幼児期から高等教育へ

 アメリカでは、幼児教育について親たちはとても悩んでいるようです。そして、不安を抱えています。その不安は、ニューヨークのような大都市ではより強く、人気の高い幼稚園に入るための競争はまさに戦いのようです。最近になって、カリフォルニアの大学の経済学者が、国中で起こっているこの幼少期の成績競争に「ちびっこレース」とよび名を付けました。年を追うごとにレースの開始年齢は早まり、より苛烈なものになっていくようでした。

 しかし、ポールは取材の中からある確信を持ちます。それは、幼児教育の大切さと、たとえば、機能のブログで紹介したような、知能至上主義ではなく、「心の道具」のようなプログラムを使い、その後いい学校に進めることであると確信します。その学校とは、子どもたちを矯正クラスに追い込むのではなく、彼らにあえてレベルの高い課題を課す学校であるとしています。そして、教室内で受けている学力向上への助けがどんなものであれ、それを補うかたちで教室の外からの社会福祉、心理学的な指導、性格形成のための指導による支援策が必要になるだろうとポールは言っています。それは、たとえば、エリザベス・ドージアがフェンガー高校に取り入れたものや「ターンアラウンド・フォー・チルドレン」というグループがニューヨーク市やワシントンDCのいくつかの低所得地区の学校に提供しているものがそれに近いと言います。

 そして、高校になると、彼らをより高い教育へ導くプログラム、学業だけでなく、感情面、精神面でも大学進学への準備をさせてくれるプログラムが必要になります。それは、ワンゴールやKIPPスルー・カレッジが実施しているプログラムの組み合わせたようなものがあれば、生徒たちが恩恵を受けられるであろうと言います。

きちんとパイプのつながったこうしたシステムを、失敗のリスクの最も高い10~15%の生徒を対象として作ったら、間違いなくかなりの費用はかかることになるだろうと言います。しかし、現行のその場しのぎのシステムよりは安く上がるに違いないのです。いくつもの人生を救えるだけでなく、資金の節約にもなります。しかも長い目で見た場合だけでなく、今すぐにでも行うべきであると提案しています。

こうして見てきたときに、貧しい子どもたちの成功と失敗に関して家族の影響が大きいと話すのは、ときに居心地の悪いものであるとポールは言います。それは、誰でも同じで、多くの教育改革の関係者は、成功への主な障害は学校のシステムの中にあると思いたがります。そして、生涯を克服するための解決策もまた教室の中で見つけようとするのは、彼らの信念に近いものとしてポールは感じています。

これに比べて改革に懐疑的な人々は、低所得層の子どもの成績が悪い原因を学校の外に求めたがります。そして、それは家庭の機能とは関係のない項目を選ぶ傾向にあると言います。例えば、環境中の毒素とか、食の安全が保たれていないこと、ヘルスケアや公営住宅が不十分であること、人種差別といった、個人の力を越えたものであると言います。たしかに、それらの問題もすべて現実に存在し、重要でもあります。しかし、それは実際には貧しい子どもたち、とりわけ極度に貧しい子どもたちが直面する最大の障害ではないのです。障害は、やはり高いレベルのストレスを生み出す家庭やコミュニティであり、そのストレスに子どもがうまく対処するのを助けるはずのアタッチメントが欠けていることだというのです。

では、なぜ、貧困がかかわる学業不振の根本的な原因を探す時に、間違った犯人に焦点を合わせ、科学が教えてくれる最大のダメージを無視してしまうのでしょうか?