箸2

 日本人は、ほぼ全員、箸を使いこなすことができます。また、フランス料理でも、もしナイフとフォークと箸が添えられていれば、箸を使う人が多いかもしれません。日本人は、すべての食事を、箸だけでできるのです。しかし、それには、条件があります。それを、「キッチンの歴史」の中で、イギリス人からの目から、こう書かれてあります。「箸は食物を切るのではなく、運ぶだけなので、切る作業のほとんどは人目につかない厨房で行われる。」

 これは、1845年に、中国へ旅行したアメリカ人フレッチャーさんも、「食卓に上るものはすべて切ってある。」と記していることと同じです。「キッチンの歴史」なのかでは、さらに、「西洋人は卓上の皿の食物を見苦しくない所作でいかに小さくすべきか頭を悩ませなければならないが、中国の料理人の包丁さばきのおかげで、食卓の席の人は何も悩んことはない。穂軸のまま出されたトウモロコシをいかに礼儀正しく食べるかといった問題に中国人は直面しない。中国人には、皿の上にそんな大きなものを塊のまま出すなどという粗野なことは考えられなかっただろう。」

 そういわれてみれば、確かに、私たちの日々の食事では、食べる時に、切るという動作をすることはありませんね。ただ、開くとか広げるということは、魚を食べる時などでは行いますが、切ることはしません。よく欧米では、まな板は使わないという話を聞きますが、外国の料理番組を見ると、皮をむいたり、手でちぎったりするところは見ますが、まな板の上で切ることは見ません。鳥の料理にしても、食卓に上るときには丸ごとですね。ダイナミックです。それを、フランスの批評家ロランさんは、こう表現しています。

 「ナイフを握るとき、私たちは食物を獲物として扱わざるを得ず、これから“切り刻んでバラバラにする”ためにディナーの席に臨む。ところが、箸は、“母親のような態度で”食物を扱う。巧みな箸さばきは、さながら子どもをあやすように食物にやさしい。」「箸という食事道具は、突き刺したり切ったり裂いたりしないし、傷つけることもしない。ひたすら選び、裏返し、移し替えるだけだ。箸は、決して食材を手荒に扱わない。(野菜の場合は)そっと割るか、(魚やウナギの場合は)突いて身をほぐす。こうやって、食材本来が持つ裂け目を再発見する。(だから、箸はナイフより原初的な指にずっと近いのだ。)」

 食事のマナー、礼儀作法は、食材、調理方法によって違うもののようです。中国料理のことを、こう書いています。「一人前ずつ運ばれてくる伝統的な西洋のコース料理と違い、中国料理は大皿で食卓に運ばれ、その皿からめいめいが取り分けて一緒に食べる。他人を差し置いて遠くにある料理に手を伸ばしても失礼ではない。中国人フードライター、ヤンキットさんは、“お互いの箸がぶつかる確率は極めて低い”と述べている。」

 「キッチンの歴史」の著者ビー・ウィルソンさんは、「食べる」という章で、日本の箸についていろいろと説明しています。あらためて、スプーン、フォークを見直すと同じく、箸について見直すことは必要なことのような気がします。それは、箸が、日本の食文化にどのように影響していったのかを知ることで、日本の文化を見直すことができるからです。ビーさんは、「日本の箸文化は、中国から伝来したために、中国より遅く始まったが、箸が形成する今日の日本の1大食文化の様相からは、思いつかないだろう。」と言っています。

 箸について、どう整理しているのでしょうか?