悲観

ランドルフは、ゴールマンの「こころの知能」といわれるEIに関する著書に興味を持ちます。また、彼は「オプティミストはなぜ成功するか」を読み、ポジティブ心理学に興味を持ちます。そして、その著者であるセリグマンに会うことを決心し、そこでレヴィンと偶然と出会い、長く実り多い協力関係が始まりました。私は、ゴールマンの「こころの知能」という本は読みましたが、セリグマンの「オプティミストはなぜ成功するか」は、まだ読んだことがありませんでした。しかし、ランドルフとレヴィンが影響を受けた本となると、読みたくなりすぐに取り寄せ読んでみました。

「この本を読んでほしい人」について、帯封にこう書かれてあります。「失敗すると“自分のせいだ”と思ってしまう」「いやなことがずっと続いている気がする」「世の中、自分にはどうしようもないことが多すぎる」「自分は運が悪い」「すぐにあきらめてしまう」私は、この歳になったせいか、これらはどれも当てはまりませんので、読む必要がないかもしれませんが、たぶん、このように思ってしまう人が多いのでしょう。また、この本は1990年に発刊され、日本では1991年に発行されていますが、昨年新装改訂され出版されているところを見ると、いま、この考え方が必要なのかもしれません。また、「成功する子 失敗する子」という本に対して、この本は成功するために「オプティミスト」ということがキーワードなのでしょう。

著者のセリグマンは、「無力感は学習によって身につくのではないか」という研究に取り組んでいたのです。臨床心理学の研究者はほとんどみんな、患者のどこが悪いのか、そしてどうしたら治せるのかに焦点を当ててきたため、セリグマンは、自分は悲観主義について研究しているのかと思ってきたそうです。ですから、もともと良いのはどこか、どうしたらもっと良くなるか、という点には少しも考えが及ばなかったと振り返ります。

しかし、のちに生涯の友人となるリチャードから「あなたの研究は悲観主義についてではなく、楽観主義についてですね」と言われたことをきっかけに、本を書き、ベストセラーになり、「ポジティブ心理学」という言葉が生まれ、1996年、史上最多の票を集め、アメリカ心理学会の会長に選ばれます。しかし、皮肉にも、当時彼は心理学は不完全なものに見え始めていたころでした。悩み、苦しみ、精神病、トラウマについては心理学でもこれまで十分に研究されてきた分野です。そして、その研究はそれなりの成果を上げてきました。

しかし、臨床心理学者たちは、治療がある気になる現象を生み出していることに気づきました。それは、治療がとてもうまくいき、患者がうつ病、不安、怒りから抜け出す助けはできても、患者が幸せになれるとは保証できないことに気がつきます。治療で得られたのが幸せではなく、空虚感であることは珍しくなかったからです。そこで、彼は、なぜだろうと考えます。

それは、マイナスを直しても、プラスにならないのです。不思議なことに、同じひとりの人がうれしくて、悲しいことがあり得るのです。同時ではありませんが、実際、女性は感情に動かされやすく、男性よりも喜びも悲しみも大きいようです。ということで、幸せになるためのスキルは、悲しみや不安や怒りを抑えるためのスキルとは全く異なることがわかったのです。

それは、どのようなことを意味するのでしょうか?