予防講習

精神的な病気の原因はストレスが多いのは。最近は誰でも知っています。しかも、ストレスは精神的な病気の原因だけでなく、肉体的な病気にも影響そしていることもわかってきました。いかに人類は、「気持ち」がいろいろなところに影響をしている生き物であるかがわかります。アメリカでは、ストレス社会が人をむしばんでいることに危機感を感じています。そのひとつの現象である自殺が最近増えてきているからです。

米疾病対策センター(CDC)は、昨年5月に、35~64歳の米国人の自殺率が2010年までの約10年で28%増加したとの統計を発表しました。リーマン・ショックに伴う経済危機が、中高年に重くのし掛かったことなどが背景にあるとみられ、CDCは若年層や高齢層に力点を置く従来の自殺防止対策の見直しを訴えています。CDCによると、1999年に10万人当たり13・7人だった35~64歳の自殺は、2010年に17・6人に増えたそうです。特に55~59歳と50~54歳の年代でそれぞれ49%、48%と大幅な増加を記録したようです。

アメリカ疾病管理予防センター(CDC)というアメリカ合衆国ジョージア州アトランタにあるアメリカ合衆国保健福祉省所管の感染症対策の総合研究所が、自殺対策を行うというのは少し不思議な気がしますが、自殺の原因が精神的な病気であることが多いということなのでしょう。

地域における自殺予防運動の始まりは、1953年のイギリスにおけるサマリタン運動の創設や1958年のアメリカはロサンゼルスでの運動などがあげられます。「サマリタン(Samaritans)」とは、「良き隣人」という意味で、日本でもこの運動によって、1971年に東京でいのちの電話が開設され、全国的な電話相談として広がっていきました。

自殺予防に取り組む民間団体「米国サマリタン協会」では、アメリカ国内での自殺防止運動を1974年から活動しています。ここ数年、引き合いが増え、学校での講習会は年約150回に上るそうです。電話のほか最近は携帯電話のショートメールでも相談を受けています。「自殺者の大半は精神疾患を抱える。けがと同じで専門家の助けが必要。若いころから意識付けした方がいい」と事務局長のロベルタ・ヒューティグさんは話しています。

「いったい何がストレスになる?」という問いかけを、マサチューセッツ州ボストン近郊にある中高一貫校の9年生(日本の中学3年生に相当)の学級で昨年12月に開かれた講習で行われました。この内容が、日経新聞に取り上げられていたのです。この講習を行ったのは、「米国サマリタン協会」のケリー・カニングハムさんです。高校生たちは、この問いに、「人間関係」「恋愛」「仕事」「人種差別」などを挙げました。

 カニングハムさんはそのたびに紙コップを1つずつ、男子生徒の手に積んでいきました。コップは15個近くになったあたりで、それは次々とこぼれ落ちました。「たくさんのコップも(積まずに)重ねれば持っていられる。ストレスも同じ。コントロールできれば支えられる」という話から、悩みを抱え込まずに周囲に助けを求める大切さや、知人が無意識に出すサインへの気づき方を説いていきます。

 アメリカでは、精神疾患で通院することを恥じる風潮もあったようですが、「01年の米同時テロを機に、専門家に頼るのは普通のことだとの認識が生まれた」とヒューティグさんは話しています。一方で医師が睡眠薬などを大量処方し、過剰摂取で自殺が助長される問題も生じています。銃規制が緩い州は自殺も増えており、全米では銃による自殺は、銃による他殺の約1.8倍だそうです。帰還兵が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱える例が増え、政府も対策に本腰を入れ始めたそうです。「悩んでいる人にはひたすら聞き役に回ることが大切。地道に活動を続けたい」とヒューティグさんは話しています。