メンタルヘルス

人が宝だということの具体的な対応として、ライフワーク・ストレスアカデミー代表取締役であり、臨床心理士である尾崎健一氏は、メンタルヘルスへの対策が必要であると言います。労務行政研究所が行った「企業におけるメンタルヘルスの実態と対策」(2010年)によれば、何らかのメンタルヘルス施策を「実施している」企業は86.5%と、前回2008年調査の79.2%より増加しているように、最近企業では増えているようです。私たち保育園や幼稚園でも、その対策を参考にすべき時代かもしれません。

それというのも、「過去にメンタルヘルス不調で休職した社員がいる」企業は全体で92.7%、1000人以上の大企業に至っては100%に上っているようです。その観点からあまり私たちの職種では論じられることはありませんが、確実のそのような職員は増えています。そして、彼の中で「完全復帰した割合」は、なんと「半分程度」と「それ以下」を合わせると50%以上となっているといいます。つまり、メンタルヘルス不調による休職者の半数以上は完全復職できていなのです。

このような状況でありながら、まだまだメンタルヘルス不調が続出することを職場の問題と捉えず、個人の問題として切り捨てることで収束を図ろうとする職場が多いようです。それは、メンタルヘルスについての正しい認識と、どうしても根性論や怠け論的な考え方があるからと言われています。ですから、そのような理由で休職中の社員を辞めさせたいと思ったり、最初は、メンタルヘルス不調者に同情を寄せていた同僚も、軽減勤務からなかなか回復しない復職者や休職を繰り返す社員に不満の声を漏らすようになります。

しかし、組織の損得を優先し、メンタルヘルス不調者を見て見ぬふりをしていると、人的資産を損ない、貴重な人材の流出を招きかねないと尾崎氏は警告しています。そして、社員のメンタルヘルスが向上し、「人を惹きつけ、引き止め」「彼らを認め、報い、動機づけられる」組織にするために、尾崎氏はメンタルヘルス対策の観点から5つのポイントを提案しています。

第1は、「正しい理解の促進」です。メンタルヘルス不調に対して、「治らない」「根性の問題である」「私たちの頃はなかった」という認識を変え、会社から社員に対して積極的な教育・啓発活動を行うことにより、社員が「働く人のことを考えている会社だ」と思えるようにすることだと言います。第2に、「産業保健部門任せにしない」と提案します。「メンタルヘルス対応は産業医などの産業保健部門で対応すべきこと」という経営者の考えを変える必要があると提案します。ドラッカーは『マネジメント エッセンシャル版』の中で、「現実には、人のマネジメントに関する従来のアプローチのほとんどが、人を資源としてではなく、問題、雑事、費用として扱っている」ことを懸念しています。メンタルヘルス向上は、人という資源を生かすための経営課題として認識すべきだと尾崎氏は言っています。

第3は、「能動的な現状把握」であるとし、「会社として」現場で何が起きており、何がストレス要因となっているかを把握しなければならないのです。経営者が雲の上の人で社員の声が届かないという組織では、メンタルヘルス不調が起きやすいと言われています。これは、リーダーのあり方に関係してきます。その距離を縮める工夫・施策を考える必要があります。