ドイツ報告2014-2

 毎年同じドイツを訪れる理由の一つは、変化を見たいからです。数年前に、ドイツの保育関係者に、「お互いに連携を特にとっていないにもかかわらず、なぜか藤森さんの考えていることと同じような課題に対する動きを感じます。」と言われたことがありましたが、今年もまさに私が課題と思っていたことがいくつか説明されました。

 ドイツでは、ブログに書きましたが、2011年10月に学校局と生活局が「陶冶局」に一体化されました。それが、昨年、通訳の方が
「Bildung」という言葉を「陶冶」と訳していたのを「教育」と訳したことについて、それはどのような意図からだと聞いたところ、「日本人に、陶冶といっても、なかなかイメージが難しくて通じないため、教育と訳すようにした」と言ったのです。しかし、「教育」と言った方が認知能力を学ぶとか、学力を高めるようなイメージにならないかというと、もちろん、「Bildung」とは、人格形成のようなもので、子どもたちが自ら見たり、触ったり、体験を通して学ぶことを指していて、それが幼児教育であると言うのです。このように、やはりドイツでも「陶冶」という概念は難しいようですが、かつての教育とは一線を画している言葉のようです。

 また、ドイツでは、大きく分けて、0~3歳までのキンダークリッペ、3~6歳までのキンダーガーデン、それに対して、0~6歳までのコープ(コーポレーション)という施設がありました。それに対して、コープという施設が少し変わりました。まず、名称が「Haus für Kinder(子どものための家)」に変わりました。そして、その施設は、キンダーガーデン(3~6歳児)+キンダークリッペ(0~3歳児)=0~6歳児の施設か、キンダーガーデン(3~6歳児)+学童(6~11歳児)=3~11歳児の施設のことを指すようになりました。

 今日の午前中に訪れた園は、このハウス・フェア・キンダーという施設で、3~6歳児まで66名、6~11歳時まで24名、合計90名の園でした。いわば、幼稚園と学童クラブが一体になった施設です。また、ここには、養護保育対象の子どもが5名在園しています。ということで、インテグレーショングループです。また、ここには外国人・移民家庭が90%以上もいます。
2014.6.24am
 まず、最初の説明を園長先生と養護の先生がしました。その時に、「皆さんの園に養護の先生がいる園はありますか?」と聞かれ、日本では、養護の先生というと保健の先生を指すことを言うと、ドイツでは、障害児担当職員を指すそうです。保育者の資格を持った後、2年間の研修を受け、養護の資格を取るのだそうです。このような配置は、1990年以降、行政指導により各園5名の障害児を入園させるようになったからだそうです。それは、学術的研究により、障害児との統合保育は、すべての子にとって、発達にいい刺激が与えられることが分かったからだと言います。そのために、この養護の先生のほか、言語、運動機能の専門家と連携を取っているということでした。

 もう一つ、この施設で興味深い話を聞きました。この施設は以前「就学前施設」だったそうです。「就学前教育」というと私たちはどのようなイメージを持つでしょうか?10年前に、義務として就学を迎えたこの中で、まだ1年生になるのは無理だと判断した子15名を、午前中の8時から12時まで保育する施設が、シュールキンダーガーデン(こどもの学校)という就学前学校と言っていたそうです。現在は、就学をその年齢になっても見送りたいという家庭では、そのまま園に残るのだそうです。ですから、ここは、ハウス・フェア・キンダーという施設に変わったそうです。

玄関わきにある、保護者が自由にコーヒーが飲めるコーナー

玄関わきにある、保護者が自由にコーヒーが飲めるコーナー

ドイツ報告2014-2” への10件のコメント

  1. 障害児との統合保育が全ての子どもの発達にいい影響があるという考え方や就学前施設のあり方について藤森先生から何度も教えてもらっていましたが、改めてドイツのあり方を聞くと日本との違いを考えさせられます。このような制度や施設を希望するわけではありませんが、こうした考え方が少しずつでも受け入れられるようになっていかなければいけないんだろうと思います。教育というものをどう捉えるかによって変わってくることだと思うのですが、だとすれば制度が変わる今をチャンスにすべきだと思うので生かしていきたいとは思っています。その内容とは関係ありませんが、保護者が自由に飲むことのできるコーヒーコーナーはおもしろいですね。

  2. 陶冶と言われても確かにその意味をイメージするのは難しいですが、人間形成のようなものであるということからも日本での「教育」という言葉が示すものとはかなり違うということは分かるようでもあります。各園5名の障害児を入園させることになったとありました。障害児に多くの外国人と集団の中に様々な人がいることが想像されます。日本はどうかと考えますと、まだまだ差別意識の強い国であるように思います。差別はいけないと道徳で教えればそれでいいのではなく、乳幼児期から特別な存在としてではなく、様々な人を感じながら普段の生活があるという状況を作っていくことの方が大切であるように思います。それがドイツではしっかりしているような印象を受けます。保護者が自由にコーヒーを飲めるコーナーというのもいいですね。ゆっくりしていいんだと保護者が思えるのはいいですね。

  3. ドイツミュンヘンの施設の定点観測が意味あることだと今回のブログを読んでも感じました。Haus fuer Kinder直訳すると「子どもの家」は初めて知りました。幼稚園と学童一体化施設、ということです。やはり、変えるべきところは変えてきている、と思いました。しょうがいのお子さんを5名、そして、驚くのですが、「外国人・移民家庭が90%以上」、とは・・・。純粋ドイツ国民のお子さんたちはこの園では10%に満たないということでしょうか。私たちの園でそうした割合のお子さんの受け入れをすることになったら・・・。流石、移民受け入れ大国ドイツです。「シュールキンダーガーデン(こどもの学校)という就学前学校」に取って代わる施設としてHaus fuer Kinderが「義務として就学を迎えたこの中で、まだ1年生になるのは無理だと判断した子」を受け入れている、ということにも多くの関心を向けることができます。こうした「こどもの家」施設から、やはりこの国はBildung人格形成に重点を置いて子どもたちの学びを考えているのだということがわかります。

  4. 「養護」という言葉を聞いて、「保健の先生」を指す日本と、「障害児担当の職員」を指すドイツですが、そこにも価値観の違いが存在するのですね。この違いが生じる原因はと考えた時、ドイツの専門的機関における信頼性や、実現までのスムーズさが「学術的研究により、障害児との統合保育は、すべての子にとって、発達にいい刺激が与えられることが分かったからだ」という言葉から読み取ることができます。養護・言語・運動など、種類の異なる専門性を携えた人材によって、子どもたちをサポートしていくといった、その時期にかける思いというのも感じます。また、その環境に多くの専門性があれば、職員も自分の専門的なフィールドに全力注ぎ、それに集中して取り組めるといった姿もあるのでしょうか。その方々との連携は、各々の専門性をさら高めることにもつながっていきそうですね。そして、「就学をその年齢になっても見送りたい」という思いが実際にできる「ハウス・フェア・キンダー」という施設ですが、「子どものための家」というネームングもいいですね。就学前教育を、ある場所から隔離されたイメージではなく、その子どもそのものを肯定するような場であるようなイメージが感じられました。

  5. コープからハウス・フェア・キンダーと名称が変わったり、1年生になるのは無理だと判断した子がそのまま園に残ることが出来たり、障害児との統合保育が子どもにとって良いと行政から各園5名の障害児を受け入れる指導があったりと、なんて柔軟で、そして子ども想いな発想から動くことのできる国なのだろうと、とても感心してしまいました。日本で言えば時代や社会に合わせて名称を変えるだけでも素直に受け入れてもらえなさそうな気がします。保育に対してとてもフランクな、気さくな雰囲気や環境があることが見て取れるような思いです。
    国民全体として柔軟な発想もあると同時に、国の政策に信頼を置いている部分があるのでしょうね。政治家に信頼を置くことが難しい日本とは先ずこの点が違うように感じました。
    ドイツと日本。国民性や気質に近いものがあるということでしたが、政策や保育に対する柔軟さの部分においては大きく離されているものがあるのではないかと思います。ドイツを知り、ドイツと比較をすることで日本の現状がより浮き彫りにされていくようです。

  6. 「ハウス・フェア・キンダー」という新しい名称の施設。2パターンのうちの、キンダーガーデン(3~6歳児)+学童(6~11歳児)という組み合わせの施設は、どんな関わりや、活動がなされているのかを想像するととても面白そうですね。
    また、障害児担当の資格があり、各園に5名の障害児が入園するということ。私が以前行かせていただいた時は、そういった場面にでくわすことはなかったのですが、障害児との統合保育を意識した政策が国全体でしっかりと行われている様子を感じます。
    初日でこれほどの変化だとこれからが楽しみですね。

  7. コーポレーションという施設からハウス•フェア•キンダーという名称に変わってきたのですね。就学前の子どもたちにとっての居場所みたいなものが暖かいイメージに変わり、その子その子にとってここにいていいんだよというメッセージにも感じられます。日本の養護とドイツの養護の考え方は面白いですね。ドイツの養護を考えると藤森先生が行う保育とやはり似ています。障害の子と一緒に保育をすることで双方に良い影響を与えるという考えは正に子どもにとってなにが一番最善なのかを考えた結果であるように感じます。ドイツはそういった根本の問題を捉えることが早いように思います。教育機関と学術的研究との連携も素早いのでしょうね。国全体でしっかりと捉えられているイメージですが、どうも日本はうまくできていないのかという印象を受けてしまいます。

  8. コーヒーが自由に飲める用意をしてある写真を見ると、ドイツらしさが伺えます。
    さて、最初の見学先が就学前施設というのは初めて聞きます。ただドイツでは「ステイ」という制度があるため、進級を遅らせた子どもが通う施設だと思いますが、こうした施設や制度が実際に可能なところが何度聞いても素敵ですね。また障害児に対しての保育も日本とは正反対ですね。日本では障害に対して、1対1で過ごし、落ち着いた環境が必要と言われますが、一緒に過ごすことで、お互いに発達にいい刺激を与えてくれるということが分かったというデータがあるのかと思いますが、それをしっかりと実践しているところはさすがドイツです。ただ逆にドイツからするとデータとして出ているのに、どうして実践しないのか?と逆に疑問を持たれるでしょうね。いつも思うことですが、藤森先生からドイツ報告屋海外の話しを聞くたびに日本も早く気づき、変わって欲しいと思います。

  9. この施設がドイツ保育環境視察における最初の施設ということでとても印象深く残っています。この施設で最初に驚いたのが建物の作りです。真ん中に運動部屋があり、運動部屋を廊下が囲い、さらに廊下を保育室が囲う。廊下は天井がガラスで作られていて自然の明かりで照らされる素敵な廊下でした。そして保育室は部屋ごとでコーナー遊びが設けられていて、学童も一応部屋が設けられているものの保育室へ盛んに遊びにいくことが伺えました。「異年齢児保育」を行うには適した環境であると思ったと同時に日本に帰ったらもっと保育園の子どもたちとの交流を図っていこうと思わせていただきました。そしてさっそく本日に学童の子どもがお化け屋敷を再現し、そこへ3・4・5歳児クラスの子どもたちを招待して交流しました。交流の仕方は様々ありますが、できることから交流を図り、子どもたちの様々な幅を大きな捉え方で拡げいけたらと思います。

  10. ドイツ報告を聞いていて、いつも思うのが、研究や子どもへの考えがすぐに子どもの環境に直結している様子があるのにいつも驚きます。その柔軟な姿勢は日本においても心がけていかなければいけない姿勢だと思います。障害者や就学前教育に関しても、まだまだ日本は「多様性」を受け入れるということが遅れているように思います。すぐには可能ではないでしょうが、一つずつでもこういった活動が受け入れられ、自分の発達に合わせた教育や保育が進んでいけば良いなとドイツの教育現場を見ると感じます。

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