冬の大根

昔から、大根は各地で作られていたようで、それぞれの地域ごとに特徴があります。また、体にもいいとあって、さまざまな料理法が生まれています。それは、その季節に対応したものであったり、保存できるものであったりします。「江戸料理百選」を書き表した島崎とみ子さんは、江戸時代の料理法を紹介していますが、その中で大根を取り上げています。

 今の冬の時期に適した大根を使った温かい料理は、江戸時代でも食べられていたようです。「素人包丁」三編文政三年(1820)刊に「こんにゃくみぞれ汁」が書かれてあるそうです。こんにゃくを細かく切って油でいりつけ、湯をかけて油抜きします。こぶだしに塩で味つけし、おろし大根と先のこんにゃくを加え、吸い口は、こしょう、しょうが、和とうがらし、わさび、さんしょうなどの中から用います。刻んだきくらげを加えるのもよいとあります。フッと煮立ってきたところを食します。体がぽかぽかあったまるそうです。

 「諸国名産 大根料理秘伝抄」には、やはりおろし大根を使ったアツアツの料理である「大根塩ざうすい」が載っているそうです。大根は皮をむき、おろし器のあらいほうでおろして水から入れて煮、ひと煮立ちしたら焼き塩を加えます。ここに、水で洗った飯を加え、二,三度煮たったところで火を止めます。これは「さらりとしたるぞうすいなり。酒の二日酔いに一だんの物なり」とあります。二日酔いの時に体にいい雑炊のようです。

江戸時代から、鍋に添えたこんな大根のあえ物があるようです。「大根一式料理秘密箱」の「三種合大根」は、生の大根を花に抜いて梅酢につけて染め、一方たくあんを細く切って水で洗って絞ります。おろし大根を作り、針に切ったしょうがを加え混ぜ、先の材料をあえ、酒を少しかけ、花カツオをかけて出します。主材料もあえ衣もすべて大根なのですが、それぞれ味も形も違うものなので意外な取り合わせとなって美しくもあり、花カツオのうま味も加わってなかなかのアイディア料理だと島崎さんは感心しています。

「素人包丁」二編文化二年(1805)刊には、酢の香りが大根の味を引き立てるあえ物もあります。それは、「海苔酢和え」と言います。さいの目に切った大根をさっと熱湯を通して熱いうちに酢をかけ、あぶって細かにもんだ浅草のりをかけるというものです。調味料は酢だけですので、うま味のある醸造酢ほうが、のりの香りとあいまって大根の甘味を引き立ててくれるようです。同時に「青海苔掛」というあえ物も紹介されています。大根は同じく、さいの目に切りますが、こちらは塩湯で煮て酢をかけ青のりをふります。

大根は、切り方でも味わいに変化を江戸時代から持たせたようです。そんな料理法を島崎さんは紹介しています。「諸国名産 大根料理秘伝抄」の「林巻大風呂吹大根」があるそうです。この林巻というのは輪巻、つまり年輪の意味のあて字ではないかといいます。ふろふき大根は普通、大根を大きく切ってゆでますからすぐには煮えてくれません。ところが、グルグルとかつらむきにし、また元のように巻き戻して(これが年輪のように見える)蒸すと、すぐに火が通ります。これに、味噌やくずあんをかけるか、敷きみそにしていただきます。みそには、ごまやしょうが、わさびなどでいろいろに味の変化をつけることがでるそうです。

最後に、島崎さんは、「大根は一年じゅう出まわっていますが、いちばんおいしいのは冬です。江戸時代の料理を参考に、いろいろな大根料理に挑戦してみてはいかがでしょうか。」と締めくくっています。なんだかレシピの紹介になってしまいましたが、私の園では、来年度は、「和の食」をテーマにしようとしていますので、ちょっと江戸時代の料理を調べてみました。