セイフティーネット

こんな本が出版され、話題になっています。「親元暮らしという戦略――アコーディオン・ファミリーの時代」(キャサリン・S。ニューマン著)というものです。この本の内容紹介では、このように紹介されています。「いま先進諸国では、成人した若者たちが安定した雇用に就けず、親元で暮らす現象が広がっている。アコーディオンのように、家族はその蛇腹を広げて舞い戻ってきた子どもたちを受け入れ、彼らが家を出ていくと蛇腹は縮む。日本、アメリカ、南欧、北欧で300人ものインタビューを実施し、グローバル化時代の家族の生存戦略を考察した労作。」

また、この内容について、訳者である萩原 久美子と桑島 薫は、あとがきで説明を加えています。「成人した若者が安定した雇用に就くことができず、親元で暮らすことを余儀なくされる。長引く不況の中で、先進諸国で広がっているこの現象を、著者は“アコーディオン・ファミリー”と名付けた。」とあります。そして、このような現象について、「成人期、高齢期のあり方も変容を迫られている…。」としています。さらに、その変容について世界中が共通の問題を抱えながら、日本の若者についての問題をこう語っています。

「20歳、30歳を過ぎても親元で暮らす若者たち。そんな成人した未婚の子どもと親が同居する家族のあり方は、現代日本社会に特有の現象だと一般に思われている。直系家族という日本の伝統的な家族にその要因を見る人もいれば、家事も生活費も親にまかせ、稼いだお金を自分の消費に回す若者の増加を指摘した1990年代末の“パラサイト・シングル”論を思い出す人もいるだろう。現在では子どもの貧困、失業や不完全雇用、社会的排除といった若者をめぐる複合的な問題と、親元で暮らす若者の多様な実態が意識されるようになり、自立できない若者や結婚しない若者に対する単純なバッシングは下火になってはいる。とはいえ、一般論として、親から早くに自立する欧米の若者と、親にいつまでも依存する日本の若者という対比は今なお健在だ。ところが、この成人した子どもと親からなる世帯――キャサリン・S・ニューマンによるところの“アコーディオン・ファミリー”は、日本特有の現象ではない。1990年代以降、グローバル競争の激化と労働コストの削減圧力にさらされた先進諸国に共通に見られるものだという。しかも、若者への住居政策、教育政策、雇用政策が充実したスウェーデン、デンマークなど北欧諸国を除き、親子の同居期間は長期化する傾向にある。」

ニューマンは本の中で、読者に対し、最後に三つの選択肢を示しています。一つ目は、アコーディオン・ファミリー現象が見られない北欧の福祉国家のように、納税者が連帯し、若者のセーフティ・ネットの構築を図ることです。二つ目は、緊縮財政による社会保障費の徹底的な削減とそれによる財政健全化を選ぶかです。そして、三つ目は、移民の積極的受け入れ政策へと舵を切り、労働力人口の減少による生産性の低下を反転させ、社会保障制度の支え手を増やすことで現在の維持困難を克服するのかです。どうも、保育者不足、保育者の離職率の増加は、単純な話ではないようです。もっと広く、考える必要があるようです。それは、少子化の進行による危機感というよりも、納税者減少という、次世代のあり方の見直しが求められてきます。しかし、私は、同時に、保育、教育の見直し、人材育成のあり方の見直しが必要だと思っています。

セイフティーネット” への10件のコメント

  1. 親元で暮らす若者のことをアコーディオン・ファミリーと名付ける動きがあるのですね。なかなかセンスのいいネーミングですが、実際はそんなに楽しいものではありませんね。親元から出たくてもなかなか出れないという人も多いはずです。欧米の若い人の暮らし方を実際に見た事はないので、完全なイメージではあるのですか、確かに、欧米の若者のイメージに親元で暮らしているというものがあまりないように思います。それでも、日本の若者は親に依存して、欧米の若者は早くに自立していると対比して考えたことはありませんでした。北欧諸国でも親子の同居期間が長期化する傾向にあるとありましたが、単なる労働力として、人として、人材としてどうかということに関係なく働かざるおえない現状は辛いですね。どんな人物であれ、一生懸命やろうとしている人が会社の中でその存在を認められながら、働ける場所が増えるといいなと思います。

  2. 保育者不足や保育者の離職離の背景には、社会に貢献しようと仕事につく人々の減少といった、より大きな問題が関連していたのですね。問題は、根本から見直す必要があるといいことで、ここからは、次世代にあったやり方を見つけていく過程で、これまでになかった発想や価値観を認めていく時代になっていくということでしょうか。同時に、保育・教育・人材育成も見直す必要があるということで、次世代の社会のあり方だけでなく、そのような社会で働く、次世代の人々を育てることも考えなくてはいけないのですね。社会が変わっても教育が変わらなければ、人と時代の差は広がる一方だということでしょうか。このような差を埋める画期的な方法を、海外での取り組みなどから積極的に吸収し、それを日本独自なものにしていけば、きっと楽しい社会が待っているのではと感じました。

  3. 「親元暮らしーアコーディオンファミリー」。何とも刺激的な家族像。確かに、私も一時期親元で暮らした経験を持ちます。その頃の私たちは、まさに、アコーディオンファミリー、だったのでしょう。「蛇腹を広げて舞い戻ってきた子どもたちを受け入れ」てもらいました。そして7年間の同居暮らしの中で子どもを1人授かり、やがて「家を出ていくと蛇腹は縮む」ことになりました。今日、テレビのニュースで、介護してもらっていた70代の女性が自宅で亡くなって発見されたということが報道されました。その女性は40代になる息子と同居していたそうです。「パラサイトシングル」、久々でこの言い回しに出くわしました。ニューマンの「最後の三つの選択肢」、真剣に考えなければならない問いです。我が国は少子化により労働力人口どころか、社会保障を支える納税者人口がどんどん減少してきています。税金によって成り立っている国で納税額が減少すれば、やがて国として立ち行かなくなることは自明の理でしょう。しっかりと税金を納めて自分の国を支えらえるような国民を育てるのは、実は教育力の問題なのです。

  4. 納税者減少という社会現象、しかも国を越えた深刻な社会問題に根本があるのですね。先進国と呼ばれた国が、ある一定の基準を越えた時に生まれる歪みのようなものが国民に押し寄せてくるというイメージが浮かびます。国として、お金の為のお金による政策に走り、国のやり方で儲け切った先に生まれる落とし穴といったイメージです。
    なぜ、往々にして多くの先進諸国がこういった社会問題に直面することがわかっていながら、スウェーデン、デンマークなどの北欧諸国のように、若者への住居政策、教育政策、雇用政策を充実させるような対策をとれず、また対策をとったとしても後手後手となってしまい、思うような成果が上げられない現状を生みだしてしまうのでしょうか。
    やはり、乳幼児教育、保育にその鍵があると思えてなりません。
    三つの選択肢の中で、二つ目の選択肢は、今まさに日本で行われ、全く功を奏していないものと理解しています。三つ目の選択肢は、海外の働き手に日本を支えてもらうという点で、日本人が日本人の手でこの不況を乗り越えるべきではないかと思うと同時に、結局のところ、アコーディオン・ファミリーと呼ばれる家庭で育つ若者を直接的に支援することにつながるまでにとても長い時間を要するのではないかと感じます。
    一つ目の選択肢、北欧の福祉政策から学ぶ。その政策を日本人の気質や日本の風土、環境に本当の意味で照らし合わせながら、成功例を真似ていく。とても意義のある提案のように思うのですが、日本がそういった福祉に成功している国があるにも関わらず、そこから学ぶことや、その政策を真似ることが出来ないのは一体なぜなのでしょうか。どんな理由があるのか、とても疑問に思います。

  5. “アコーディオン・ファミリー。”何か初見ではとても愉快な家族を想像しますが、「成人した若者が安定した雇用に就くことができず、親元で暮らすことを余儀なくされる」ことを意味するのですね。この現象は日本特有ではないことから日本以外の国ではこの現象をどう捉えているのか。また、この現象に対する親の捉え方も国によって違う気がしました。気になるところです。
    一つ目の選択肢にある若者のセーフティ・ネットの構築を図ることは必要不可欠ですね。失業率は下がっているが若者の失業率は悪化していると聞いたことがあります。一昨日のブログにもあった人間関係やその上で大切な職場環境を含めて、若者のセーフティネットを考えていく必要性を感じました。

  6. 親元で暮らしている人が増えていることは日本特有の現象だと思っていましたが、そうではないと知り驚いています。書かれているように、広く大きな問題として捉えていく必要があることだと思います。それにしても3つの選択肢は大きな課題ですね。現在議論されている内容ではありますが、問題の立て方が経済をいかに立て直すかとなっていると思うので、それだと少し違ったところへ向かってしまうような気がしています。そうではなくて、社会のあり方を考え、それを修正していくために3つの選択肢の検討を、となるべきだろうと思います。経済とかお金とか、そんなこと以外の議論に非常に飢えています。

  7. 「アコーディオン・ファミリー」とは面白いネーミングですね。
    先進国で多いとのことでしたが、確かに日本でも都心と、地方だと、都心のほうが「アコーディオン・ファミリー」の形が多いイメージがあるので、国単位でみても先進国のほうが多くなるのでしょうね。

    ニューマン氏の3つの選択肢はどれも考えさせられますね。
    1つ目の北欧の形は「福祉の安定」2つ目の緊縮財政は形に見合った「財政健全化」、3つ目は移民は「労働力の確保」どれもメリットは大きくあると思います。ですがそれに見合った問題も引き起こされるのではないかという懸念も抱かされます。
    たとえば「北欧の形」は安定しすぎているため、働かなく意欲がなくなるという話があったり、「移民」も民族の違いからか、宗教問題や、うまくいかなかった場合の犯罪率の増加などいろいろな問題がある気がします。
    緊縮財政もギリシアの件を見ていると、これまで暮らしをしている日本でレベルをグンと下げられるかというと納得しない人が多いのではと感じてしまいます。
    以前のブログにあった、問題が起きたときに部分的に見るのではなく、全体を見直す。
    先生のいわれるように「保育、教育の見直し、人材育成のあり方の見直し」により人としての資質を上げることが大切だと思います。

  8. 親元暮らしという戦略をアコーディオン•ファミリーというのですね。親元暮らしというとすぐに思い浮かんできたのはやはり日本のことかなと読み進めていきましが、意外にそうではなく先進国共通なのですね。そんな話からまさか、保育者不足、保育者の離職率の増加に繋がるとは思っていませんでした。そもそもを考えるとこういった、大きな問題から我々の現場に直面してくることを実感します。働き手を増やし、納税者を増やしていき、自らの国を良くすることも大事ですが、最後にあるように保育、教育の見直し、人材育成のあり方を見直すということから、現場の人間にできることは次世代に繋げる良い人材育成が必要なのですね。自信はともあれ、意識を持っていく必要があるように感じます。

  9. 「アコーディオンファミリー」なんだろう?と思いましたが、なるほど、そういことですね。良く言えば親元はいつでも安心して帰って来れると捉えますが、悪く言えばいつまでもたっても子どもは自立できないということになります。おそらく親も我が子をいつまでも自分の手元にいる方が安心できるという考え方も原因のひとつかもしれません。最近のブログで開成高校の校長先生である柳沢氏の「子離れできない親」の話しがそのまま起きている状況ではないでしょうか。そんな、親元を離れられない若者に対しての対応としてニューマンが3つの選択肢を示していますが、藤森先生が言われるように、そもそも、子ども達が成長して、そうならないような保育、教育、人材育成の見直しが必要ですね。

  10. 親元で暮らしている若者が多いのはなにも日本だけに言えることではなく、世界の先進国においても言われているということは驚きです。引きこもりの問題は大変だといいながらも、あまり実感としてなかったですが、確かに考えてみると将来的に考えても納税者が少ないということが言えますね。とても人ごとではない問題ですね。考えみると自分は保育に携わっていますが、保育の重要性を考えたときに「社会」を意識するよりも、「小学校」を意識している人の方が多いように思います。どこかで短絡的に教育を捉えていることは自分自身を含めて改めて考えていかなければいけない問題だと思います。そして、その中でそだった人材はきっと社会に貢献してくれることになると思いますが、そのためにも保育、教育の見直し、人材育成のあり方の見直しは必要ですね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です