フォーク

 人類が、スプーンを使うのはずいぶん前からのことのようですし、どの国でも使い方は違いますが、スプーンを使います。それに比べて、フォークは特殊のようです。このシリーズのブログを書き始めたときに、子どもが使い始める時に、スプーンが先か、フォークが先かを迷うことがあると書きました。時代的にもスプーンとフォークの使い分けには面白い歴史があるようです。

 19世紀の初めには、フォークを使ってスープを食べることが「ファッショナブル」ともてはやされたようですが、すぐに「ばかばかしい」と非難され、スプーンが復権したそうです。しかし、全体的に見ると、フォークを使うことが一番礼儀正しい食事の作法だったようです。20世紀半ばに、イギリスの上流階級の間で「ファークランチ」「フォークディナー」という、ナイフをまったく使わないビュッフェ式の食事が流行したようです。それは、ナイフほど物騒ではなく、スプーンほど幼くもないからだそうで、やはり、スプーンを使うのは幼い食事の礼儀作法と思われていたようです。

 フォークは、魚、マッシュポテト、サヤインゲン、クリームの乗ったケーキなど、あらゆるものにフォークの使用が推奨されたとそうです。専用のフォークも作られ、アイスクリーム用、サラダ用、サーディン用、テラピン(食用カメ)用のフォークもあったようです。19世紀、20世紀の西洋のテーブルマナーの基本は、信じられないかもしれないが、フォークを使うことだったと「キッチンの歴史」に書かれてあります。1887年の料理書には、こんな記述があるほどだそうです。「硬めのプディングにはスプーンを使うこともあるが、フォークの方が洗練されている」礼儀作法をやたらと子どもにいうことがありますが、どうもそんなものは、あてにならないものですね。

 もともと、フォークは食べるためのものではなく、料理をする道具として大昔から使われていたようです。尖った長い先端で調理する肉を突き刺して持ち上げるローストフォークは、ホメロスの時代から広く使われていたそうです。切り分ける肉を抑えるのに使うに区切り用の大型フォークは中世のものだそうです。それと対照的に食事にフォークを付かことが好ましいと考えられるようになったのは、、近代に入ってからのことです。

 金属の小さな槍がついていて、箸にも指にも似ていない。口にいれると歯にあたる。フォークを使わない地域の人からすると奇妙な形だと言います。確かに、物を食べる時に、手でつかむ、指で挟む、手のひらですくう、ということをすると、箸とかスプーンは、それに代わるものとして使われたとしても、食べ物を指で刺して食べることはしないはずですから、フォークで食べるというのは考えてみるとおかしいですね。

 そんなわけで、テーブルフォークは比較的新しい発明のようです。しかも、最初に登場した時はごうごうたる嘲笑と軽蔑の声が浴びせられたそうです。その形状からして、悪魔の持っている三叉槍を連想してしまうのがよくなかったようです。当時は、いろいろな逸話や都市伝説のような広がりで批判されたようですが、やはりたべるもののへんかによって次第に使われ始めていったようです。最初は、尖った部分が一つしかないものでしたが、巻貝の身を中からほじくり出したり、火から食べ物を取り出したり、突き刺したりするのに使われたのです。そして、「砂糖漬け果物」が出てきて、それ用のフォークが作られます。それが、一昨日に紹介した絵に近い、一端がスプーンで、もう一端がフォークになっていました。それは、フォークの先を使って広口の陶器からべたべたする砂糖漬けを取り出し、スプーンの先を使っておいしいシロップをすくい取ったのです。

 しかし、これはあくまでも個人的な道具であったのですが、イタリアだけは例外的にフォークをだれでも使うようになりました。それは、だれでも思いつくと思いますが。