになり、小麦を食べると賢くなるという根拠のない説を意図的に流すということでした。これが、日本の給食をパン中心にし、その嗜好が現在の家庭における和食離れの原因の1つになっている。もちろん和食離れの原因はこれだけではないでしょうが、やはり和食離れはとても寂しいことだと思います。私自身のことを考えると、ふと和食が食べたくなることが最近になって増えましたし、1週間海外にいると、日本に戻ってきたときは、まず日本食を食べたくなります。

  14. 小学校の頃の給食の献立を覚えていませんが、確かにパンが出る回数は多かったように思います。ただありがたいのは、実家の食事は基本的に和食中心でしたので、今の私の食事も時には洋もありますが、やはりベースは和食です。個人的にはパンも嫌いではないので何とも言えませんが、戦後食糧難の時代はとにかく食べる事が優先でしたので、パンも重要な食料だったのでしょうね。そうなるとパンに合うおかずを作るようになり、そしてアメリカの生活に憧れパンと牛乳とスクランブルエッグのような朝食に洋食を食べる文化が自然と染まっていったのですね。ただおパンを食べると賢くなるという説は初めて聞きました。更にコメを食べるとガンになる・・・もはや笑い話に聞こえます。今は情報が簡単に手に入れることができるので、自分で調べることも可能ですが、当時は一方的に入ってくる情報に多くの人が惑わされたのでしょうね。

  15. ライスかパンかと聞かれたら、たいていライスを頼んでしまいます。というのも、自分の食生活を見て、パンを食べる割合が年々増えてきているような感じがあるからです。私が、子ども頃はパンのCMもそうでしたが、シリアル系のCMがとても多かった気がします。いろんな思惑がある戦略。
    我が家も朝はどうしても便利さの面をとってしまいパンのことが多くなってしまい頭の痛い話ですが、日本人として本当に良いもの、そして子どもにとって本当にいいものを考えられる者でありたいと思います。

  16. 噂とはどこから流れてくるか分からないですね。アメリカの余剰穀物をなくすためのキャンペーンとして流れてきて、そこで日本の食文化にさえ大きな影響を及ぼしているというのはなんとも考えさせられます。日本は基本的に輸入に頼らなければいけないので、余計に流言が流れやすい状況なのかもしれませんね。とくに戦後下の日本においてはアメリカは憧れの象徴だったでしょうから、なおさらパン食になることに抵抗はなかったでしょうね。改めて情報を得ることの難しさや情報の信憑性を改めて見極めるための洞察力の大切さを感じます。

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