ドイツ報告2014-16

 ドイツでは、1990年代半ば以降になると、就学前期からの早期の陶冶、早期教育を要請する連邦政府や経済界からの声が相次ぎます。それは、小学校教育においても、「陶冶」という概念の教育が中心になってきたからです。とりわけ幼児教育の専門家たちの議論に影響を与えたのが、次の2つの提言でした。ひとつは、1996年から1998年にかけて行われた未来の知識社会の知と陶冶についての、デルファイ法を用いて行われた調査にもとづく提言です。もう一つは、連邦政府と州政府の合同で開催された「教育フォーラム」の結果として出された提言です。

 この「デルファイ法」という方法は、集団の意見や知見を集約し、統一的な見解を得る手法の一つです。まず、対象のテーマや設問について参加者に個別に回答してもらい、得られた結果をフィードバックして他の参加者の意見を見てもらった後、再度同じテーマについて回答してもらうというやり方です。そして、この過程を何度か繰り返すことにより、ある程度収束した組織的な見解を得ることを目指します。回答のフィードバックに際しては個別の意見は回答者を伏せて匿名で掲載するのが原則で、意見の分布を統計的な図や表で示し、集団の中で自分の意見がどのような位置にあるか知らせる場合もあるようです。

 今回、日本では、認定子ども園の保育内容について、「教育・保育要領」が告示化されましたが、その内容についての議論があまりに拙速で、なんだか、ただ幼稚園教育要領と保育所保育指針をすり合わせて作った感がありますが、ドイツでは、陶冶という概念を中心に置くことについて、この「デルファイ法」を用いたのです。それは、会議を開いて議論をすると参加者間の人間関係や権威者への配慮、議論の巧拙、場の雰囲気(少数派へのプレッシャー等)などが議論の内容に影響することがあるので、このデルファイ法は、テーマと直接関係ないそれらの要因が極力働かないよう設計されているのです。

 特に、このデルファイ法は、複数の専門家にその分野の将来予測や未知の事柄の推計などをしてもらうための技法として考案されています。現在では、企業活動にも多く取り入れられており、特に、将来起こりうる事象に関する予測を行う方法としてよく用いられています。この調査法を用いて、ドイツ連邦政府は1996年から1998年にかけて、未来社会の知と学校教育についての調査を行いました。2020年の学校教育システムでは、どのような知識、能力、資格が伝達されるべきなのかを調査してみた結果、そのような知識などのリストのトップにあげられたのが、「学習の学習」の能力、学習技術に関する能力だったのです。

このデルファイ調査の結果を受けて、1999年、「教育フォーラム」が開催され、2年間にもわたって討議が行われました。その結果が2001年、12の提言にまとめられました。その提言の最初には、「保育施設の陶冶任務の意義と、早期からの学習課程の強化」が挙げられています。そして、これらの提言が2002年に一般に公表されました。ちょうど時期を同じく、その直後に、PISA調査の結果が公表されたのです。すると、ドイツは参加32カ国中、読解力で21位、さらに数学的リテラシーと科学的リテラシーで20位という不本意なものでした。

このようなことは、日本でも起きました。その時に、この調査は、15歳を対象にしていますので、日本では、小、中学校の授業内容を見直しました。ゆとりをなくし、授業数を増やしました。ドイツでは、その結果を受けて、どのようなことを強化するようになっていくのでしょうか。