箸4

 「キッチンの歴史」という本の中で、「割りばし」こそが、「食のテクノロジーで何を好んで受け入れるかは、機能よりも文化の力が大きく物をいう」ということの好例といえると書かれてあります。その本の割りばしの説明は、「使い捨てで、縦半分に割って使えるよう途中まで切り込みが入っている木製の安価な箸」であると書かれてあります。そして、発泡スチロールのカップと同じ性格を持ち、現代の西洋で考えられたと思われがちですが、実は、日本で18世紀に外食産業が誕生してからずっと使われてきたものであるとしています。料理店が、一人一人の客に新しい箸を出すことは、口に入れるものが不潔ではないことを客に保障する最良の方法だったと書かれてあります。

 しかし、この割り箸に関してエコの面から問題が起きています。もともと、割りばしは、江戸時代に「引裂箸」と呼ばれ、杉から作られ、吉原の有名な茶屋や高級料理屋で使われていたそうです。そして、現在、普及している木製の割り箸は、明治時代に、奈良県の吉野で樽材として使っていた杉の端材を有効に活用することから生まれたものです。端材とは、樽の製造過程で必要な部分を切り取ったときにできる余った木片などのことです。今でも、日本製の割りばしは、丸太から建築用材を切り取った時に出来る端材や残材、間伐材と使って作られており、決して割り箸を作るために伐採された木は使ってはいません。むしろ日本の割り箸の生産は、山村経済の活性化につながり、間伐等の森林の手入れを促進します。そして、荒廃が目立つ今の日本の森林を、CO2をたっぷり吸収する健全な森林につくりかえます。
 しかし、現状は国産の割りばしは、衰退傾向にあります。主な理由は、安い外国産材の割り箸が輸入されるようになったからです。現在、日本で使われている割り箸の約97%は外国産で、そのうち中国産の割り箸は98%を占めています。平成5年には、300軒以上あった国内の割り箸工場も現在は100軒程度になってしまっているそうです。

日本の割り箸使用量は、年間227億膳にもなり、それが使い捨てにされているのです。しかし、その使い捨ての割りばしを好む傾向は、中国にも広まり、今や中国では年間630億膳が生産されているそうです。日本の割り箸は「資源を大切にする心」から生まれた日本独自のアイディア商品ですが、状況はどんどん変わってきているようです。

 このあたりの事情を、「キッチンの歴史」の中で書かれてあります。今や中国では年間630億膳が生産されているそうですが、2011年に人口13億人の割りばし需要に供給が追い付かず、アメリカジョージア州の製造工場が助っ人を始めたようです。ジョージア州は、ポプラやモミジバフウの森林資源が豊富で、こうした木材は軽くてしなやかなため、漂泊処理しなくても箸を作ることができます。数十億もの割りばしが今やジョージアから中国、日本、韓国のスーパーへ輸出されており、すべてに“メイドインUSA”のラベルが貼られているそうです。
 どうも、日本で使われている箸は、中国産というのは少し前までで、今や、中国の大きな消費国になってしまっているのですね。割りばしは、国産の間伐材などを使っているから、環境についての問題はあまりないという認識は甘いようです。

最近のレストランでは、割りばしではなく、使いまわしの箸のところが増えてきましたが、やはり、もっと意識した方がいいかもしれません。