支援方法

愛着といわれる養育者と子どもとの関係は、ラットの場合は、なめたり毛づくろい和したりすることですが、人間において同様な効果は、触ったり、抱っこしたりというよりは、幼児のサインに敏感に反応することであるということがわかっています。ということは、求めてきたときに反応してあげるということなのです。どうも、ラットの行動を間違えている人がいるようで、私の娘に孫ができたときに、保健所から指導に来て、「愛着形成のために、母親なんだから、ともかくいつも抱っこしてあげなさい!」と言われたそうです。

 しかし、ただ抱っこすればいいというわけではないとしても、不安定な愛着関係を生む接し方を、健全に機能する安定した関係を育む接し方に変えることは可能だとリーバーマンは言います。そうした助けを差し出す最善の方法を探し出すことが、よりよい愛着関係への支援であるということから親子心理療法と呼ばれる治療法を開発しました。この方法は、親子の関係を強化することで子どもの行動を改善しようとする姿勢は、現在アメリカ中に取り入れられ、様々な支援方法を生んでいると言います。例えば、里親と幼い子どものための介入プログラムのひとつであるABCでは、幼児の発する信号に注意深く、温かく、落ち着いて反応するよう里親に促すように指導します。10回ほど家庭訪問をして指導しただけで、子どもたちが安定したアタッチメントを示す割合が高くなったそうです。

 ひと世代前の支援技法は、幼少期の言語スキルが必要だとして、主に子どもの語彙を増やすことを親に勧めていました。しかしながら、この方法は現実には無理がありました。それは、多くの低所得者の親たちは、親自身に限られた語彙しかない場合が多く、子どもに豊富な語彙を持たせようとするのは至難のわざなのです。読み聞かせをたくさんするのも確かに一つの手ではあるのですが、幼児は、親が語彙の増強に専念している時だけでなく、あらゆる瞬間に言葉を吸収するものです。ですから、語彙不足はたいてい次の世代へと引き継がれてしまうのです。ということで、親のみに重点を置いた支援は無理なのです。

 それに対して、リーバーマンの主張によれば、愛着を育む方が、子どもの成長や改善に寄与する可能性がはるかに大きいと言うのです。しかも、語彙の不足と違い、不安を生む親子関係は比較的小さな支援で対処できるのです。つまり、不安定な愛着関係の連鎖は完全に断ち切ることができるというのです。

 幼少期の支援こそが重要であるとする科学的根拠に異を唱えるのは難しいとポールは言います。子どもの脳の健康的な発達において、最初の数年は非常に大切だからです。子どもの将来をより良いものにするための唯一の機会のようにも見えます。しかし、感情的、心理的、そして神経科学的な経路をターゲットとしたプログラムの一番有望なところは、子どもが成長してからでも十分に効果があるという点だと言います。それは、学力面のみの支援よりもはるかに効果が高いようです。知能指数だけを見るなら、8歳を過ぎたあたりからなかなか伸びなくなります。しかし、実行機能や、ストレスに対処したり、強い感情を抑制したりする能力は、思春期や成人になってからでも改善できるということがわかっています。

 10代の子どもでも幼児にはできないやり方で人生を考え直したり作り直したるする能力を潜在的に持っているというのです。

支援方法” への11件のコメント

  1. 「実行機能や、ストレスに対処したり、強い感情を抑制したりする能力は、思春期や成人になってからでも改善できる」というニュースは、嬉しいですね。“育児は失敗できない”と考えている保護者にとって、心にゆとりができる言葉です。また、大きな労力を必要とせず「比較的小さな支援で対処できる」ことが、さらなる不安解消へとつながります。幼少期の支援が、今後の人生において重要であるという科学的根拠があるにも関わらず、教育機関への支出が減っている日本は、“教育投資の見直し”をしなければいけないという明確な目的が出てきますね。8歳頃を境に、伸び悩んでくる知能指数に比べ、やり方次第で、そこから伸びる能力もあるということは、人の無限の能力すら感じます。科学のメスが入る事で、多くの希望が持てる未来になればいいなと感じました。

  2. 「求めてきたときに反応してあげる」、これは重要です。抱っこを求めてきたら、抱っこをしてあげればいいし、泣きながらやりたいことを訴えていれば、なんとかその子の欲求と親自身の都合の折り合いをつける方法を探ることが必要です。このことについては、私も様々に経験してきましたが、その時の欲求をできる限り満たしてあげると、後が楽ですね。変な時に変な要求はしてこないし、私たちの都合で動かなければならない時などぐずることなく一緒に行動してくれましたから。今回のブログで紹介されている「保健所」のような指導は勘弁ですが、ABCプログラムの「10回ほど家庭訪問をして」子育てのアドバイスを頂くのはいいような気がします。乳幼児虐待はどうやら親子で関係が煮詰まってついに「虐待」というケースに至っているようです。第三者の介入が計画的にあれば、乳幼児虐待の件数もかなり減っていくことでしょう。一人住まいの老人を地域の民生委員の方々が定期的に訪問します。赤ちゃんと一緒にいるご家庭に対しても同じサービスが実施されているのでしょうか?どうもこの国は老人と比較した時子育て家族にあまり親切ではないような気がします。児童手当や乳児医療証も大変助かりますが、せめて保育所等を利用していない3歳未満児の家庭のケアを地域でしっかりと取り組めるような仕組みが必要な気がします。

  3. 幼児の発する信号に注意深く、温かく、落ち着いて反応するよう里親に促すように指導することで、子どもたちが安定したアタッチメントを示す割合が高くなったとありました。子どもと関わる大人である私もこのことはしっかり頭に入れて、意識していきたいと思います。子どもが信号を発する時は求めているということでもあるように思います。その信号をしっかり受け取り、対応することを忘れてはいけないなと感じています。幼児期の数年は大切な時期ではありますが、子どもが成長してからでも十分に効果のある方法があるというのは心強いことですし、同時にある時期にこういう関わりをしておけば安心ということではなく、子どもはどんな時期でもどんな年齢でもきちんとした教育、関わり方が必要なんだということを感じるようでもあります。また、昨日までの人材育成についてのブログからは社会で働く大人への教育、関わり方の大切さも感じます。人と人が関わる社会だからこそ、その関わり方、教育の方法は丁寧に考えていかなければならいけないなと感じました。

  4. 「愛着形成のために、母親なんだから、とにかくいつも抱っこしてあげなさい。」とありますが保健所の方はとても極端なことを言われるのですね。それだけ現在の親子間の愛着形成が全体的に不安定で危機感を感じているということでしょうか。
    親子心理療法が現在アメリカ中に取り入れられ、様々な支援方法を生んでいる。とブログにあったことからABC以外にどういったものがあるのか気になり、調べてみました。そして、PCIT(親子相互交流療法)と呼ばれる支援方法があることを知りました。PCITはアタッチメントの回復としつけの2つの柱が中心概念のようで、親、子ども、セラピストの3者で関わりを持てることから大きな効果が上がっているそうです。PCITなどの幼児期に重要な愛着形成の支援方法がこれからもっと発展していき、もっと普及していくべきだと感じました。

  5. 支援はただすればいいというものではなく、何をどう行うかも当然重要なことですね。支援しているつもりで捉え方の間違ったものであったり、また支援していることに喜びを覚えるというか、一方的で強制的であったりする話を聞くこともあります。誰のための何のための支援なのか。そこを間違わないようにしていきたいものです。そして親子の関わりについてですが、成長してからでも間に合う方法があるのは非常に心強いです。ある時期を逃してしまうともう挽回できないのであればプレッシャーはすごいでしょうし、自分にはできないことであればお手上げです。でもそうではないと言ってもらえると気持ちが楽になる人は多いでしょうね。これは自分も含めてです。

  6. 私は保育士をやっていて何年か前に「子どもが話しかけているのに何かをしていて気づかないことが多いよね」と言われてしまったことがあります。それは子どもが出すサインに気付いてあげられていない回数が多いということですので非常に反省したことを思い出します。親としては改善方法があるということだけを知ることで少し安心するでしょうね。しかし、保健所から何も知らない親が「愛着形成のために、母親なんだから、ともかくいつも抱っこしてあげなさい!」と言われてしまえばそれは完全に信じてしまいますね。ただでさえ、不安の中にいるのでそういった場所では最先端の接し方を教えてほしいものです。10代の子どもでも人生を考え直したり、作り直したりする能力を潜在的に持っているとなると少し心に余裕ができる子育てに繋がるのでしょうか。1番良いのは小さい頃からの子どものサインに敏感になることですがもし、それがうまくいかなかったときその支援方法に気付ける環境作りも必要ですね。

  7. 私の妻は東京ではなく、地元で里帰り出産をしたので、保健所が訪問をして指導をするという事はありませんでした。もし来ていたら同じことを言われるのでしょうか・・・。我が子を見ていて最近思うのは、自分たちの姿を確認しているのかどうか分かりませんが、遊んでいるときに定期的に振り返り、ちゃんと近くにいるか確認しているように思います。もちろん集中して遊んでいる隙に、その場を離れたり、目を合わせないと声を出して訴えてきます。そんな行動が親との愛着形成を培っている最中なのかもしれません。その時の関係が基盤となり、それは成長する過程で大きな影響をもたらし、またその時の子どもの年齢や発達に合わせた支援が必要になってくるのですね。

  8. 私は以前は全く違う職場で働いていました。まだ子どもはいませんが今みたいに保育園という職場で、そして藤森先生に出会わなければ、きっと子どもが産まれたときに何もわからず保健所の指導通りに「愛着形成のためにとにかく抱っこが必要なのだ」と頑張って抱っこをしていただろうと思います。今なら「おかしいだろ」と思えますが、まだまだ以前の私のように「保健所がそう言うのなら・・・」と思ってしまう人がたくさんいると思います。藤森先生が講演の際にお話しされていた「ベースキャンプのような愛着形成」というのをもっと多くの人に知ってもらいたいですね。

  9. 我が家にも、保健所の指導の方がやってきたのですが、ブログにある通りまさに「愛着形成のために、母親なんだから、ともかくいつも抱っこしてあげなさい」という感じでした。
    その場では、特に何も返さなかったのですが、都心というこの環境で、専業主婦のような形で母と子で過ごす家庭では、それを実践しなければと思ってしまう家庭も多い気がします。

    正しい支援方法を広めることの大切さを感じます。

  10. 「更正する」ということがあるように、幼少期に実行機能やストレスに対応する力が成人や思春期に取り戻せるというのを聞くと、人との出会いはとても大切になるのかなと思いました。「ただだっこをする」ということが愛着につながらないということは考えればわかるように思います。本当に大切なことは自分の欲求や気持ちをいかに受け入れてもらえたかという「安心感」のほうがより、子どもたちにとっては意味のあることのように思います。あくまで「だっこ」はそれを表現する一つの手段であって、唯一の答えではないですね。本来の意味合いがどういったところにあるのか、本質の部分が抜け落ちている現状を知ると「うぅーん」と唸ってしまいます。

  11. 人間の愛着の形成について〝幼児のサインに敏感に反応することである〟〝求めてきたときに反応してあげる〟とあり、どちらも子どもが主体となっていることが理解できます。
    ということは書かれてある通り、むやみに抱っこするとか、スキンシップをとればいいということではないということは明白ですね。
    さらに〝子どもの脳の健康的な発達において、最初の数年は非常に大切〟ということが分かっていながらも〝実行機能や、ストレスに対処したり、強い感情を抑制したりする能力は、思春期や成人になってからでも改善できる〟と、その逆説的なことも分かっているということで、子育てを余裕をもってしていける研究結果ですね。
    人間の能力を高めることに関しては限界がなく、どこまでも無限に高めることができるという希望が見えてきます。
    改めて人間の素晴らしさを感じました。

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