自己選択

 テレビ番組で、いよいよ2014年4月12日(土)から始まったドラマ「弱くても勝てます」が最終回を迎えます。この原作は、髙橋秀実の『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』で、第23回ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞しています。この開成高校とは、あまりに有名な東大合格者数1位を長年維持している超進学校ですが、本当に甲子園を目指しているとのことです。

 この原作を書くために高橋さんは、開成高校の野球部のメンバーに取材をしました。その時の話を、開成学園校長・柳沢幸雄さんと対談しています。この対談が、「ダイヤモンド・オンライン メールマガジン」に掲載されているのですが、その中で柳沢さんのプロフィールをこう紹介しています。「東京大学名誉教授。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症に関する研究の世界的第一人者として知られる。1947年、疎開先・千葉県市川市の母の実家で出生。1971年、東京大学工学部化学工学科を卒業後、日本ユニバック株式会社にシステムエンジニアとして勤務し、激務のかたわら、週15時間英語の勉強に打ち込む。1974年、水俣病患者を写したユージン・スミスの写真に衝撃を受け、化学工学を勉強すべく、東京大学大学院工学系研究科の修士課程・博士課程に進学。この頃、弟と一緒に学習塾の経営を始める。東京大学工学部化学科の助手を経て、1984年にハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の研究員の職を得て、家族を連れ渡米。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の助教授、准教授、併任教授として空気汚染の健康影響に関する教育と研究に従事、学生による採点をもとに選出される「ベストティーチャー」に数回選ばれる。1999年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻教授に就任。2011年より現職。」

 このプロフィールを読むだけで、このような人を開成中学校・高等学校の校長を招聘した開成のすごさを感じます。また、開成の生徒の話は、私たちが目指している保育に通じるものがあります。また、私が出た高校に通じるものがあります。それを、取材した高橋氏はこう書いています。「お二人の対談を通して見えてきたのは、“開成っ子”の意外すぎる一面でした。“エリートの卵”“神童”と世間からいわれる“開成っ子”の知られざる強みとは、一体どこにあるのでしょう?」

 それは、「印象的だったのは、みんな“自分なりの回答”をしようとすることです。みっちり中身の詰まった話が非常に速いスピードで繰り出されるので、メモが間に合わないことがしばしばありましたね。エラーばかりしている子に“野球は苦手なの?”と聞いたら、“いいえ、苦手ではなくて下手なんです。下手と苦手は違います”と返ってきたり、“野球は好きですか?”という質問に、“僕は野球以外のことを野球と同じくらい長時間やったことがないので比較できない”と言う子がいたり。きちんと考えて自分の言葉で質問に対する答えを見つけようとする。その姿勢がとても好印象でしたし、素晴らしいと感じました。

 この答え方を一見すると、いかにも頭の良いこの理屈のように聞こえますが、実は、開成では「自分なりに」という姿勢を、一番重視している結果であると柳沢氏は答えます。そして、「“これをやりたい”“こうなりたい”と、生徒が自己選択ができるようになれば、我々の教育は終わったも同然。選択された生徒の意思に合わせたアドバイスは惜しまないけれど、“○○大学に行きなさい”というような指導は一切しません。だって自分の人生ですから。その結果、みんな“自分なり”に深く掘り下げて考える癖がついているのだと思いますよ。」