スポーク

 日本における給食の一つの特徴は、先割れスプーンを使うことにあると言っても過言ではないほど、だれでも給食の思い出と重なっているほどポピュラーなものです。これは、先の割れたスプーンのことで、スプーンとフォークが合体したもので、「スポーク」と言います。これにナイフの機能を持たせたものが、「スプレイド」と言い、先割れスプーンのふちの切れ味がよくなっているものです。そして、ナイフの機能を持ったフォークのことは、「ノーク」と言います。また、縁がギザギザのナイフになっているスプーンは、「スパイフ」と言います。そして、スプーン、フォーク、ナイフとすべてが合体した多機能食事道具は、「スポーフ」と言います。
 この中のスポークと呼ばれる先割れスプーンは、もともとファストフード店でもらえる使い捨てのお粗末なプラスティック製で、すくう部分とフォークの先を組み合わせたものでした。そのスポークは、イギリスでは、近年いくぶん皮肉交じりの愛好家が増えているそうです。そして、スポークのためのウェブサイトがいくつかあって、使い方に関する情報「割れた先を内側と外側に曲げ、スポークを立たせる。これこそ、『スポークの斜塔』とか、賞賛の俳句(『スポークや

 先割れスプーン、完成美』)、雑感を発信しています。こんなコメントもあったそうです。「スポークは人間存在の完全なメタファーになっている、スプーンとフォークの両方の機能を結び付けているが、この『二重性ゆえに共倒れになっている。浅すぎるので、スポークでスープを飲むことはできないし、先が小さすぎてスポークで肉を食べることはできない。』

 先割れスプーンは、何とも中途半端な道具です。便利とは、どっちつかずに通じますえ。「キッチンの歴史」のなかで、それを示す面白い逸話が書かれてあります。「ウォーリーというアニメ映画に登場するロボットは、荒廃した未来の地球で、人類が残した瓦礫の片づけをしている。健気にもプラスティックの食事道具を分別していると、やがてスポークに遭遇する。ロボットの小さな頭ではこの新型物質を処理できない。スプーンなのかそれともフォークなのか、スポークは分類不可能な物質だ。」

 また、アメリカ大統領だったビル・クリントンは、大統領時代、ホワイトハウスの特派員協会主催の夕食会で、こんなスピーチを行ったそうです。「スポークは、わが政権のシンボルです。(中略)折衷をいくものに、もはや右なのか左七日の二分法は無用なのです。」このスピーチに、かいじょうは拍手と笑いで沸き立ったそうです。さらに、「これは大いなる新発想です。さすがスポーク!」と冗談を連発していたそうです。

 このスポークの発明に、日本に絡んだ都市伝説があります。1940年代、アメリカが日本を占領していた時代、箸は野蛮な道具であるとマッカーサーは宣言したものの、フォークは、被占領民の日本人が武器として決起する恐れがあるとして危険すぎたので、西洋の食事道具で、なおかつ完全に形を変えたスポークを日本人に強要したというのです。しかし、この話は眉唾で、スポークという名称は、1909年以前が起源と言われているだけでなく、その形はもっと古くからあるのです。19世紀のアメリカの銀食器のうちにも、同じようなものがあったようです。

 それほど、先割れスプーンは、話題の中心になったのです。