理念と美

 最近、保育園の竣工式に呼ばれることが多くなりました。私が最初に園長になった園の開園は昭和54年で、当時、市内に同じ年6園もできました。その少し前から、「ポストの数ほど保育園を!」と言われ始め、各地に多くの保育園が作られていきました。その動きは、戦後、1949 (昭和24)年頃から幼稚園で起き始め、急激に増加していきました。1948年当時の幼稚園数は1,529園であったのが、年々増加を続け、1953 (昭和28)年には2.3倍の3,490 園となり、1956 (昭和31)年には4.0倍の6,141園にもなりました。

 建物には減価償却資産として耐用年数が示されています。その建物の用途によって違いますが、事務所ですと、木造・合成樹脂造のもので24年、木骨モルタル造で22年、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもので50年、れんが造・石造・ブロック造のもので41年です。ということで、幼稚園、保育園の建て替えが行われているのです。その竣工式に出席して設計士さんとよく話すのですが、「設計をするうえで、園長先生にきちんとした理念があると設計がしやすいです。どのような保育をしたいのかを聞くことの方が大切ですが、ただ、収納を多くしてほしいとか、窓を多く、高さをどのくらいかばかりを要求されることがあるのです。」と言います。

 保育園、幼稚園という建物は、子どもを収容する箱ではありません。そこで、子どもが生活し、子ども同士の触れ合いの中で学習していく場なのです。再三このブログでも強調していますが、ドイツでは、「建物は第二の教師である」という感覚を持ちます。だからといって、機能的であればいいということではありません。機能を追求していくと、そこには「美」が生まれると思っています。そしてその美は、周りに攻撃的に存在するのではなく、周りと調和をし、周りと一体となって新たな美を産みだします。その環境をの調和によって新たな美を作り出す技を、私は日本人が世界の中で優れている民俗な気がします。それは、四季があり、豊かな自然に囲まれているからでしょう。また、鋭く、細やかな感性も日本人は持ち合わせている気がします。
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 私は、それらを、茶室から強く感じます。外観は、自然と一体になりながらも自然を直線で切り取り、そのたたずまいは、簡素にして、無駄なく、また、様々な五感を刺激していきます。今回、講演の合間に、信長の実弟が建てた、昭和11年に国宝の指定をうけた茶室弘庵を見ることができました。ここは、犬山城の東にある庭園・有楽苑にあり、庭園内には、国宝茶室如庵のほか、重要文化財旧正伝院書院、古図により復元された茶室元庵、新しく建てられた茶室弘庵などがあります。
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茶室は、屋外空間も含めて演出されています。ここのつくばいは風雅な音色を奏でる水琴窟となっており、それは静寂をより際立たせているようです。茶室の外観は柿葺入母屋風の屋根の妻を正面に向けて、左方に入り込んだ土間庇を形成し、大悔筆の「如庵」の額をかかげてあり、無駄を一切排除した非常に端正な作りとなっています。

室内は、亭主が上座につく、亭主床と呼ばれる床構えになっており、二畳半台目の向切りの茶室です。この広さは、ゆとりがありかつ緊張感を失わない室内空間をつくり、「二畳半、一畳半は客を苦しめるに似たり」と言い切っています。躙り口入って左側奥に四尺の出床、その右手やや奥に勝手からの入り口です。茶道口と給仕口を兼ねるこの勝手口からは給仕の動線に沿って斜行する壁を立て足元には三角形の板畳「鱗板」を敷いています。篠竹を打ち詰めた「有楽窓」、古暦を腰に貼った「暦張り」も独創的です。
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これらの建物は、光と風も演出し、無駄を省き、合理的でありながらも、「美」を中心においています。それは、理念がしっかりしていることが美を産みだすという証です。